マイアミ・バイス (Miami Vice)

監督　マイケル・マン　主演　コリン・ファレル
2006年　アメリカ映画　132分　アクション　採点★★★

日曜の夜１０時半。ウィリアム・カットが真っ赤な全身タイツで辛うじて宙に浮く“アメリカン・ヒーロー”が終わった後に始まった“マイアミバイス”。初めこそ「ケッ！チャラチャラした優男どもめ！」と大した関心を払わなかった番組だったが、日曜洋画劇場がどうしようもなくつまらなかった時などに観ているうち、その表面のきらびやかさとは裏腹に重苦しい内容を持つこの番組に徐々に魅力を見出し、やがてパステルカラーのＴシャツに麻のジャケットを羽織りドン・ジョンソンの“ハートビート”を口ずさむまでハマることに。痛々しい思い出ですねぇ。もう最後に“マイアミバイス”を観てから随分と経ち、いい加減身体からその毒気が抜けたと思いきや、未だにヤン・ハマーによるテーマ曲をふと耳にすると、無条件で頭の中に“マイアミ、青い海、輝く太陽、ここはフロリダ半島最大の都市…”とナレーションが流れてしまいます。まだまだ抜けておりませんねぇ。



【ストーリー】
マイアミ警察特捜課の刑事、ソニーとタブス。ある日、以前彼らが使っていた情報屋が、ＦＢＩなどの捜査情報が麻薬組織に漏洩していることを告げ、壮絶な死を遂げる。事件の背後に南米の麻薬組織が絡んでいることを知った彼らは、犯罪者に成りすましその組織に潜入する。



初めて「“マイアミバイス”が映画になる」と聞いた時は、テッド・ニュージェントの歌うテーマ曲も印象的だった“リトル・ミス・デンジャラス”をそのまんま映画化してくれないかなぁと淡く願ったものだったが、無論そんな願いが叶うわけもなく、それどころか舞台の大半がマイアミですらない作品が完成することに。「ＴＶでは出来なかったことに挑戦する」とマイケル・マンがかつて語っていたが、こういうことだったんでしょうか？
非常にウザったい髪形をしたコリン・ファレルが、赤くはないがフェラーリを乗り回す序盤こそ“マイアミバイス”っぽさを感じさせるが、後はシリアス＆リアル志向の潜入捜査ものとなる本作。それはそれでマイケル・マンが描き続けてきた世界と合致するし、ロケを中心とした映像の美しさもあり、どこを切ってもビシリとマイケル・マン印の入った作品になっている。得意の銃撃戦も、チームワークを重視し、多くを語らずとも主人公らが深い信頼関係にあることがわかる“男の世界”描写も、相変らず見事。しかしながら、肝心の主人公らがそのシリアス＆リアル志向の世界観と噛み合っていない。頭がずば抜けて冴え、どんな乗物も見事に乗りこなし、銃の腕前はピカイチで、さらにモテモテの、ＴＶからまんま出てきたスーパーコップそのものなのだ。そんな彼らだから、どんなに状況が厳しくなろうと危機感が感じられず、困難を乗り越えようが、それが本当に困難だったのか不明になることも。また、男を描くことではハリウッド随一の腕前を持つマイケル・マンも相変らず恋愛描写は苦手なようで、中盤にやたらとダラダラと続く恋愛シーンが、ただイチャイチャしているだけに見えることも。やたらとシャワーばっか浴びてますし。苦手なことは別に恥ずかしいことじゃないので、この際「女性は全く理解出来ないから描かない！」と断言するジョニー・トーのように開き直ってみては。結局のところ何にも解決しないホロ苦さが、非常に“マイアミバイス”的でありマイケル・マン的である分、これらのチグハグさはやはり残念。そして何よりも、ヤン・ハマーによるテーマ曲が流れないのは、やはり寂しい。



