1987年 イギリス映画 132分 アクション 採点★★★★
クリスマスですねぇ。そんな日にまでこんなサブタレに来て頂いた皆様にだけ、メリー・クリスマス。こんな所に来るよりも遥かに楽しいことをしているであろう方々には、サタンの気が効いた計らいでちょっとした気分を害する出来事が起きますように。さて、クリスマスといえば正月映画。正月映画といえば、もちろん007です。というわけで、今日も007でございますよ。
【ストーリー】
ソ連の高官コスコフの亡命を手助けするため、護衛の任に就いたジェームズ・ボンド。コスコフを狙う狙撃者から無事彼を守り亡命を成功させ、彼を厳重警備の下に置かれたMの邸宅に保護をする。コスコフの口からソ連が計画する西側のスパイ暗殺計画が漏らされた。その首謀者がボンドもよく知るプーシキン将軍であることに疑念を抱くボンドであったが、コスコフが何者かに強奪され、コスコフを狙った狙撃者もコスコフが囲っていた音楽家であることが判明すると、事態は混迷を極めていく。
4代目ジェームズ・ボンドであるティモシー・ダルトン初登板の作品で、シリーズ第15弾。ジョン・グレンが『007/ユア・アイズ・オンリー』から4本連続での監督となる。
さすがに目的が世界征服という悪役を登場させるには、たとえボンド映画であろうとリアリティに欠けはじめた頃であったため、今回の悪役は私欲に走ったソ連高官と武器商人と、いささか地味。常人とは明らかに違う身体的特徴があるわけでもなく、別にボンドじゃなくても倒せそうな感すらある。確かにこれまでのボンド映画のように強大な敵と陰謀にボンドが立ち向かうような作品であれば、この悪役は小者にも程があるのだが、本作は別にそこに面白さを盛り込んだわけではない。スパイ活動をする上で付きまとう、偽装・裏工作・裏切り・嘘など、対人間であるからこそ生まれるスリリングな展開がてんこ盛りなのだ。特に、ウィーンの遊園地で展開されるボンドの同僚が暗殺されるシークエンスは、感情を露にするボンドへの驚きも相まって、「これぞスパイ映画!」と唸らせる出来だ。
もちろんこのままで終わってしまえば“良く出来たスパイ活劇”で終わってしまうのだが、そこはボンド。飛行する貨物機から垂れ下がり激しく上下する貨物網に、命綱も付けずにひたすらしがみ付いて格闘をする凄まじい空中スタントや、ボタン一つで何でも出来るお馴染みのボンドカー、アストン・マーティンなどボンド映画に欠かせないギミックも満載。ややアクション面に偏りがちだったジョン・グレンの一連ボンド作品の中で、一番バランスの取れた作品となっている。とは言え、お楽しみの“素晴らしき世界旅行”的景観を望むには、主たる舞台がウィーンとアフガニスタンである本作には、やはり地味な印象も。ボンドがアフガニスタンにいること自体、あまり似合いませんし。また、この頃公開された『ランボー3/怒りのアフガン』からも分かるとおり、この時期のソ連を悪役に描く上でアフガニスタンは重要な位置を占めることは理解できるのだが、“ソ連の敵は西側の味方”といった単純構造で描かれていること自体に違和感も。まぁ、アフガニスタンを舞台に描かれるクライマックスのアクションが素晴らしいので、その辺の違和感もウヤムヤにされてはいるのですが。
ボンド映画の音楽と言えば、やはりジョン・バリーは外せない。本作でもボンド映画のツボを押さえた見事な楽曲の数々を披露しており、中でもボンドとカーラの遊園地デート等で流れる旋律の美しさは絶品。その旋律を基に作り上げられたプリテンダーズの歌うエンディング曲も、クリッシー・ハインドのフラット気味なボーカルの味と相まって、一度聴いたら耳から離れない素晴らしい曲となっている。また、本作の主題歌をノルウェーの三人組a−haが担当。世間的には“テイク・オン・ミー”のイメージが強い彼らであるため、「何で、あんな可愛い歌ばかり歌ってる連中が?」との疑問も多かったが、セカンドアルバムである“Scoundrel Days”でも分かるとおり、彼らの作るメロディラインは意外と大人っぽい。その大人っぽさにジョン・バリーが加わることで、より甘美な楽曲に仕上がっている。なぜかカラオケでよく見かけるこの曲。そりゃぁ歌い切れれば気持ちいいことこの上ない曲ではあるが、低音とファルセットが交互に行き交うこの曲を素人が歌い切るのは当然困難。聴かされる方も堪ったもんじゃない。それでも、ついつい歌ってしまうんですよねぇ、私。
