2010年 アメリカ映画 109分 コメディ 採点★★★★
TVに出ている芸能人の皆さんって、最近“良い子ちゃん”ばかりですよねぇ。スポンサーや広告代理店が力を持ち過ぎてるってのとか、作り手がサラリーマン気質のまんまだとか色々要因もあるんでしょうけど、受け手である私たちが、芸能人に一般人感覚とか共感ってのを強く求め過ぎてるってのも大きいんでしょうねぇ。私ら一般人とはまるっきり違う様に羨望し、時に素っ頓狂な言動を笑い飛ばしたり呆れたりするってのが、芸能人に対する楽しみ方だと思うんですけど。騙す側も騙される側も、もうちょい成長しないとならないですねぇ。
【ストーリー】
伝説的なロックスター、アルダス・スノー復活ライブの企画が認められ、イギリスにいるアルダスを72時間以内にロサンゼルスに呼び寄せる大役をものにした、レコード会社に勤めるアーロン。イギリスに到着するも、肝心のアルダスは最新シングルは酷評を受けた上に恋人にまで去られ、酒とドラッグに溺れる自暴自棄な生活を送っていた。そんなアルダスに振り回されながら、なんとかアメリカに向かったアーロンだったが、アルダスの破天荒さは輪を増すばかりで…。
『寝取られ男のラブ♂バカンス』に登場し、忘れ去ることの出来ない程の強烈な印象を残したアルダス・スノーを中心に据えたスピンオフコメディ。前作同様ニコラス・ストーラーがメガホンを握り、製作を『素敵な人生の終り方』のジャド・アパトーが務めた一本。
スピンオフと言いつつもオリジナルとの繋がりはアルダス以外はほとんどない、ほぼ独立した一本に仕上がってた本作。内容的には“非日常な出来事に翻弄されている内に、日常で忘れかけていた大切なものを思い出す”っていつものアレなのだが、その非日常の突き抜け具合が飛び抜けているので、定番に埋もれる事のない強烈な個性と笑いを生みだしている。
また、意味がありそうで全く無い言動を繰り返すアルダスのキャラが、“ロックスター”として完成されているのも大きい。大人になって冷静に見てみた時のロックスターの姿というか、端的なパブリックイメージというか。P!nkやメタリカのラーズ・ウルリッヒらのカメを出演も功を奏しているが、やはりそんな彼らと肩を並べても何ら違和感のないほどに完成されたアルダスの存在があったからこそ、工業製品めいた商品ばかりを出し死に体となってしまった音楽産業も皮肉る、“ロック映画”としても楽しめる一本になったんだろうなぁと。意味深なようで良く考えれば全く意味の無い素晴らしい歌詞で歌われるアルダスの楽曲も、ついついサントラが欲しくなってしまうほどの出来でしたし。
「デニス・クエイドに似てる!」と言われて、本人を含め誰もが「ランディの方じゃないのか?」と思ってしまうアーロンに扮したのは、『マネーボール』『僕の大切な人と、そのクソガキ』のジョナ・ヒル。同じ役者なもんだからてっきりハワイのウェイターがレコード会社に勤めたもんだと思ってたら、まるで別のキャラクターだったんで驚いたりも。ここ数作は笑いを控えめに役者として活躍していた彼ですけど、本作ではコメディアンとしての本領を存分に発揮。攻撃的な芸風ではなく、とことん追い詰められてからキレるキレ芸の見事さに、コメディアンとしての器用さと芸幅の広さを再確認。
一方のアルダス・スノーに扮したのが、前作同様『ロック・オブ・エイジズ』のラッセル・ブランド。もう絶品。前回は“良い意味での気持ち悪さ”と表現させてもらったのだが、今回もそうとしか言えないグニュグニュとした気持ち悪さ。それでいてセクシーに見えてくるロックマジックも。多くの若者を「ロックやってればこんなオレでもモテんじゃね?」と勘違いさせた、あのロックマジック。そのロックスターとしてのあまりに見事な完成度に、「このシリーズをずーっと続けて欲しい!」とか「ってか、芸名をアルダスにすればいいじゃね?」とか思えてきてしまうほど。
その他、『噂のモーガン夫妻』のエリザベス・モスや、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』のローズ・バーン、『完全なる報復』のコルム・ミーニイ、“パフ・ダディ”ことショーン・コムズ、『ピザボーイ 史上最凶のご注文』のアジズ・アンサリらもキャスティング。また、前作との接点として『ファンボーイズ』のクリステン・ベルも出演し、その共演者って設定で懐かしのリッキー・シュローダーが出てきて驚かされたりも。
あぁはなりたくないはずなのに「なりたい!」と思わせてしまうロックマジック
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