1986年 アメリカ映画 109分 ドラマ 採点★★★★
「今月はエミリオ強化月間!」と言ってみたものの、話題作のみに占拠されたビデオ屋では、隈なく探してもなかなか見つかることのないエミリオ作品。まぁ、ブックオフとか行けば、必ずと言っていいほど『フリージャック』は見つかるんですけどねぇ。
【ストーリー】
何不自由ない家庭に育ちながら、高校時代に自動車泥棒を働いてしまったジョン・ウィズダム。その前科のせいで満足に仕事にも就けない現状と社会に苛立ちと怒りを募らせるジョンは、恋人のカレンと共に銀行強盗を行う。金は奪わず、貧しいものを苦しめている貸付証書を燃やす彼らの行動に民衆は沸き立つが、一つの殺人事件が全てを一転させてしまう。
そんな名前と顔は知られているものの、作品に恵まれているとは言い難い現状に対する苛立ちか、次々とスターダムへ駆け上がっていくブラットパック勢を見つめているだけの焦りからか、当時まだ23歳だったエミリオ自ら脚本・監督を手掛けた意欲作。これは商業映画では最年少の記録だとか。
“エミリオ版『俺たちに明日はない』”の一言でまとめられ、然程高い評価も得られなかった本作。確かに展開はありきたりで、主人公らの行動はあまりに短絡的である。しかしその“短絡さ”は決して脚本の稚拙さからくるものではなく、視野の狭い若者ならではの行動を描いた結果である。戦争で人を殺せば英雄となるが、車を盗めば犯罪者として一生蔑まれてしまうことに対する矛盾と疑問、夢の叶う事がなく貧乏人がさらに仕打ちを食らう社会への怒りを感じつつも、どうすればいいかも、その問題の先にあるものも見えない若者の姿が非常によく描かれている。恋人を残し、ひとり警察隊の下へ向かう主人公の行動も、大人ならば取り残された方が酷い目に遭うことが分かっているのだが、自分ひとりの命で全てが解決できると、先の見えない過信をしがちな若者らしさに溢れている。「行動が短絡な理由はわかった。じゃぁ、物語がありきたりなのはなんでだい?」と言われましても…。まぁ、エミリオがそんな物語の主人公を張るのが夢だったのではと。
もう息子が家に戻ることはないことを悟った両親の描写や、派手なカーアクション、警察隊と対峙するクライマックスのスタジアムのシーンなど、23歳の初監督作とは思えないほど目を見張るシーンも多く、エミリオの力量に驚いてもみたが、案外その辺のシーンは、製作総指揮としても名を連ねている『ヒンデンブルグ』などのロバート・ワイズが手掛けていたのかも。
役者としてのエミリオは、相変らずヤンチャな子供にしか見えないのだが、相手役が当時まだ付き合っていたデミ・ムーアだけあって、二人の絡みはいつも以上にリラックスした雰囲気を醸し出している。ただまぁ、隙さえあればイチャイチャするシーンが挟まれてしまいますが。そんなまだまだ若くぷりっぷりしたデミ・ムーアの可愛らしさも見ものなのだが、本作で最も目を奪われるのが、エミリオの両親役を演じるトム・スケリットとヴェロニカ・カートライト。子供の世界が中心となるので出番はあまり多くはないが、一旦登場すれば画面を一気に引き締めるだけの存在感を放っている。ノストロモ号での仕事がない間は、地上で夫婦生活を送っていたんだなぁとの驚きもありましたし。
今ではティム・バートン作品でお馴染みのダニー・エルフマンが音楽を担当。この後爆発的に評価を高める彼を起用するとは、随分と目が利くなぁと。まぁ、案外単純にエミリオがオインゴ・ボインゴのファンだったって可能性の方が高いですが。
もちろんエミリオ作品には、もれなくチャーリーがついてきます
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