殺し屋のコスプレに身を包んだトムちんの壮絶な転びっぷりしか記憶に残らなかった『コラテラル』に引き続き、マイケル・マン作品に登場するジェイミー・フォックス。本作の企画を自ら持ち込んだだけあって、気合充分にクスリとも笑わないタブスを熱演しているが、オリジナルのタブス同様やや影の薄い存在に。しかしその分、ソニーを演じるコリン・ファレルが濃い。一歩間違えると『ハード・ターゲット』のヴァン・ダムになってしまいそうな髪形で、ギラギラと表情のすこぶる乏しいコン・リーを見つめる様は、まるで発情期の猛獣のようだ。特にお気に入りの俳優の一人というわけではないのだが、薄口でお上品な俳優ばかりになってきたハリウッドだけに、このギラギラさは貴重。やはり、欲が強い人間こそ強いんだなぁと実感。
音楽界などから大物ゲストが出演することも多かった“マイアミバイス”。デュラン・デュランのジョン・テイラーも出演し、サプライズゲストの名に恥じないビックリするような大根演技を披露することも、記憶に強く残っていたりする。しかしながら、本作にはそういったお楽しみはなく、一時はカメオ出演の噂もあったドン・ジョンソンも、残念ながら出演は果たせず。もし本作の続編を作るのであれば、せめてエドワード・ジェームズ・オルモスくらいは出して頂きたいもので。で、ドン・ジョンソン。ＴＶではそこそこ活躍しているようだが、映画ではさっぱり。本作にも出演できないとなると、残るはもう『ハーレーダビッドソン＆マルボロマン』の続編を自ら製作するしか道はないような気も。ミッキーさんならきっと出てくれるので、頑張れドン。


ココだけ見ると、もの凄くマイアミバイス

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Comments

こんばんは。
弊ブログへのトラックバック、ありがとうございました。
こちらからもコメントとトラックバックのお返しを失礼致します。

この作品は、潜入捜査官という題材や出演者の皆さんの顔触れなど、面白くなりそうな多くの要素がありながら、狙いが絞られていない今一つの仕上りの映画となってしまった感があります。

また遊びに来させて頂きます。
ではまた。

Posted by たろ at 2007年01月17日 00:19

私もオリジナルの「マイアミバイス」が大好きで、この作品も映画館で見てきましたが「もう一度ＤＶＤで見る？」と聞かれたら「イヤ、勘弁してくれ」と答えてしまうでしょうね。でもサントラはお気に入りですが。

Posted by 怪盗紳士 at 2007年01月17日 00:26

こんばんは〜♪TB有難う御座いました♪
あまり面白味のない映画になっちゃってましたね^^;
やっぱりマイケル・マン的なのが一番のネックですよね。
にしても、『アメリカン・ヒーロー』懐かしいです！
面白かったですよね〜^^

ではでは〜、これからもよろしくお願いします♪

Posted by Aki. at 2007年01月17日 05:55

＞ココだけ見ると、もの凄くマイアミバイス
…わははははは！！ほんまや！！！

眠いフィルムでしたわ〜。コラテラルも夜ばかりだったけど、面白かったのにな〜。
コリン・ファレルはあの濃さが毛嫌いされているようですが、小生はそれ故に、好きな俳優です。

Posted by sheknows at 2007年01月17日 08:21

こんにちは♪
期待してたのにイマイチでした､､､
コンビらしい感じもなかったし。
音楽はかっこよかったんですけどねぇ。

テレビの方はジョン・テイラーも出ていたんですか！う゛､､､知らなかった。デュラン・デュラン好きだったんですよ♪特にジョン！

Posted by ゆかりん at 2007年01月17日 13:14

たろ様こんにちは！
なによりも、マイケル・マンのスタイルのままマイアミバイスをやろうってのに無理が＾＾；
多少なりとも主人公にリアルさがあれば別だったんでしょうけどねぇ。

Posted by たお at 2007年01月17日 15:14

怪盗紳士さまこんにちは！
自宅でリラックスしながら観てたんで、それなりには楽しめましたが、やはり繰り返し観るまででも＾＾；
音楽は、ヤン・ハマーが流れないのでダメです。

Posted by たお at 2007年01月17日 15:15

Aki.様こんにちは！
リアルな犯罪ドラマときらびやかさが混在していたオリジナルなのに、ただリアルになっただけじゃぁねぇ・・・＾＾；
私も書いてて思い出した“アメリカン・ヒーロー”。
土曜の夕方くらいに再放送してくれませんかねぇ。

Posted by たお at 2007年01月17日 15:18

sheknows様こんにちは！
マイアミバイスを観に行ったはずが、マイアミバイスのコスプレをした人が出てくるコラテラルっぽい作品になってましたねぇ。どっちも中途半端な。

