2007年02月06日

マスターズ・オブ・ホラー/インプリント 〜ぼっけえ、きょうてえ〜 (Masters Of Horror:Imprint)

監督 三池崇史 主演 工藤夕貴
2005年 アメリカ映画 63分 ホラー 採点★★★

そっかぁ。あそこは地獄に通じる穴だったのかぁ。通りで、深入りするとろくな目に遭わないわけだ。

【ストーリー】
かつて愛した遊女の小桃をアメリカへ連れて帰るため、日本中の遊郭で彼女を探し歩いているアメリカ人ジャーナリストのクリス。辿り着いた川の中の浮き島にある遊郭で小桃が働いていたことを突き止めるが時既に遅し、小桃は死んでいた。彼女の最期を知るという醜い顔をした遊女の口から、おぞましい事実が語られる…。

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ジョン・カーペンター、トビー・フーパー、ドン・コスカレリら、ホラー映画界を代表しつつも最近映画の仕事のない巨匠らが集まり短編を競い合うという夢のような番組“マスターズ・オブ・ホラー”に、日本人として唯一参加した三池崇史による一本。“恐怖表現”だけに関して言えば、三池以上の監督がゴロゴロといそうなものだが、やはり『オーディション』での激痛表現がまだ脳裏を離れないのか、今回の抜擢に。ただ、三池に言っては一番いけないセリフ、「思う存分やってくれ」を言っちゃったのが運の尽きだったようで。ホントに思う存分やっちゃう人なのに
叶わなかったとは言え、アメリカでの放送が前提で製作された本作。しかしながら、視聴者が何の事前説明もなく放り込まれるのは、日本の土着臭ぷんぷんの世界。“遊郭”“貧困”“近親相姦”“奇形”“堕胎”、これらは全て日本独自のものではないし、世界中どこにでもあることなのだが、この画面上に漂う濃密な空気は、日本でしか生まれ得ないもの。なんというか、画面中に土まんじゅうの奥底から染み出したメタンガスが充満しているかのようだ。もともと色彩感覚に秀でた監督ならではの際立った色合いと、時折見せる絵画的美しさを持つ構図、そして濃厚な湿度が支配する舞台の中で繰り広げられる、歪みきった愛と過剰なまでの暴力の物語である本作は、凄まじくパワフルだ。痛点を狙い撃ちする激痛表現も、その裏に笑いが隠されている分だけ非常に邪悪。

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しかしながら、どうにも締りが悪い。もちろん、時間の短さからくる食い足りなさもある。だが、確信的にモラルとタブーを踏み躙る“堕胎”表現をこれでもかと見せ、ゴリ押しのストレートで攻めるかのような恐怖表現と痛点表現の連続の後に来るオチの部分、“アレの正体”と言うフォークの落差が弱いのだ。『極道恐怖大劇場 牛頭』を期待するのは酷だが、それまでの展開が見事なだけに、あのカワイイとも怖いともなりきれないアレの中途半端さが残念。出さないなら出さない、出すならストーンと落ちる勢いが欲しかったもので。まるで、人ごみに突っ込むつもりで確信的にブレーキを壊したトラックに乗り込みながら、ギアがローだったかのような半端さ。
しかし、そんな中途半端さは、役者の破壊力が帳消しにする。もちろんそれは、ジャーナリストにも憔悴しきった男にも見えないビリー・ドラゴではない。非常に日本的なむせ返る湿気に覆われながらも全編英語という特異な空間の中で、異様な輝きを見せる工藤夕貴と原作者ながらもゲスト出演を果たした岩井志麻子の存在感。特に、主役であり、そのキャラクターの持つ二面性をきめの細かい演技で魅せる工藤夕貴を凌駕する圧倒的なインパクトを持つ岩井志麻子の存在感は、もう反則である。セリフもなく満面の笑顔で針を歯茎に突き刺す岩井志麻子。あれは絶対に素だ。原作者が一番ぼっけえ、きょうてえだ

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岩井志麻子に“キリキリキリキリキリ”ってされるのだけはヤダ

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posted by たお at 21:14 | Comment(4) | TrackBack(22) | 前にも観たアレ■ま行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
素敵な作品でしたよねぇ〜(* ̄▽ ̄*)
志麻子があまりにいい顔するんで、痛いシーンで笑っちゃったりして、さらにまたナイスなんですよねぇ(はぁと)
「原作本の前についている『インプリント』は、ああ“インプラント”だったのね」って、誰しも考えてしまいますね〜♪
とは言え、内容は決してギャグではなくて本当に怖い話ですし。
あのクリーチャーは、あまりのしょぼさに、胸キュンしてしまいました、わ・た・し♪
だって、あまりにベビーフェイスなんだもんっ☆

今携帯から書いているんで、後ほどTBしま〜す♪
Posted by とらねこ at 2007年02月07日 11:35
こんばんは。
とても痛い(痛そうな)印象が残る作品でした。
暴力描写に厳しいアメリカでも、ケーブルTVでなら
放送できそうな感じでしたけど、
やっぱり生理的に痛そうだから
ダメなんでしょうね!
Posted by @KOBA at 2007年02月07日 22:47
とらねこ様こんにちは!
微妙なバランスのズレが非常に三池らしくて良かったですねぇ。もうちょっとストーンと落ちれば、もっと良かったんですがね^^;
Posted by たお at 2007年02月08日 10:23
@KOBA様こんにちは!
いやぁ、痛そう痛そう^^;
ただ、アメリカで問題になったのは堕胎の部分のようですねぇ。まぁ、それも仕方がないですが。
Posted by たお at 2007年02月08日 10:27
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