2006年 アメリカ映画 107分 コメディ 採点★★★★
いやぁ、みんな有名になりたいんですねぇ…。
【ストーリー】
激戦を制し大統領選に再選した大統領は、読んだこともない新聞に目を通しビックリ。イラク戦争もなにもかも、自分がやってきたことは間違いだったと気付いた大統領は引きこもりになり、支持率も低迷。見かねた補佐官は、大人気TV番組“アメリカン・ドリームズ”の決勝戦の審査員として、大統領を出演させることに。優勝すればトップアイドルとなれるその番組の決勝戦に勝ち上がってきたのは、更なる視聴者の支持を得る為にはなりふり構わないサリーと、歌も踊りも全然ダメだがそこが人気のイラク移民のオマール。ところが、この素朴で純情なオマールには、ある重大な使命があった…。
どっからどう見てもブッシュな大統領と、そのブッシュっぽいのをリモコンで操作するどっからどう見てもチェイニーっぽい補佐官。人気者になる為には好きでもない男のプロポーズをも番組のネタにしようとするブリトニーっぽい女と、皆に笑い者になりながらも人気者になっていくイラク人。しかも、テロリストときた。
“アメリカン・アイドル”で最初に有名になった歌も踊りもダメな中国人についても、ブッシュもチェイニーも全く知らなく、そのブッシュの討論会での無線疑惑も、アメリカに蔓延する“有名になりたい病”についても全く知らなければクスリとも出来ない作品かも知れないが、ほんの少しでも知っていれば大爆笑間違いなしのブラックコメディ。大統領を笑いのタネにすること自体は別段珍しいことでもないのだが、その大統領を含め、9.11以降のアメリカの御時世と、結婚や死といった極々パーソナルなものまでショーにしてしまうアメリカを、ここまで痛烈に皮肉る作品も珍しい。しかも、トップスター揃いで。
その皮肉は、キャラクターの隅々にも行き渡っている。誰一人として愛することの出来るキャラクターが存在しない。どいつもこいつもエゴの固まりか、カラッポ。そんな誰にも愛されない人たちが、愛されることを目的にした番組に出場し、国民に愛され選ばれたのが実はテロリストというのも、強烈だ。しかも、そのテロリストが劇中一番まともな人間だったりするし。
見れば見るほどブッシュに見えてくる大統領に扮するのは、同じくポール・ワイツ監督の良作『イン・グッド・カンパニー』に引き続き出演のデニス・クエイド。同じポール・ワイツ組からは、『アメリカン・パイ』など量産型キアヌとして重宝されていたクリス・クラインも。今回は顔のどこかが違うのか、見事なまでのマヌケ面を披露している。“見事”と言えば、ウィレム・デフォー。『インサイド・マン』での物足りなさを補っても余りあるどころか、もうこれ以上は頂けないほどの強烈な印象を与えてくれている。こんなデフォーが大好き。若干肉付きも良くなったせいか、以前にも増してオバサン化が進んでいるヒュー・グラントは、最近なにかといい人役ばかりであったが、本作では久々の本領発揮とも言える嫌味な二枚目男を熱演。
見所だらけでダレ場なしの一本なのだが、なぜだか日本では土壇場で劇場公開見送りに。ポール・ワイツは面白い映画ばかり撮っているのに、日本との相性はすこぶる悪いようで。配給会社が「こんなもの、日本の庶民に理解できるわけがない」と踏んだのかどうかは不明だが、きっとデフォーの姿に恐れおののいたんでしょうねぇ。
ジョージとディックの秘め事
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選挙に勝つことやオーディション番組で優勝することは、票を入れた人達の愛を勝ち取ったと言う事なんですね!
全く気付いていませんでした(汗)
>量産型キアヌ
分かりやすい喩えだなぁ〜(爆)
前髪が長めだと、全く印象が違いますね。
「愛されたい!愛されたい!」って熱望し手段を選ばないくせに、自分の中には肝心の“愛”がない登場人物ばかりでしたねぇ。
廉価版キアヌって呼ぼうかとも思ったんですが、以前“廉価版トビー・マグワイア”ってのを使っちゃったんで、今回は量産型でw
まぁ、日本人が知らないのは何も“アメリカン・アイドル”に限ったことではないんですが、知らないから受けないと判断されるのも、随分と観客をナメているのではとも^^;