2006年12月28日

日曜洋画劇場 40周年記念 淀川長治の名画解説

ビデオデッキなんてものが、まだまだ普及してなかった時代。映画を観る機会、知る機会を与えてくれたのは、もっぱらテレビ。もちろん観たい映画ばかりを選べるわけもなく、何が出てくるのか全く分からない次週の予告に期待に胸を膨らまし、時に失望もしたもので。それでもまぁ、興味のない映画の放映とはいえ他に観たい番組があるわけでもなく、気乗りしないままチャンネルを合わせていることもしばしば。そんな後ろ向きな私でさえ「あ、コレ観たいかも」とググイっと惹きつけてくれる名解説をしてくれていたのが、荻昌弘と淀川長治の両先生方。決して小難しい屁理屈を並べるわけでも、映画を崇高な芸術品として理解を強要するわけでもなく、“映画はとっても楽しいもの”であることを愛情たっぷりに語る両名に、映画の楽しさを教わった人も多いことでは。

で、今回発売されたこのDVD。いよいよもって日曜日の終焉が避けられないことを決定付けた番組であるのにもかかわらず楽しみでしょうがなかった『日曜洋画劇場』から、選りすぐった50本の名解説を収録。それも、ありきたりのつまらない名作ラインナップを揃えるのではなく、肉体美とサスペンスと笑いに満ち溢れた淀川長治らしい作品が並んでいるのが嬉しい。2時間ひたすら「怖いですねぇ、何とも知れん面白さですねぇ。はい、もう時間が来てしまいました。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」なのだが、全く飽きることがないどころか、それぞれの解説が短いのにもかかわらず、その作品を観たくなる力強さと愛情に溢れている。『旅情』の主人公を「モッサリしてる」の一言で切り、『2001年宇宙の旅』を「最初はなんのことだか分からなかった」と正直に語り、ブルース・リーとシュワルツェネッガーの肉体をひたすら褒め続ける独特の淀川リズムの解説の中にも、ジャッキー・チェンのアクションのルーツを突いたり、『サタデーナイト・フィーバー』の主人公の部屋に『セルピコ』と『燃えよドラゴン』のポスターを見出し、万国共通の男子中学生魂をそこから汲み取る鋭い視点も忘れていない。まぁ、『サタデーナイト・フィーバー』で一番着目したのが「トニーの足、足、足、足、腰!!」ってのが非常に淀川長治らしくて微笑ましいですが。この名解説の数々に、例えば様々なヴァージョンが出ている『ターミネーター』のDVDも、淀川長治の解説がついてこそ初めて“アルティメット・エディション”になるんじゃないのかなぁ、って気さえしてくる。

何度見ても胸が熱くなってしまう最後の解説も含め、“映画は面白い”“映画は楽しい”“だから皆に観てもらいたい”という強い想いがヒシヒシと伝わるこのDVD。是非ともシリーズ化して頂きたいもので。

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タグ:雑記
posted by たお at 01:48 | Comment(8) | TrackBack(1) | 映画雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
俺が子供の頃には地元では日曜洋画劇場をやてませんでした。朝日系列の局が出来たのも10年前でしたし・・・淀川さんは深夜枠でちょっとだけ見た程度でした。
で、もっぱらフジ系のゴールデン洋画劇場でしたが、前田武彦とか高島忠夫が懐かしかったりします。
このDVD見てみたいなぁ〜♪
Posted by kossy at 2006年12月28日 21:41
kossy様こんにちは!
高島節も独特でしたねぇ^^
懐かしいです。
日曜洋画劇場のほかにも、昼間にやっていた番組名は失念してしまいましたが映画紹介番組など楽しく観ていた淀川世代なもので、このDVDは嬉しい限りです♪
けたたましく喋る割には映画の魅力を全く伝えないシネマナビゲーターとは、段違いの楽しさがあるDVDでしたよ^^
Posted by たお at 2006年12月29日 14:10
たおさん、こんばんは〜♪

私もたおさんと同世代なので、共感してしまいました。

テレビの映画劇場は名画に触れる貴重な時間でした。

荻昌弘さん、淀川長治さん、小森和子さん、

皆さんの映画への愛、私たちへのメッセージ、

熱いものを感じました。

たおさんの批評にも感じています。
その作品への思い入れ、愛情。
毎回読ませて頂くのを楽しみにしています♪
ありがとうございます!