『007/私を愛したスパイ』の頃から表面化してきたロジャー・ムーアと製作サイドとの衝突と降板騒動も、ロジャー・ムーアの根強い人気もあって続投が続けられていたが、さすがに老いが目立ってきたのか今回は比較的すんなりと降板が決定。次期ボンド候補として、サム・ニールやショーン・ビーン(後に数字を一個減らされて“006”として『007/ゴールデンアイ』に登場。減らされちゃうあたりが、ショーン・ビーンらしくて堪らない)の名前が挙がるが、『女王陛下の007』で候補に挙がるものの「まだボンドを演じるには若すぎる」として自ら辞退した『ロケッティア』のティモシー・ダルトンに白羽の矢が当たる。しかし当時ブルック・シールズ主演のトンデモ映画『ブレンダ・スター』に出演中であった為、かねてからの次期ボンド大本命ピアース・ブロスナンにオファー、決定という流れになる。ところが、出演中だったTV番組との契約が切れず、泣く泣くピアース・ブロスナンは降板、『ブレンダ・スター』の撮影終了を待って再度ティモシー・ダルトンが新ボンドとして決定する。ティモシー・ボンドが短命で終わり、拍手喝采でピアース・ボンドが迎え入れられる流れは、なんとも本命と押さえをヤリクリする男女関係のようで生々しい気もしますが。そんな紆余曲折がありながらも、原作を熟読して役作りに励んだティモシー・ダルトンのボンドは、その無駄のない身のこなしの割に喜怒哀楽がはっきりとした人間味溢れるボンドとして、見事なまでの存在感を発揮する。感情表現にやや舞台演劇めいた大袈裟さもあるものの、それがまた笑顔と優しさの裏に隠れた胡散臭さを醸し出していて、本作のボンドにピッタリ。
エラの張った顔立ちに華奢な身体つきで“つきまとい型ボンドガール”を演じるマリアム・ダボは、好きな人には堪えられないタイプなのであろうが、個人的には苦手なタイプ。本作では悪役だが、後の『007/ゴールデンアイ』から馴れ馴れしい呼び方でボンドに味方するCIAエージェントとして再登板するジョー・ドン・ベイカーや、ドワーフのギムリも登場。MやQといった常連組や、『007/カジノ・ロワイヤル』ではジェフリー・ライトが演じていたCIAエージェントのフェリックス・レイター、『007/私を愛したスパイ』以降ボンドの宿敵として登場しながらも、本作ではただの好々爺になっていて驚いたゴーゴル将軍など準レギュラーも勢揃いするのは嬉しいのだが、ロジャー・ムーアとの大人なやり取りが楽しみだっただけに、マネーペニーの若返りには寂しさと不満が。まぁ、当時既に還暦だったロイス・マクスウェルとティモシー・ダルトンじゃぁ、親子にしか見えないので仕方がないんでしょうが。
ボンド史上最もカッコ悪い偽名“ジャージー・ボンドフ”
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これ、難しいですよね…。
私は本作のボンドが一番かっこいいと思っているのです。次はドクター・ノオのボンドですが。
まぁ、歌っている当人だけが気持ちいいんですけどねwww
ボンド像としては、一番理想的だったのかも知れませんねぇ、ティモシー。
ティモシー・ダルトンのボンドはかなり好みでした。もうちょっとやって欲しかったです。
久々に観てまたうっとりしちゃいました(笑)
本当にスパイ映画らしいスパイ映画でしたねっ!!
実際ティモシー・ボンドって隠れファンが多いんですよね。最初の登場こそ違和感があるものの、あとはハマってましたからねぇ。