Posted by たお at 2007年01月17日 15:20

ゆかりん様こんにちは〜♪
確か“パワー・ステーション”として出ていたので、ジョンの隣にはアンディもいましたよ。チリチリ頭の。どっちも演技はアレでしたがｗ

Posted by たお at 2007年01月17日 15:21

すごい！
たおさん　もの凄い『マイアミ・バイス』マニアだったのですね！
これは、ほんとに残念な結果になってましたねぇ。
どこが「マイアミやねん」とツッコミ入れたくなるほどです。
コリンも、あんなに太る役作りをする必要があったのでしょうか？
不恰好なだけでした。

Posted by なぎさ at 2007年01月17日 16:14

こんにちは！TBさせて頂きました。
私はTVシリーズ観ていなかったので、結構楽しめました。
でも、続編は無理かな？(^_^;)
今後とも宜しくお願い致します。

Posted by cocos at 2007年01月17日 21:27

こんにちは。
たおさんはいい感じでマイアミバイスにはまっていらっしゃったんですね〜
私は試しに裸足でスニーカーをはいてみた記憶があります。
ムレました。

リメイクってオリジナルのファンを喜ばせてナンボだと思うんですが。
犬神家を少しは見習って欲しいものです。

Posted by starblog at 2007年01月17日 21:34

ＴＢありがとうございました。
コリンはワタシのまわりでも、チョット〜と言う方が多いです。
「このギラギラさは貴重。」
まさしくワタシも同感です。好きな俳優さんではないけど、コユイキャラも貴重ですよね。
ラブシーンがやたらと長くてジャマでした。ダダッ子コリン君のせいかな？

Posted by サラ at 2007年01月17日 23:26

コン・リーがぜんぜん魅力的に見えなかった・・・。
ラブシーンもグっとこなかった・・・。
あれ？「ラスト・オブ・モヒカン」ってマイケル・マンでしたっけ？
ああ、あれもダニエル・デイ・ルイスのかっこよさに
目を奪われただけでした・・・。

Posted by kino at 2007年01月17日 23:45

なぎさ様こんばんは〜♪
え？当時私の周りは皆そんなんばっかでしたけど・・・。私の周りだけ？？？＾＾；
コリン・ファレルって、この『コロンビア・バイス』の為に太ったんですか？
てっきり、日頃の・・・ｗ

Posted by たお at 2007年01月18日 00:16

cocos様こんばんは！
マイケル・マンっぽさは充分なので、それなりには楽しめますよね。
でも、「これぞマイアミバイスでござい！」って出されると、「えぇぇぇぇ！？」とも。

Posted by たお at 2007年01月18日 00:19

starblog様こんばんは！
うーん・・・。
自分では普通だと思ってたんですがねぇ＾＾；
マイアミバイスの必要があまり感じられない本作。
犬神家は観ていないのですが、リメイクというよりは仕立て直しって感じなんでしょうか？

Posted by たお at 2007年01月18日 00:38

こんばんは！いつもありがとうございます！
あたしはTV版知らないケド、
これは、おもしろくなかった、、、

Posted by 猫姫少佐現品限り at 2007年01月18日 00:51

サラ様、こちらにもありがとうございます！
やたらといい子で薄味の俳優ばかりになってきたので、コリン・ファレルのようにギラギラギトギトした役者を見ると、俳優らしくていいなぁと思いますね♪
好き嫌いは別にしてｗ

Posted by たお at 2007年01月18日 00:59

kino様こんばんは〜♪
コン・リー、もの凄く無表情でヘチャムクレじゃなかったですか？
正直、「どうしたんだ、一体？」と思いましたし。
ラスト・オブ〜。
あれも恋愛描写がメチャメチャでしたねぇ・・・。あれで恋愛描写に懲りたはずだったのに＾＾；

Posted by たお at 2007年01月18日 01:01

猫姫さまこんばんは！
なんとも中途半端でしたからねぇ・・・。

Posted by たお at 2007年01月18日 01:02

こんにちは！ＴＢありがとうございました。ＴＶファンだった自分には、コリンがちょっと・・・別物だと考えてみればいいかァと思った記憶があります。

Posted by Ｊ美 at 2007年01月18日 12:01

ＴＢ有難うございました。
私もＴＶ版「ドン・ジョンソン」ファンの一人です。
記事を読んで、同じ意見！やっぱりいるんだと思いながら、かなり前のＴＶ放送なので、年がバレバレ（笑）。
せめてヤン・ハマーの懐かしいテーマ曲が流れれば、また違ったイメージで観る事が出来たのかもしれません。
ちなみに、ＴＶ版ビデオ持ってます。

