1988年 イタリア/フランス映画 120分 ドラマ 採点★★★★
別段お酒が好きなわけでもないので、なければないで別に困りもしないのだが、一旦飲み始めると止めどなく飲み続ける私。自分では充分酔っているつもりでも、見た目も口調もなんら変わらないので目の前に空のボトルが転がってようが「飲んでない!」と言われるのは困りものですが。特にお酒が好きなわけでもないとはいえ、お酒の場の雰囲気は結構好きで、ラムなどの香りの強めのお酒を片手に少し離れた場所から周りの会話に黙って耳を傾けてたりも。まぁ、文字で書くようなカッコイイものではなく、その会話の端々に心の中で激しいツッコミを入れているんですが。
【ストーリー】
パリでホームレスとして酒浸りの日々を送るアンドレアス。ある日、とある紳士から「日曜日に教会へ返す」条件で200フランを手渡される。誇りこそ失っていないアンドレアスは、日曜日ごとに教会へ足を向け200フランを返そうとするが、その度に不測の出来事が起きてしまい…。

店に入れば問答無用でワインがグラスに注がれてしまうパリを舞台に、小さな奇跡を次々とお見舞いされる主人公の姿を描く一本。
最後に飾られる“主よ、すべての酔っ払いに美しい死を与え給え”の言葉が示すように、お金が入ればすぐに酒を飲んでしまう主人公に一切批判的な視線は向けられはしない。外国人労働者としてフランスを訪れるがホームレスに身を落としてしまった経緯を、大袈裟な演出やセリフではなく映像で徐々に明らかにしていき、それでも誇りと礼儀を忘れない主人公に劇中で微笑みかけた天使と同様の慈しみと優しさに満ちた監督の視線が魅力的。
小さな奇跡の数々も、懐かしい人に出会ったり、ちょっとモテたりと非常に些細で日常的な人と関係する出来事であり、その“日常に入り込んだちょっと不思議”感が、ほろ酔い気分で聞くちょっといい話的幸福感を生み出している。

早くからハリウッドを活躍の場にするも、『ブレードランナー』や『ヒッチャー』で強烈なイメージとそのナチスの将校風の顔つきからか作品にあまり恵まれず、たまに大作で見かけても『シン・シティ』や『バットマン ビギンズ』のようにチンケな悪役ばかりだったりもするルトガー・ハウアー。『ウォンテッド』のようなしびれるカッコ良さを発揮することもあったが、ハリウッドではその表面の冷たさばかりに着目されていた感も。しかし本作ではその冷たい目線に秘められた悲しみと、その表情にならざるを得なかった過去、そして時折垣間見せる喜びと優しさに溢れた目元と、存分にルトガー・ハウアーの魅力を引き出している。
そんなルトガー・ハウアーや小悪魔的魅力のサンドリーヌ・デュマなど、人物の描き方も魅力的な本作。酒のつまみにうってつけの一本である。

何を飲みたいかぐらいは聞いて欲しい気も
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