2007年01月28日

ミラーマスク (Mirror Mask)

監督 デイヴ・マッキーン 主演 ステファニー・レオニダス
2005年 イギリス/アメリカ映画 104分 ファンタジー 採点★★★★

本を読んでいる時の喜びや興奮は、なかなか映画では得難いもの。文章と、その文字と文字の間から生み出され頭の中に描かれる情景を越えるものが、映画では滅多に得られることがないからである。人気小説の映画化がファンからケチョンケチョンにされるのも、その辺に一因が。しかし、だからといって映画が本より劣っている証拠にはならない。“読み描く”と“見聞きする”では元々土俵が違うが、映像の作り手の想像力が観客のそれを遥かに凌駕する場合、本では得られない興奮が映画で得られることに。

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【ストーリー】
サーカス一家に生まれ育ったヘレンは、そんな生活から抜け出すことばかりを考える少女だった。しかしある日、母親が重病に倒れる。悲しみに暮れるヘレンはいつしか眠りに落ちるが、目を覚ますとそこは光と闇の勢力のバランスが崩れた為崩壊の一途を辿る幻想的な世界であった。

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私の文章力なんかじゃとてもこの作品の魅力を伝えられないが、出来る限り前向きに頑張ってみようかと。
ファンタジー作家であるニール・ゲイマンの原作の映画化であるが、もちろんのこと読んだことがない。しかしながら、そこにあったであろうイマジネーションを刺激する世界観をものの見事に映像化したデイヴ・マッキーンに、まず脱帽。基本的なストーリーラインは、“現状に不満を持つ思春期の少女が、不思議な世界に迷い込む”といういたってシンプルで、ジム・ヘンソン・カンパニーらしいというか、まんま『ラビリンス/魔王の迷宮』。思春期を迎えた少女の心に芽生えた二面性を光の国と闇の国に置き換え、“グレる”という思春期名物のイベントを、“闇の王女が現実の世界に脱走したから”に置き換えることで、ファンタジー映画ながらベタなまでの青春映画を観ているような安心感と安定感を得られている。映像先行型の映画は、その映像に負けないように凝ったストーリーをつけてしまい、そのために映像も物語も混乱し破綻することが多いのだが、本作ではそのベタならではの安定感があるからこそ、次々と湧き出てくる強烈なイメージの奔流に巻き込まれながらも物語を見失うことなくついていける結果になっている。また、映像にこだわるあまり一部分だけが突出してしまい、人物や背景と溶け込まない“小学生の中にヒョードルが一人”のような状況に陥らず、全部が全部突出しちゃっているので、“小学生が全員ヒョードル”の状態になっているので、バランスも崩れていない。でしゃばり過ぎないが自己主張も忘れない音楽も、非常に良い。

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ファンタジー世界の美少女としては、その突出した美しさと若さと反して醸し出す妖しげな雰囲気をも持っていた『ラビリンス/魔王の迷宮』のジェニファー・コネリーに敵う存在はそうそういないのだが、ほんのりゴスの香りも漂う本作では、ステファニー・レオニダスの魅力もなかなかのもの。闇の女王に囚われ、どんどんゴスっ娘化していく彼女に、なんとなく『レジェンド 光と闇の伝説』のミア・サラを髣髴させますし。もちろん相手役の妙な仮面の男は、全くトムちんを髣髴させませんが。
しかし、やはりこの作品で最も魅力的に描かれ、心を鷲掴みにするのは、部分的および全体的にデジタル処理を施された不思議の世界の住人達。相変らず同じナゾナゾばかり聞いてくるスフィンクスや、会話がてんで成り立たない宙に浮く巨人、「つまらない!」と貶されると図書館へ帰ってしまう本など、どれもこれも魅力的なのだが、一番のお気に入りは一羽をのぞき全員名前がボブのマッチョな鳩。あまりにムキムキなので確信は持てませんが、たぶん鳩。『YAMAKASI ヤマカシ』の如く格子を使って自由に飛び回り、『フラッシュ・ゴードン』のホークマンの如く闘う様に興奮。
映画祭でのみ公開され、劇場未公開に終わった本作。でかいスクリーンで観たかったなぁ

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“分け合うとなくなってしまう物”ってなーんだ?

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posted by たお at 03:21 | Comment(2) | TrackBack(4) | 前にも観たアレ■ま行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは♪
私も大きなスクリーンで観たかった作品です。
すごく面白いかと言うとそうでもないんだけど、とても不思議な魅力がありました。
映像がステキでしたーっ☆
Posted by ゆかりん at 2007年01月28日 11:38
ゆかりん様こんにちは〜♪
ビデオ屋では、他のホールマーク製のファンタジーものに埋もれてしまっている本作ですが、見事な魅力を持つ一本でしたねぇ。
Posted by たお at 2007年01月28日 14:36
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