2012年 アメリカ/カナダ/フランス映画 106分 サスペンス 採点★★★
娘の同級生に、何週間も同じ服を着て学校に来る男子が。夏場になると異臭を発し始めるそうなのだが、クラスメイトたちは気を遣って何も言わないんだとか。修学旅行の際はさすがに違う服を着てきたらしいのだが、パジャマは持ってきておらず、翌日着る予定の服を着たまま寝たとのこと。その子のお母さんには私も何度か月光で会ったことがあるんですけど、極端に生活が困窮している感じも、田舎に多いギャンブルと酒の話題しかないようなタイプではなく、ごくごく普通の人って感じ。「じゃぁなんで?」と思ってしまうのですが、きっとただ単に息子に対し関心が全く無いのかなぁと。この子も親が違っていたらたぶん全く違う人生を送れたのになぁと、ちょっとばかし切なく思ったりも。
【ストーリー】
鉱山の閉鎖によりすっかりと寂れてしまった鉱山町コールド・ロック。そんな町で幼い子供達が忽然と姿を消す失踪事件が続発。一連の事件が謎の人物“トールマン”によって引き起こされていると噂される中、診療所で働く看護師ジュリアの息子が何者かに連れ去られてしまう。しかし、この連続失踪事件には驚くべく秘密が隠されていて…。
観てから書いてるですから、そりゃぁネタバレもしますよって。
その多くがちょっとした家で出会ったり離婚した両親間のトラブルに巻き込まれたものであっても、年間何十万人もの未成年者が失踪し、内千人程が何の痕跡も見つからないままだと言われるアメリカの失踪事情をモチーフに、『マーターズ』のパスカル・ロジェが大胆な展開で描き出したサスペンススリラー。
『フォーガットン』や『フリーダムランド』風の出だしから、あれよあれよと『ジーパーズ・クリーパーズ』等都市伝説ホラー的な香りが漂い始め、気が付いたら『ゴーン・ベイビー・ゴーン』に着地していた本作。その二転三転どころか、転がり落ちて前後不覚になったかのような大胆な展開に目が行ってしまうが、取り扱っているテーマの重さとリスキーさがなかなかに興味深い。
“大人の都合で左右される子どもの幸せ”“子供にとって必要なのは環境?/親の愛情?”などに深く切り込み、下手をすれば「なんだい?貧乏人は子どもを持っちゃいけないのかい?」と穿った見方をされてしまうリスクを恐れず問題を観客に投げかけた姿勢はアッパレ。失踪事件が大々的なニュースになってる割に意外と近くで子供らが堂々と暮らしていたり、子供達が置かれている環境の過酷さがイマイチ上手く描けていなかったりと詰めの甘さもあるが、観賞後しばらく考えさせられる一本に仕上がっていた。また、世界中にあることではあるが、殊アメリカで顕著な“児童失踪”“都市伝説”“都市部と地方の格差”を外国人の視点から眺めているって感じも印象的で。
モラルや法ってのを度外視して“子どもの幸せ”のみを考えるのならばその行動も理解できなくもないが、でもやっぱり否定もしたい、そんな問題提起の塊のような主人公ジュリアに扮したのは『トータル・リコール』『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』のジェシカ・ビール。資金難で頓挫しかけた本作を、私財とギャラを投入して完成させたことで製作者にも名前を連ねている。基本的に善人のイメージが強い彼女の持ち味を活かしたからこそ、本作のどんでん返しが功を奏したのかと。いつもの明るいイメージを抑え、低いトーンでの好演も良かったなぁと。
また、自ら進んで親元を離れるが、新しい養母の希望をかなえる事ばかりを考えるその姿に幸福感が感じられない一方で、実家では治る事の無かった心因性発声障害がすっかり改善している様に、これまた深く考えさせられるジェニー役に『ケース39』のジョデル・フェルランドが。
その他、『インモータルズ -神々の戦い-』のスティーヴン・マクハティ、“キャンサーマン”こと『ゴースト・ハウス』のウィリアム・B・デイヴィス、『マリオネット・ゲーム』のサマンサ・フェリスなど、くせ者ぞろいのキャスティングも特徴的で。
強硬派のあしながさん
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