ナチョ・リブレ 覆面の神様 (Nacho Libre)

監督　ジャレッド・ヘス　主演　ジャック・ブラック
2006年　アメリカ映画　92分　コメディ　採点★★★★

仕事の関係で盛岡市に住んでいた頃、街の至る所でよく見かけたのがレスラーのザ・グレート・サスケ。さすが、みちのくプロレスの地。で、蕎麦屋で見かけようがビデオ屋で見かけようが常にマスク姿のサスケに、地元民はなんら違和感を感じている様子もなく、目を丸くして驚く私に「まぁ、そういう人だから」と。ある意味、非常に地域に密着しておりましたねぇ。



【ストーリー】
修道院で育てられた孤児のナチョは、成長し修道院の料理番として働く身に。しかし、お金のない修道院では孤児たちに満足な食事を与えられない現状に悩むナチョは、子供の頃からの夢だった覆面プロレスラーになり、ファイトマネーで子供たちに美味しい食事を与えようと決意するが…。



誰かにその面白さを伝えたくても、どうやっても上手く伝えることが出来ず、もどかしい思い著しかった傑作『ナポレオン・ダイナマイト（バス男）』のジャレッド・ヘスの新作。今回も、どうやって伝えたらいいものやら。
思いつきと成り行きと偶発的なあれやこれやで傑作になったと思われがちな『ナポレオン・ダイナマイト』であったが、カンペでも読んでいるのかと思わせるくらいギリギリの間の取り方、背景と被写体同士の距離の置き方など、卓越した映像センスと計算高さが持ち味のジャレッド・ヘス。大雑把なジャンル分けをすれば、ポール・トーマス・アンダーソンと同種の監督なのではと。で、本作なのだが、非常に受け入れられ易い題材の分突飛な展開（および突飛過ぎるほどの展開のなさ）は控え目であるが、映像へのこだわりようは目を見張るものがあり、切り絵のように配置された背景を前に焦点深度を浅くして人物を写すことで、まるでパネルシアターを観ているかのような楽しさがある。その背景の前で動いているのがジャック・ブラックを筆頭に、見た目一発のインパクトを重視された方々なんですもの。楽しいこと、うけおいです。
まぁ、結局今回も何となくレビューっぽい体裁を整えてはみましたが、本作の面白さを伝えることには失敗で。



“この顔がスゴイ！”ってのを書き上げるのであれば、登場人物全員を書き連ねなければならないほどイイ顔揃いの本作。そんなツワモノ揃いの中でも、全く輝きというか照りを失わないのが、もちろんジャック･ブラック。一瞬足りとも同じ顔をしていないジャック・ブラックの顔芸に、高カロリーなクドさと表現力の豊かさが混在する唯一無二の魅力が。「オレって面白いだろ？」という押し付けがましさが感じられない、孤高のクドさというか、なんかそんな感じの。最初に登場するワンフレームで耐えられない方々には非常に苦痛の９０分になってしまうのだろうが、受け入れられれば至福の９０分に。
“これぞルチャ！”って映画ではないものの、ルチャと地域の密着度という押さえるべき点は押さえているし、フラリと何気なく登場するピーター・ストーメアら、隅々に行き渡るギットリとしたイイ顔の中にいる分、より一層清涼感を感じさせるアナ・デ・ラ・レゲラの魅力も含め、満足度は低くない。


梶原一輝との競作ってことでいいんですかね？

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Comments

たお様、こんばんは。
「人に伝えにくい面白さ」ももちろんのこと、この監督さんは色彩感覚に優れているので、なんか目が贅沢してる気持ちになれるのが素晴らしいですね。ジャック・ブラックがお尻をキュッとするシーンが大爆笑でした（笑）

Posted by wataru at 2007年04月10日 23:17

たお様
albrechtです。
>登場人物全員を書き連ねなければならないほどイイ顔揃いの本作。
ジャレッド・ヘス監督のこだわりを感じますよね〜。いったいどれぐらいオーディションに労力をかけてるんだか想像もつきません(笑)。

Posted by albrecht at 2007年04月12日 00:25

wataru様こんにちは！
背景と人物の位置関係や、焦点のあわせ方、小道具、色彩と、もの凄く凝った獲り方をしているんですよね、彼。結構理数系な人間なんですかねぇ＾＾；

Posted by たお at 2007年04月12日 13:32

albrecht様こんにちは〜♪
映像のみならず、顔にまで徹底したこだわりをみせるジャレッド・ヘス。完成された映画の感触とは裏腹に、結構彼って自分の頭の中に描いた絵を完成させるためには冷徹になれる感じの人のような気も＾＾；

Posted by たお at 2007年04月12日 13:40

こんにちは☆
バス男はダメでしたがコレは大丈夫でした。
ジャック・ブラックを見てるだけで楽しめました♪
ストーリーはもうどうでもいいです(笑)

Posted by ゆかりん at 2007年04月17日 12:53

ゆかりん様こんばんは〜♪
今回はだいぶ間口の広くなったジャレッド・ヘス作品でしたが、間口が広いといっても相変らず独特の味わいが。その中でもジャック・ブラックはジャック・ブラックのままでしたねぇ。

Posted by たお at 2007年04月20日 00:51

やっと見ました。
私にも笑いの神様が降臨してくれるかしらーーーー！と期待にわくわくしすぎちゃったみたいで、クスっと笑いはいっぱい出来たのに大爆笑できなかった（涙

でも、ジャック・ブラックの百面相とお尻がキュッはナイスでした(笑)

Posted by chibisaru at 2007年05月14日 01:00

chibisaru様こんにちは〜♪
まぁ、どっかんどっかん来る映画ではないですよね＾＾；細かいジャブをずーーーーっと食らい続けるような映画なので、疲れることこの上ないですがｗ

Posted by たお at 2007年05月14日 13:53

こんにちは！

ゆるーい展開や、脱力感たっぷりな小ネタの数々に、ウェス・アンダーソンの作品を思い起こしました。
ジャック・ブラックのクドサ加減も程よく、変顔揃いの登場人物共々、しばらく脳裏に焼き付いて離れなそうな予感です（笑）
『バス男』も観てみようかな・・。

Posted by アガサ at 2007年05月19日 01:18

アガサ様こんにちは！
ウェス・アンダーソンも、カチリとした絵画的な構図を好みますしね＾＾
ゆるさばかりが当初注目されていた『ナポレオン・ダイナマイト』も、しっかりと計算された面白さを持っている傑作なので、是非！

Posted by たお at 2007年05月23日 15:49

たお様！！　
これ良かったです。
このホノボノ感が気に入ってます。
ジャックブラックの百面相･･･
プププ　この人上手いですよねー
ＴＢさせて頂きました。

Posted by Lance at 2007年06月25日 00:32

Lance様こんにちは〜♪
大技ばかりと思いきや、非常に芸が細かいんですよねぇ、ジャック・ブラックは。それを思う存分発揮させた監督も見事でしたが＾＾

Posted by たお at 2007年06月25日 10:31

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Posted by anatimo at 2021年12月31日 07:37