トロール・ハンター (Trolljegeren)

監督　アンドレ・ウーヴレダル　主演　オットー・イェスパーセン
2010年　ノルウェー映画　103分　アドベンチャー　採点★★★

世間的には充分過ぎるほど大人の年齢に達してるんですが、いまだに高い山々を見ればその合間から大入道が顔を出す様を想像したり、夜の川べりを歩いてると濡れ女が出てくる気がして足早になったりする私。“自然の力強さと大きさに命を感じる”ってわけじゃもちろんなく、単に水木しげるの妖怪図鑑がいまだに愛読書となってる幼稚さからなんでしょうけど。



【ストーリー】
熊の密猟問題を題材にドキュメンタリー映画を撮っていた3人の大学生は、謎の男ハンスと出会う。「奴が密猟者に違いない！」とハンスの追跡をする彼らは、偶然にも伝説の巨人トロールの姿を目撃する。ハンスが政府の命によりトロール退治する“トロール・ハンター”であることを知った彼らは、ハンスと共に命がけの撮影に繰り出すのであったが…。



風光明媚の塊ノルウェーの特産品“トロール”を題材としたモキュメンタリー。なにやらハリウッドリメイクも企画されてるとか。
“差出人不明のフィルムに収められていた驚愕の真実”。このハッタリに乗れるか否かが本作を楽しめるかどうかのカギなのだが、“行き詰ったら『食人族』”がモットーの私は身も心も乗ったので存分に楽しめた一本。もう、この手のハッタリ大好き。
現実って体の世界に、突如入り込んでくる非現実のトロール。これで出てくるトロールのデザインが現実的なものであればリアルなモンスター映画で終わってしまうのだが、ぬるんと顔を出すのが民話の挿絵から抜け出てきたような奴。この違和感の絶妙さたるや。一本わき道に逸れただけで神話の世界に迷い込んでしまったかのような味わいが素晴らしい。“三匹のヤギがいる橋の下にトロール”などといった聞き覚えのあるシチュエーションが使われていたり、「成長すると頭が増えるけど、敵を威嚇したり雌にモテたりする為の飾り」「食うことと繁殖する事しか考えてない下等動物」などロマンとロマンの台無しを絶妙にブレンドさせたりし、この現実と神話の狭間って感じを強調しているのも見事。
政府が国民の目を欺いて秘密裏にトロールを退治しているが、そのハンターに夜勤手当など充分に払ってないのでハンターは不満たらたらなど世知辛いブラックユーモアも豊富な本作は、映像に驚きながら楽しむってのよりは、その設定によって作り上げられた世界観を楽しむタイプの一本なのかと。
それにしても、サンタがナマハゲと変わらなかった『レア・エクスポーツ　〜囚われのサンタクロース〜』や、先が読めないにも程があった『ドリル・マーダーズ　美少女猟奇殺人事件』など、最近の北欧映画のエネルギーってのは侮れないものがありますねぇ。


日本で作るなら“ダイダラボッチ猟師”？

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Comments

たおさん、こんにちは。

ノルウェー産ホラーというと『処刑山　デッド・スノウ』しか心当たりのない自分ですが、たおさんのレビューを読むと、ノルウェーホラーはひっそりと熱いのだろうかと思えてきました。Jホラーとはまた違った形で、独自の進化を遂げてそうですし。

上映像のトロールの造形がスバラシイのと、「ロマンとロマンの台無しを絶妙にブレンド」がとっても気になるので、これもぜひ見てみたいと思います。

Posted by 片刃 at 2012年08月14日 13:21

こんにちは♪

映画ラストのあの文章がまたニヤニヤを増大させてくれますね。
「ロマンとロマンの台無しを絶妙にブレンド」とは言いえて妙。ブラックジョークを大真面目に作っちゃうところなんかは大変好みです。実際の首相のお言葉なんかもありましたし。

Posted by maki at 2012年08月14日 17:44

片刃さま、こんにちは！
あ、そう言えば『処刑山　デッド・スノウ』をまだ観てなかった！今度観なきゃ！
それはさて置き、トロールの造形が素晴らしいのもそうなんですけど、特産品でも扱いがぞんざいだったりするその世界観が結構好みの一本でしたねぇ。

Posted by たお at 2012年08月15日 13:23

maki様、こんにちは！
下手に我に返ったりせず、ハッタリを貫き通す姿勢が好きでしたねぇ。そのハッタリを楽しむ作品なんだから、そこに文句を付けるのは如何なものかとも。

Posted by たお at 2012年08月15日 13:25

>なにやらハリウッドリメイクも企画されてるとか
本当ですか？
この独特の味わいが失われてしまいそうで、正直嫌な予感がしてしまいます。

>世知辛いブラックユーモアも豊富な本作
クソ真面目に“リアルな社会におけるトロールハンターの実情”のドキュメンタリーの体を押し通している所も、トロールそのものとあわせて楽しかったです。

Posted by 哀生龍 at 2012年09月20日 20:36

哀生龍さま、こんばんは〜♪
普通にリメイクしちゃうと、ビデオストレートで終わっちゃう作品になりそうですよねぇ。ある程度の悪趣味を理解している人に作ってもらいたいもので。

Posted by たお at 2012年09月27日 21:13