2011年 アメリカ映画 87分 コメディ 採点★★★★
外国の物語なんで当たり前なんですが、映画を観ていると「ヘェ!日本とは違うんだね!」と驚かされることが多いですよねぇ。“ベビーシッター”もまさにそうで、若者のアルバイトの定番として定着している事にも、子供を置いて親が出掛けるってことにも驚かされるもので。“子供がいても自分たちの時間を大切にする”って考え方の違いもあるんでしょうが、基本知らない人が集まっている郊外族特有の「知らない人怖い!」ってのから一歩進んで、「知り合いになれば怖くない!」って考え方が根底にあるんでしょうかねぇ。
【ストーリー】
大学中退後、まともな職にも就かずぶらぶらしていたノア。そんなある日、母親の知人宅で子供達の世話をするベビーシッターを頼まれ渋々引き受けることに。しかしその子供達はそれぞれ大きな問題を抱える問題児で、次々とトラブルが降りかかってきた挙句にドラッグディーラーに追われる羽目となり…。
『スモーキング・ハイ』のデヴィッド・ゴードン・グリーンによるコメディ。主演のジョナ・ヒルが製作総指揮も務めている。
“子供相手にてんてこ舞い”っていう、コメディの中でもよくあるタイプの一本。“笑えるか/笑えないか”のみがコメディ映画の指針ならば充分過ぎるほど及第点の本作。「あ〜笑った笑った!」で済ませるのも良いが、それだけではない面白さにも溢れている一本でも。
問題児のベビーシッターをしていたら、あれよあれよとドラッグディーラーに追われる羽目となる本作。そのイベントの中心となるディーラー絡みに関しては、“父親との決別”や強烈なしっぺ返しという意味合いを持たせているとは言え、問題解決の方法を概ね犯罪行為に頼ってしまっているし、掛けた迷惑は投げっ放しってのには大いに首を傾げてしまうのだが、本筋である“子供達/自分の成長及び悩み解決”に対しては真摯かつ素直な素晴らしい姿勢で向き合っている。特に、一家中一番の問題児である養子の子が抱える悩みに対して、所詮他人である主人公が偉そうなことを言って解決を図るのではなく、家族同士が自然と向き合う道筋を提示するだけに留め、家族間で解決させる姿勢も見事。
また、ベビーシッターをせざる得ない動機付けが“母親のため”ってのも好印象な本作。なんだかんだと母親に苦労を掛けてしまっていることを自覚し、言葉には出さないが母親の事を一番気にかけている“基本的には良い子”ってのをこの動機付けで明確にしているので、経験を通して人格が激変するのではなく、元々持っていた素質が良い方向に磨かれていくというスムーズな物語展開を成し得ているのも上手いなぁと。出だしから下ネタで幕を開けるだけに「キーッ!下品ざます!」と敬遠されてしまう可能性もあるが、そこまで過敏じゃない方であれば楽しめる一本なのでは。
主人公のノアに扮したのは、『マネーボール』『伝説のロックスター再生計画!』のジョナ・ヒル。彼女が自分を愛していない事も、そもそも“彼女”なんかじゃないことも、今のままの状況では誰のためにも良くない事も十分解っているが、いま一歩踏み出す勇気のないノア。ただのダメ人間なんかではなく、社交性もあり他者にも好かれる人格ながらも、抱え込んでいる悩みを自分で上手く対処出来ない故にニートとして過ごすノアを、コメディアンとしてのみならず実力を備えた演技者としても活躍するジョナ・ヒルが見事に好演。一枚看板の作品を初めて観たが、ピンでも全然イケる存在感が圧巻。本作以降随分と痩せてしまったようですが、太ってたら太ってたで心配だけど、痩せたら痩せたで面白味も減っちゃうんじゃないかとついつい心配しちゃうのは、まぁファンの我儘ってことで。
一方、そのノアらを追うドラッグディーラー役には、『カウボーイ&エイリアン』『月に囚われた男』のサム・ロックウェルが。半裸のマッチョをはべらかし、「友達だと思ってたのにー!」半ベソで主人公らを追い回すこんな役柄がハマるのは、クリストファー・ウォーケンとジョン・マルコヴィッチとサム・ロックウェルくらいなんじゃないのかと。
その他、ちょいとふっくらしたエドワード・ファーロングみたいな色気にはちゃんと理由があった『かいじゅうたちのいるところ』のマックス・レコーズや、メル・ギブソンの『キック・オーバー』も控えている爆弾小僧のケヴィン・ヘルナンデスら子役らも魅力的な一本で。
要約すれば“ママ大好き!”って一本
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