1999年 アメリカ映画 99分 コメディ 採点★★★★
音楽好きとしてそれなりに長年生きているので結構な数のライヴを観てきたんですが、それらをいざ思い出そうとしても、セットリストはおろかステージの様子までも全く思い出せない私。まるで開演と同時に気を失ってしまったかの如く。まぁ、私の記憶能力があんまりにも残念だってことに原因があるんでしょうけど、そのくせそこに至るまでの状況とか、何処で何を食べたとか、一緒に行った相手とどんな会話をしてどんな表情だったかなど、それに付随することは些細な事まで覚えてたりするんですよねぇ。やっぱアレですね。開演と同時に気を失い、閉演と同時に意識を取り戻したんですね。
【ストーリー】
キッスの熱烈なファンである高校生男子4人組、ホーク、レックス、ジャム、トリップ。デトロイトで行われるキッスのコンサートを心待ちにしていた彼らだったが、敬虔なクリスチャンであるジャムの母親によりチケットを燃やされてしまう。ラジオのクイズで奇跡的に当選したチケットも無効となってしまった彼らは、何としてもチケットを手に入れようと開演までの僅かな時間を悪戦苦闘するのだが…。
キッス旋風に沸いていた1978年を舞台に、何が何でもキッスのライヴが観たい男子の姿を描いた青春コメディ。『ザ・チェイス』のアダム・リフキンがメガホンを握り、キッスのベーシストである『WANTED/ウォンテッド』のジーン・シモンズが製作陣に加わっている。
誰かと何かに“夢中”になっていた、その熱がそのまんま転写されたかのような本作。向こう見ずで浅はかだが何かに必死になる姿は、自分たちの記憶にある“ある一日”を思い出させてくれる。登場人物それぞれが背景を持ち、それぞれが一夜の騒動を通して成長していく。そんな彼らもまた自分たちの中にある“誰か”を彷彿させ、彼らと共に狂乱のイベントに放り込まれたかのような一体感も味わえる。ただ一人ホークのみが背景の描かれていないキャラクターなのだが、きっとそれは自分をそこに当てはめる為の配慮なのではと。今だ誰かと共に夢中になれる物を持つ者にとってはコースターライドであり、ノスタルジーを感じてしまう私のような者にとってはタイムマシンにもなる愛すべき作品。キッスを中心に、シン・リジー、AC/DC、ラモーンズ、ブラック・サバスときてデヴィッド・ボウイも入ってる、劇中引っ切り無しに流れる楽曲の数々も、彼らが持参したテープを聞きながらドライブしてるかのような一体感を味わえる、なかなか好みの選曲で。
ホークに扮したのは、『アニマル・ファクトリー』のエドワード・ファーロング。やんちゃでニヒルで早く大人になりたいけど、まだまだ内も外もついて行ってない成長過渡期の主人公を好演。だいぶプックリして来た頃ではあるが、幼さの中に大人の色気も兼ね備える彼らしい魅力が丁度良く出ていたのではと。「あ!ジョン・コナーだ!」の声に負けず様々な作品に挑戦し、軌道に乗り始めたかのように見えた時期だっただけに、その後の不調が残念でも。最近はどんどんロバート・パトリックに近づいてる感もあるので、その個性を活かして再ブレイクして欲しいなぁと願うばかりで。
また、若い頃のニック・スウォードソンみたいだった『ファンボーイズ』のサム・ハンティントンや、『キャビン・フィーバー』のジェームズ・デベロ、『2001人の狂宴』のジュゼッペ・アンドリュースらの、「一緒につるみたい!」と思わせる男子っぷりも魅力。その他、『ブレイド3』のナターシャ・リオン、『インシディアス』のリン・シェイ、伝説的なポルノスターであるロン・ジャーミーもキャスティング。
そして、いよいよクライマックスに登場する御本尊キッス。タイトルにもなっている“デトロイト・ロック・シティ”の盛り上がること盛り上がること。別にキッスファンじゃなくても楽しめる本作ではあるが、「ダダダダダダダッダッダーン!」で火柱がババーンと上がる、ロックの初期衝動に非常に素直なキッスの音楽じゃなければ成立しない作品でも。これがピンク・フロイドやアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンじゃ、なかなかこうはならなかったでしょうし。
十数年後思い出すのはここに至るまでの道のり
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