Posted by パピのママ at 2007年01月18日 16:38

Ｊ美さまこんばんは！
自分的には、コリンはぎらぎらと頑張ってたなぁという印象が。そのほかがもの凄く薄いんですよねぇ。。。

Posted by たお at 2007年01月19日 01:35

パピのママ様こんばんは！
えーっと、再再放送を観ていたという設定なので、歳は曖昧にｗ
でも、いくらサントラがカッコよくても、ヤン・ハマー抜きじゃぁねぇ。
あ、そのビデオ見たいｗ

Posted by たお at 2007年01月19日 01:40

はじめまして。
ＴＢありがとうございます。
予告では面白そうに見えたのですが･･･
騙されました(;´Д`A ```
これならＤＶＤで十分ですね。

Posted by りょうこ at 2007年01月19日 15:33

毎度TBありがとうございます。
マイアミ・バイスなのにマイアミじゃねぇぇ〜〜〜！ととにかくそこはビックリでしたね。
TV版も同監督さんだったのでしたっけ？
なんだかだいぶ印象が違った気がしましたが、再放送組なので記憶が曖昧です。
ナッシュ・ブリッジスと間違ってたらごめんなさい。
またよろしくお願いします。

Posted by 微妙 at 2007年01月19日 20:12

りょうこ様こんばんは！
まぁ、予告はなんでも面白そうですから・・・＾＾；

Posted by たお at 2007年01月21日 00:24

微妙さまこんばんは！
マイケル・マンはあくまでクリエイターとして関わってただけですが、それにしてもマイアミバイスじゃなかったですよねぇ。。。

Posted by たお at 2007年01月21日 00:33

こんにちわ。
観終わってしまってからも
予告だけはかっこよく見えました。
中身は思い出せないくらいで女性関係も？？でしたけど、
予告だけは思い出せますｗ

Posted by PINOKIO at 2007年01月22日 16:12

PINOKIO様こちらでもこんばんは〜♪
スピードボートレースみたいなシーンが予告編にあったと思ったんですが、本編にはなかったですねぇ。そこが一番カッコよかったのに・・・。

Posted by たお at 2007年01月23日 23:48

TBありがとうございました♪

いや〜、僕にはちょっと合いませんでした…。
なんだか、ちょっと地味すぎた印象がありましたね。。。

Posted by TEPPY at 2007年01月24日 17:26

TEPPY様こんばんは！
“地味なら地味”“派手なら派手”と分かれりゃいいのに、どっちつかずでしたしねぇ＾＾；

Posted by たお at 2007年01月26日 01:55

いや〜、私もダメでしたｗ
コリン・ファレルの髪型は結構好きなんですが（笑
やっぱ、色男は、胸出し白シャツ、V
ネックのセーターは定番だよな〜、なんて思いましたぁ。
たおさんはそんなカッコなさるのでしょうか。

Posted by とらねこ at 2007年02月08日 00:34

とらねこ様こんにちは！
胸だし白シャツにＶネックですかぁ。
私のジャンルが知性派なもんで、冬場はタートルにルーズにシャツを羽織る格好ですねぇｗｗｗ

Posted by たお at 2007年02月08日 10:30

>まるで発情期の猛獣のようだ
>中盤にやたらとダラダラと続く恋愛シーンが、ただイチャイチャしているだけに見えることも
野獣コリンは彼の魅力の一つなので構わないのですが、作品的に恋愛シーンは「クール＆ハードボイルドの中に一瞬見せる女への愛」程度の隠し味で充分だと思っちゃいました（苦笑）
もう少々ポリティカル・アクションに傾いてくれたらなぁ〜

Posted by 哀生龍 at 2007年02月23日 23:40

哀生龍さまこんばんは〜♪
恋愛描写が誰の目にも明らかなほど苦手なマイケル・マンだというのに果敢に挑戦しちゃってましたが、案の定ダメでしたねぇ＾＾；
＞もう少々ポリティカル・アクションに傾いてくれたら
どっちにも傾ききれない中途半端さが残念で・・・。

Posted by たお at 2007年02月26日 02:53

実はコレ、映画の後にドラマ版をチェックしたのですが、
おっしゃるように全然別物でしたね。
ちょっとビックリでした。
まぁいいんだけど、だったら「マイアミ・バイス」の看板は
違う気もしましたよねぇ〜。

Posted by miyu at 2008年02月15日 15:27

miyu様、こんばんは♪
なんか、「わざわざ作らなくても・・・」って感じがする映画でしたねぇ＾＾；

Posted by たお at 2008年02月15日 20:49