1997年 フランス/アメリカ映画 134分 サスペンス 採点★★★★
睡眠中に見た夢を誰かに話す時や思い出す時って、その記憶を論理的に組み立て直しているから一本のストーリーとして成立しているけど、目覚めた直後の夢の記憶って、時系列も人称も辻褄も全てバラバラな断片の詰合せみたいな感じですよねぇ。もし“夢録画機”なんてものが発明されても、再生してそこに映し出されるのはとってもアバンギャルドな映像集だったりするんでしょうねぇ。

【ストーリー】
インターフォンからの謎の声「ディック・ロラントは死んだ」/自宅を映しだしたビデオテープ/妻への疑い/白塗りの男/ビデオテープに映し出される妻を惨殺する自分/フレッドはピートに/レネエはアリスに…

錯乱と混乱の世界に観る者全てを叩き落とす、『ツイン・ピークス』のデヴィッド・リンチ渾身のミステリー。
論理的に物語を整理するならば“妻を殺した男の物語”。もうちょっと付け加えるのであれば、“起きた通りに物事を記憶したくない男の破壊され混乱した記憶の再生”。ただ、そんな取って付けたような解説なんかでは丸裸にされない、濃密で力強く、グロテスクでありながら淫靡でユーモラスなリンチ・ワールドに快感すら感じる翻弄を味わえる本作。「つまり、これってこういうことだよな」と立ち止まって考える余裕すら与えず、次なる展開へと押し出す力強さ。そして、知らず知らずのうちに次なる世界を求めてしまう麻薬のような魅力。『インランド・エンパイア』は個人的にちょい持て余してしまったが、本作のリンチ濃度はその不純具合も含めて丁度良い。リンチ濃度は純度が高過ぎると劇薬ですし。
まるで他人の悪夢に迷い込んでしまったかのような本作。リンチによる絵画が動き出したかの如く。それらを形成するプロダクションデザインとサウンドデザインも完璧で、旧版DVDでは黒が潰れてしまって台無しだったその辺も今回のブルーレイでは大幅に改善され、心ゆくまでリンチ・デザインを堪能できるのも嬉しい。そして何よりも、デヴィッド・ボウイで始まりナイン・インチ・ネルズ、ルー・リード、マリリン・マンソン、ラムシュタインと来てボウイで締める楽曲の使い方が嬉しいのも言わずもがな。「だってボウイが流れるんだもん♪」ってのも言わずもがな。

常連俳優から意外な大物まで錚々たる顔ぶれが、各々の個性を前面に押し出すことなくリンチ作品のモチーフとして溶け込んでいるのも魅力の本作。まぁ、ある意味リンチ作品の主役はリンチ自身だったりもしますし。
二人一役の片っぽである『THE JUON/呪怨』のビル・プルマンと、もう片っぽの『The FEAST/ザ・フィースト』のバルサザール・ゲティ、オッパイよりもお尻のインパクトが強烈だった『リトル★ニッキー』のパトリシア・アークエットを軸に、この作品の後別件で話題の中心となる『冷血』のロバート・ブレイクに、安全運転ギャグが痛快だった『オーバー・ザ・トップ』のロバート・ロジア、『プレデター2』のゲイリー・ビューシイと濃口の面々が絡む贅沢なキャスティング。
その他にもお馴染ジャック・ナンスや、『パーフェクト・ストレンジャー』のジョヴァンニ・リビシ、『クライモリ デッド・エンド』のヘンリー・ロリンズにマリリン・マンソン、劇映画は本作が遺作となったリチャード・プライアーなど、ちょいと顔を出す面々までもが贅沢。
そんな中、一人ちょっと気になるお方が。“Dru Berrymore(ドゥリュー・ベリーモア?)”ってポルノ女優の方なんですけど、やっぱアレですかね?新田利恵みたいなもんなんですかね?

題材に添ったキャスティング
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