2007年03月10日

クロウ/飛翔伝説 (The Crow)

監督 アレックス・プロヤス 主演 ブランドン・リー
1994年 アメリカ映画 102分 アクション 採点★★★★

“運命”ってのは基本的に信じない性質なんですが、それでも偶然にしては出来すぎの出来事ってのも少なくないんですよねぇ。「宿命だぁ!」「呪いだぁ!」と安々とは騒ぎたくはないものの、何か皮肉的な繋がりを感じたりも。

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【ストーリー】
結婚式を翌日に控えたエリックとその婚約者は、街で破壊の限りを尽くす悪党どもに惨殺されてしまう。その一年後、死者の魂を冥界へと導くカラスの力によってエリックは復活。復讐に立ち上がる。

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ジェームズ・オバーによる人気コミックを、『ダークシティ』『ガレージ・デイズ』のアレックス・プロヤスが映画化。
撮影中の事故で主演俳優を死なすという、映画製作をする上で最も招いてはならない事態を招いてしまった本作は、編集・合成・代役といったあらん限りの技をもって完成となる。しかしながら、作品にはそんな急場しのぎ的な粗さは全く感じず、ゴス風味を全面に打ち出した黒を基調とした画面と、婚約者はおろか自分まで既に死んでいる分絵空事のハッピーエンドには到底辿り着けないもの悲しい物語が調和している。一枚の絵として完成されている背景の力が強過ぎて手前で何が起きているのか分かりづらいシーンもなくはないのだが、その力強い映像と絶望に支配された設定の相性は良く、それゆえに“いつかは雨も止む”僅かな希望が叶うラストがより一層際立っている。また、キュアーやストーン・テンプル・パイロッツなど、個人的にも大好きなミュージシャンらの曲も本作の世界観構築に一役買っており、中でもまぁこれも大好きなナイン・インチ・ネイルズによるジョイ・ディヴィジョンの“デッド・ソウルズ”カヴァーをバックに夜の街並みをカラスが飛び回るシーンは圧巻。そう言えば、ジョイ・ディヴィジョンはかつてワルシャワってバンド名だった時期が。もちろんその名の由来は、デヴィッド・ボウイの名作“ロウ”に収められている曲名から。あらあら。こんな所にも、ボウイアドバンテージが適用されているんですねぇ、このレビューは。

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ブルース・リーの息子として生まれた瞬間から、背負うには大き過ぎる重荷を背負い込んでしまったブランドン・リー。とんでもない映画として観る分にはとても楽しい『リトルトウキョー殺人課』や、アクション映画としては充分及第点に達する面白さを持った『ラピッド・ファイアー』で活躍するも、誰の目にも明らかなほど父親の面影を残したその風貌が、彼本来が持つ個性や味から目を逸らさせてしまう結果に。父親の面影を消し去る分厚いメイクを施すことで、初めて彼本来の個性と表現力の深さを思い知らしめることとなったのは、皮肉でもある。悲しげな微笑を浮かべる道化のメイクは、まるでブランドンの心そのものに思えてしまうことも。
当然ブランドンにばかり目が行ってしまう作品ではあるのだが、“いい警官役”っていうと真っ先に浮かんでしまうほど『ハードロック・ハイジャック』とキャラが被っているアーニー・ハドソンや、高貴でインテリの香りプンプンの顔立ちの割にホラーにばかり出ている印象もある『キャンディマン』のトニー・トッドなど、脇を固める役者も、その個性を存分に発揮するいい顔ぶれ揃い。
ハリウッドスターの仲間入りまで、ほんのあと一歩のところで命を失ってしまったブランドン・リー。その彼の死によって神格化された気さえする本作なのではあるが、たとえ微々たる違いであったとしても、彼が生きて撮影を終了した完全なる形で観たかったと思うものである。

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“もしも…”ってことばかり浮かんでしまう一本

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posted by たお at 01:17 | Comment(2) | TrackBack(1) | 前にも観たアレ■か行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>父親の面影を消し去る分厚いメイクを施すことで〜
この作品には、そんな深いものが色々あったんですね。
軽く「B級だけど、いい作品だ」程度に感じていたので、目からウロコです!
Posted by 哀生龍 at 2007年03月10日 12:51
哀生龍さまこんにちは〜♪
ちょっと父親にもそれなりの思い入れがあったんで、ブランドンに期待していた分、非常に悲しい出来事だったんですよねぇ。。。
単純に面白い作品なんですが、観る度に少しばかり寂しくも^^;
Posted by たお at 2007年03月13日 16:11
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Tracked: 2007-03-10 12:49