2012年 アメリカ映画 142分 アクション 採点★★★★
王族や貴族が君臨していた封建社会と今の民主主義社会との違いを自分の生活レベルでざっくりと考えてみると、“自分の統治者を数少ない選択肢の中から選べる”“「あーチミチミ、今からちょっと殺すから」と戯れに殺されることがそうそうなくなった”“アホな位の年貢を納める必要が無くなった反面、「消費しろ!消費しろ!」と暗に強要されるようになった”“「夢を売るのが仕事です!」って人たちが夢の安売りをするようになった”くらいなもんですかねぇ。なんか、あんまり変わってない気も。
【ストーリー】
強大な権力を誇る独裁者によって統治される国家パネム。その首都キャピトルに住む特権階級の人々は、12に分けられた貧民地区から搾取した物資で優雅な暮らしを送っている。独裁者は過去の反乱に対する罰と抑止を目的に、毎年各地区から12〜18歳の男女一組を選定し最後の一人になるまで殺し合いをさせる“ハンガー・ゲーム”を開催していた。そして今年。幼い妹の代わりに第12地区から出場することとなったカットニス。凄惨な殺し合いが続くゲーム中でも人間性を失わない彼女の姿に、虐げられていた大衆は僅かな期待を持ち始め…。
同名ベストセラー小説を『カラー・オブ・ハート』のゲイリー・ロスが映像化した、全三部作の第一弾となる近未来アクション・ドラマ。『コンテイジョン』のスティーヴン・ソダーバーグが第二班監督として暴動シーンを撮ったってのもちょいと話題に。
自由と権利を謳いながらも、単に統治と搾取方法が巧みになっただけとも言える現代民主主義に対する警鐘も込めた本作。叶うはずもない甘い夢と刺激的な番組で大衆のガス抜きをし、富と権力が都市部の一部の人々に集中する現代社会を近未来独裁国家に置き換え描き出す。これだけであれば単に『バトルランナー』や『デス・レース2000年』で終わってしまうところなのだが(それはそれで好きですけど)、体型と髪型と親の財力が物を言うジョックスが君臨するプチ貴族社会的な学園生活の実態をしっかりと投影しているのが新鮮。愛する者と自分の身を守るために力ある者に擦り寄らなければならぬ様など、若者の複雑な心境も繊細に描き出せている。“近未来で若者が殺し合う”って設定自体は使い古されているが、そもそも社会設定やゲーム内容に目新しさを求める作品ではなく、その若者たちの置かれた状況と心の動きを描くべき作品だと思うので、そこのみならず周囲の大人の心の動きまでをも描けた本作は充分過ぎるほど合格点なのでは。
文章であればもっと伝えられたであろう片想い少年ピータの心境や、ゲーム展開に対する大衆の反応などがややゴチャゴチャしてしまった印象もあるが、次回作への繋ぎとは言え、一人が花火を打ち上げた位ではそうそう変わらないほど完成されてしまった社会の実態や将来に向けた不穏な空気、それでも消えないほんの僅かな希望を残す締め括りも非常に好みだった良作で。
主人公のカットニスに扮したのは、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』でムッチムチのミスティークに扮したジェニファー・ローレンス。分かりやす過ぎる美人ではない分、能天気なジョックスとは正反対のカットニスにピッタリ。他人よりちょっとだけ早く成長してしまったかのような醒めた暗さってのも魅力的。
そのカットニスに片想い中のピータには、この後いろんな方向に転がりそうな卑屈さが仄かに香るジョシュ・ハッチャーソン、本命色男に『エクスペンダブルズ2』のリアム・ヘムズワースが。見た感じの適材適所なキャスティングで。
そんな若手衆を取り囲むベテラン勢も、素の反体制っぷりが隠れてない『ディフェンドー 闇の仕事人』のウディ・ハレルソンを筆頭に、好みの顔立ちが台無しになってた『崖っぷちの男』のエリザベス・バンクス、ジェニファー・ローレンスとは父娘ともに共演を果たしたこととなるレニー・クラヴィッツ、『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』のスタンリー・トゥッチに、『ゴーストライダー』のウェス・ベントリーらといった魅力的な顔ぶれが。
そしてやっぱり『メカニック』のドナルド・サザーランド。扱いに「やぁやぁ奥様!ご存知ドナルドですよ!」的な大物ゲスト感が拭えなかったものの、やや突拍子無い設定の突拍子無い役柄を演じさせたらドナルドに敵う者なし。期待通りのドナルドを観れたので大満足。
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