では、良いお年をお迎え下さいませ・・〆
Posted by ju2@ at 2006年12月31日 21:28
たお様、淀川さん懐かしいですね。よくモノマネして遊んでました。「はいー みなさん、こんばんは」
私も、日、月、水、金のロードショー番組大好きだったです。
淀川さんの解説は「美しい」とか「コワい」とか「カッコイイ」って感じでとても簡単でしたけど子どもだった私にはとても分かりやすい解説でした。それから淀川さんはあまり貶さないから好きでしたし。あっ、荻さんの解説も好きでした。あれもモノマネしてました。今ではモノマネしても分かるひとが少なくなりましたけど(年・年)
懐かしいので、思わずコメントしてしまいました。☆
Posted by Lance at 2007年01月01日 11:26
ju2@様、明けましておめでとーございます♪
ただ映画を垂れ流すのではなく、映画の楽しみ方、素晴らしさをさりげなく勉強させてくれていたのが解説者の方々でしたよねぇ。
思い入れと思い込みばかりを勢いに任せて書き散らしているブログではございますが、今年もよろしくお願いいたします☆
Posted by たお at 2007年01月01日 21:13
Lance様こんばんは〜♪
そのモノマネ、是非拝見したいですねぇwご近所にうかがう機会がありましたら、絶対見に行きます!
映画を垂れ流しする番組ばかりになっちゃいましたが、是非今の若い世代にも映画の面白さを伝えてくれる解説を味あわせたいですねぇ。
Posted by たお at 2007年01月01日 22:10
たおさん、はじめまして&あけましておめでとうございます。
そして早々のトラバ返しありがとうございました。
昔はノーカットが難しかったので、前後編に分けるなど、今回のDVDを観ていて思いだしたことも多いですね。

淀川先生のモノマネと言えば、小松政夫氏が『飛行機の中で突然誰かが肩に手を置くので振り返ったら、「ばあ」といってニコヤカな先生の顔があったときは肝をつぶした』という話が忘れられません。

月曜ロードショーの荻昌弘氏もすばらしい解説者で大好きでした。B級作品の時でも「B級ですが、たまにはこんな肩の凝らない作品もよろしいでしょう」と辛辣な解説もされていたこともあり、そんなクールさもたまりませんでしたね。
ああ『猿の惑星』初放送の時はご自身が実際のスタッフの手によってあのメイクをされてたことも思い出しました。
荻先生の解説もDVDになりませんかねえ。(´。`)

たおさんは私よりもたぶん10歳はお若いと思いますが、さらに若い世代に映画のすばらしさを伝えたいという気持ち、同感です。
これからもよろしくお願いします。
Posted by よろ川長TOM at 2007年01月01日 23:53
よろ川長TOM様、明けましておめでとーございます♪
2週にわけた作品と言うと真っ先に『大脱走』が思い浮かびます。見事にいやらしい所で終わってしまう前編に、一週間やきもきさせられたものです。
その好き嫌いが言葉だけでなく態度にも表れてしまう荻先生の解説も、「あ〜、今日のは嫌いなんだぁ」とクスクス笑いながら見てたものです。TBSに少しでも気が効いた気持ちがあるならば、是非出していただきたいものですね^^
知的レベル以外はあまり若々しくない私ではありますが、映画の楽しみ方は決して一つだけではないことを伝えられるなら伝えていきたいですね☆
本年度も、よろしくお願いいたします!
Posted by たお at 2007年01月02日 07:22
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Excerpt: なんというエネルギー、なんという愛情。89年の生涯を映画と共に生き、最後の最後まで映画の伝道師として活躍しあの世に旅立った氏の、32年間に渡る番組のほんの一部を採録。
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