2012年 アメリカ/ニュージーランド映画 169分 ファンタジー 採点★★★★
行った事もなければ見た事もない、もしくは見た事はあるけどちょっと何かが違う世界へ気軽に入り込めるってのが映画や小説の醍醐味の一つですよねぇ。物語の面白さ以上に、劇場を後にしてもしばらくはそこの住人ってほど入り込めるかどうかが、その作品のお気に入り具合を左右したりも。時にはその感覚と印象が自分の記憶の中に入り込んじゃってる場合もあるのか、ふとある情景を思い出し「あれぇ?何処だっけかなぁ?いつ行ったんだっけかなぁ?」としばらく頭を悩ませた後、それが大昔に読んだ小説の舞台だったことを思い出したりすることすら。
【ストーリー】
旧知の魔法使いガンダルフとドワーフ13人と思いもしなかった冒険の旅に出る事となった、ホビットのビルボ・バギンズ。彼らの目的は、邪竜によって奪われたドワーフ王国を取り戻す事。オークに追われトロルに襲われる危険の連続の中、ビルボはゴラムという奇妙な人物と出会う。そして、ゴラムが大切にしていた指輪をひょんなことから手に入れてしまい…。
“指輪物語”の前日譚ともなるJ・R・R・トールキンによる児童書“ホビットの冒険”を、“ロード・オブ・ザ・リング”シリーズのピーター・ジャクソンが再びメガホンを握って映像化したファンタジー・アドベンチャー。『ホビット スマウグの荒らし場』『ホビット ゆきて帰りし物語』へと続く三部作の第一弾。
“指輪物語”に比べれば気軽にサクっと楽しめる“ホビットの冒険”を、一本3時間の三部作にするってのに当初は正直不安を感じていた本作。原作に忠実に作ったはずがオリジナルの倍の尺になった『キング・コング』ってのがあるだけに、思い入れだけが暴走した重々しい作品になってしまっていないかと。ただまぁ、結論から言えばそんなの杞憂に過ぎなかった、冒険に次ぐ冒険で繰り広げられるあっという間の3時間で。
オリジナルシリーズに感じた「こんな世界があったなんて!」って驚きこそないが、久しぶりにお気に入りの旅行地に戻ってきた“ただいま”感たっぷりの本作。暗雲が垂れこめる兆しこそあれど、程良く擬人化されたトロルらのお茶目っぷりにまだまだ平和だった頃の中つ国を感じさせ、それがまた“思い出の地”風情を漂わせてくれている。
指輪物語の影の主人公と言っても過言ではない悲劇のゴラムとの絡みもあり、今後の2作が非常に楽しみになった本作。まぁ、愛蔵版にするかどうかはその2作と、どうせ出るんであろうエクステンデッド版の出来次第ではありますけど。
ガンダルフに扮しているのは、もちろん『X-MEN:ファイナル ディシジョン』のイアン・マッケラン。灰色の魔法使いとはいえ老化ばかりはどうする事も出来ないのか、『ロード・ロブ・ザ・リング』の60年前とは思えぬ老けっぷりではありましたが、胡散臭さと俗っぽさが色濃く残っていたガンダルフと当然の如く好演。ちょいと元気の無さを感じたのは、たぶん周囲にお好みが居られなかったからなのではと邪推。
一方のビルボに扮したのは、『ラブ・アクチュアリー』『銀河ヒッチハイク・ガイド』のってよりは、最近もっぱら“ワトソン”としてイメージ付いちゃってるマーティン・フリーマン。無邪気で陽気なホビットってよりは、神経質で人嫌いな“ちっちゃいイギリス人”って感じではありましたが、60年後にイアン・ホルムになるんだから当然の事かと。
またドワーフ勢には、単体だとちょっとドワーフには見えなかった『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』のリチャード・アーミティッジを筆頭に、メリー&ピピンのような一種の清涼剤的役割を果たしていたエイダン・ターナーとディーン・オゴーマンらも。
その他、「この人は本当にエルフと同じようにしか歳を取らないんじゃないのか?」と思えた『ハンナ』のケイト・ブランシェットや、ノスフェラトゥの如くやはり変わらない『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』のクリストファー・リー、『Vフォー・ヴェンデッタ』のヒューゴ・ウィーヴィング、ホビットそのものである『シン・シティ』のイライジャ・ウッドに、『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』のアンディー・サーキスら、オリジナルシリーズの面々が揃っているのも嬉しい一本で。
「ただいま!」と同時に「いってらっしゃい!」
↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