1998年 アメリカTV 45分 ホラー 採点★★★★
かつて好きだった人って、頭の中で思い出やらなにやらが美化されまくってしまうこともしばしばで、引き出しの奥からその当の本人の写真が出てきても「誰だい、この人は?」となることも。まぁ、“好きー!”ってなった時点でフィルターがかかってしまうからなんでしょうが、“好き”ってエネルギーはスゴイもんですねぇ。

【ストーリー】
テキサスの田舎町で観光客が全身の血液を抜かれた状態で発見された事件を調査中だったモルダーとスカリーだったが、吸血鬼の仕業と断定するモルダーが容疑者の少年を木の杭で胸を貫き殺害してしまう。この異常事態をFBI副長官へ報告する為、二人は事の顛末を語り合うが、二人の証言は微妙に食い違いをみせ…。

“幼少期に行方不明となってしまった妹の捜索とその背後にある政府の陰謀”という基本ラインはあるものの、その基本ラインとは無関係の一話完結エピソードの面白さと、シリーズを通してくっつきそうでくっつかないモルダーとスカリーに「いいから早くチューしちゃえよー!」と叫んでしまう程よいじれったさによって長年に渡って放映されるも、なかなか飽きのこなかったX−ファイル。それでも当然の如く訪れるマンネリズムが、二人のイチャイチャ度と笑いの増量へと転化された、シリーズ屈指の面白さを持つシーズン・ファイブの中の一本。
人間社会にひっそりと紛れ込んで生活を送る吸血鬼集団の中の跳ね返り者が起こしてしまった事件を、モルダーとスカリーがそれぞれの視点で回想する羅生門形式で描かれる本作。とは言え、「真実とはなんぞや」という堅苦しいテーマではなく、武勇伝をやや誇張し、都合の悪いことはちょっとだけ修正し、好きな娘の前に現われた男は思い切りブサイクに脳内変換するという、非常に中学生的感情論な物語。“友達以上恋人未満”を行ったり来たりと、中学生カップルを見ているかのようなじれったい主人公らに対し、悪役の吸血鬼も「やっぱ吸血鬼は牙がないとな」とワザワザ入れ歯をつける、中坊っぽさ満点。バラエティ豊かなシリーズの中でも異彩を放つ一本であるが、誰にでも変身できる男がモルダーに変身し、「オレがこれだけハンサムだったら、もっとマシな人生を送るのに」とモルダーに説教をする“スモール・ポテト”のクリフ・ボール監督なだけに、この独特な味わいと中学生感覚が出たのではと。

UFOとポルノが大好きという、世の男性の鑑ともいえるモルダーを演じるデヴィッド・ドゥカヴニー。寝てるのか起きてるのか分からない風貌と、鼻にかかったモシャモシャとした喋り方が非常に愛らしかったのだが、「オレはモルダーで終わる器なんかじゃない!」と言い出した途端に消え去ってしまう典型的なTVスターの末路を。モルダー役があまりにハマってたのもあるが、開き直ってこの路線での復活を期待したいところ。思いのほか甲高い声と、TV画面で観る限りは「なんてキレイな人だろー」と毎回ホレボレする人形のような美しさを持つジリアン・アンダーソン。スクリーンで観ると意外とスケールが小さいのでビックリもしたが、そこがTV女優と映画女優の格の違いなのか。とは言え、“食人大統領”で有名なイディ・アミンを描いた『ラストキング・オブ・スコットランド』で意外と高い位置にキャスティング。食べられないことを切に願いながら、久々にスクリーンに映る彼女を堪能したいもので。
でもって、本作の目玉はもちろんルーク・ウィルソン。モルダーの脳内では嫉妬もあって出っ歯の男に変換されてしまってはいたが、美女を前に感心と感嘆をしているだけという、いつものルーク芸を披露。基本的には悪役のはずなのに、ついつい「ゴメンなさい」と言ってしまうのもルークらしくていい。ずーっとこのままで行くんでしょうねぇ、ルークは。

嫉妬もフィルターをかけるもので
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albrechtです。
フラット・パック巡りに『X-ファイル』という新しい道が拓けました! ありがとうございます!!
>典型的なTVスターの末路を
結局、デュカヴニーは「行方不明」ということにしてシリーズは継続したんですか? 向こうのテレビってバイタリティありますね〜(笑)。
なにせ、最初に観たルークがこれだったんで、それこそチャリエンの頃はこのイメージしか^^;
結局TVの方はモルダー不在のまま、なんとなく終わっちゃいましたねぇ。。。