2006年11月27日

ドラゴン・プロジェクト (精武家庭)

監督 スティーヴン・フォン 主演 アンソニー・ウォン
2005年 香港映画 102分 アクション 採点★★★★

団塊の世代が一斉に定年を迎えてしまう“2007年問題”。介護構造の逆ピラミッド化や、労働人口の減少、お父さんが買う新聞や帰りの一杯がなくなることでの経済効果などが問題視されているけど、知識や技術のノウハウが上手く移行されていないのも大問題なんでしょうねぇ。とは言っても、お父さん方からすれば「若いもんに何を言っても聞いてくれない」だし、若いもんからすれば「オヤジは何を言っているのかわかんねぇからウゼぇ」ですしねぇ。頑張れ、お父さん

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【ストーリー】
「俺も昔はシークレット・エージェントでなぁ、忍者を10人だったか12人だったかを、素手だったか槍だったかで倒したもんだよ」とうそぶく整体師の父親ユーが煙たくてしょうがない、イルカ調教師の長男ニッキーと女子高生の長女ナタリー。ユーはユーで、「子供たちがさっぱり相手をしてくれない」と妻の遺影に泣き言を言う毎日。そんなある日、謎の車椅子の男が率いる一団がユーを襲撃、ユーを誘拐してしまう。父親のヨタ話が真実と知った兄妹は、父親奪還に立ち上がる。

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どーせ『スパイ・キッズ』のバッタもんでしょ?」と侮っていると、とんでもなく手痛い目に遭う一本。
プロットこそスパイ・キッズ風であるものの、タイトルの“精武”が物語る通り隅々に『ドラゴン怒りの鉄拳』への目配せが効いた、放課後にドラゴンごっこに興じた人には堪らない一本に仕上がっている。『リベリオン 反逆者』でもオマージュされていた白い詰襟姿で登場するアンソニー・ウォン大活躍のオープニングから放課後レベルのドラゴン臭プンプンで、中盤の人体模型ヌンチャク片手に怪鳥音を発するアンソニー・ウォンを観れただけでもポイントは高い。もちろん格闘中に目のドアップを忘れない芸の細かさも好印象。登場人物のジャージ率が高いのも、本作の特徴。当然、横にストライプの入ったアレだ。これも、体育の時間に『死亡遊戯』ごっこに興じた人なら、感涙の配慮ではないだろうか。良いジャージ映画だ
細かい気配りはドラゴンだけにではない。「スパイの乗物はこれだ!」とばかりに登場するミニクーパーにはもちろんユニオンジャックが描かれ、「スパイ映画の悪役はこういう奴に決まってるでしょ!」と登場する悪役は、スキンヘッドに黒い詰襟だ。なんか小っちゃくてすばしっこい奴までオマケで付いてくる気の効きよう。残念ながら白いペルシャ猫や、人食いサメがいるプールは出てこないが、その代わりと言っちゃなんだが脅し文句は「イルカの餌にするぞ!」だ。どんなイルカだ?
ユエン・ウーピンの、アイドルだろうが爺さんだろうが一切手加減しないアクション演出も素晴らしいが、監督・脚本を兼任するニッキー役のスティーヴン・フォンの、長編映画2本目とは思えない手堅くスピーディな演出も魅力。旨味どころをよくわかっている演出もそうだが、“親子の断絶”“父権の復興”“お父さんは寂しいよ”としっかりテーマを作品に反映できる手腕は、その若さも踏まえ今後の期待が大きい人物だ。

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香港に戻ってからというもの、後継者育成に躍起になっている感のあるジャッキー・チェン。誰にも真似できないワン・アンド・オンリーな所に行き着いてしまったジャッキーさんだからこそ、彼なりに彼なき後の香港映画界を危惧しているのでしょうね。身体が言うことを聞かなくなってきたことを、周り以上に本人が痛感していることでしょうし。
ジャッキーさんが製作総指揮を務める本作には、そのもったりとした鼻周りがなんとなくジャッキーさんなスティーヴン・フォン、ジャッキーさん直々に後継者候補として挙げた『香港国際警察/New Police Story』ダニエル・ウー、アイドルユニットTwinsら“新・ジャッキー一座”とも言える顔ぶれが登場。アイドルも若手も関係なく、殴られ蹴られ吊るされ落とされの大活躍。ちょっと気になると言えば、本作にはガラスに頭から突っ込むジャッキー映画お馴染みのシーンが多いものの、突っ込むのはいずれも悪役ばかり。ガラスを見れば自ら進んで頭を突っ込んだジャッキーさんは、劇中一番ハードなシーンに周囲の制止を全く聞かず挑んできただけに、その辺に甘さも感じやや不満も。エンドロールにNGシーン集が入っていないですし。

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だが、そんな不満も些細なものにしてしまう程の存在感を誇るのが、『ザ・ミッション 非情の掟』のアンソニー・ウォン。
白い詰襟姿でしなやかなアクションを披露するアンソニー、オヤジTシャツにヤンキー座りでヨタ話を披露するアンソニー、強敵を目の前に表情一つ崩さずお茶を勧めるアンソニー、子供に無視され一人泣き言を言うアンソニーと、父親世代の悲哀を一人体現するアンソニー三昧。世代交代をテーマとしながら、結局アンソニー・ウォンに若手が一歩も近づけていない。ギラギラしてますからねぇ、アンソニー。普段着はロケンローラーですし。
なんとなくシリーズ化もしそうな本作。もし続編を作るなら、今度の悪役は片手に熊手をはめたスティーヴ・ブシェミでお願いいたします。

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まだまだ任せられない

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posted by たお at 15:21 | Comment(8) | TrackBack(9) | 前にも観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
たおさん、こんばんは。
TBありがとうございました。
この作品、意外や意外、もうけもん的におもしろかったです。
ボタンを押すとパカッと開く秘密の部屋・・・妙に嬉しくなってしまいました。(笑)
Posted by sabunori at 2006年11月27日 20:50
sabunori様こんにちは!
いやぁー、ホントに面白かったですねぇ。
“香港映画ファン”という狭いくくりの中だけではなく、もっと多くの人に観てもらいたいものです。
Posted by たお at 2006年11月28日 14:11
あ〜、これ面白そう!!!
白い詰め襟のアンソニー・ウォン、観ます、観ます!
Posted by sheknows at 2006年11月28日 23:47
sheknows様こんばんは〜♪
あんまり人に「あれ観ろ、これ観ろ」とは言わないんですが、これはいいですよぉ^^放課後ドラゴンの方々には堪らないと思いますよw
Posted by たお at 2006年11月29日 01:30
こんにちは。
敵役のマイケル・ウォンのスキンヘッドって、スパイ映画定番の悪役の姿っていう意味合いだったんですね。
面白くて映画に入り込みすぎて、全然、気がつきませんでした。
Posted by @KOBA at 2006年12月02日 08:51
@KOBA様こんにちは!
007シリーズのスペクターを思い浮かべてしまいますよね^^
まぁ、Dr・イーヴルでもよいですが。
Posted by たお at 2006年12月02日 09:54
どもこんにちは。
ほんと、意外といい出来で私も喜んでしまいました。
スティーブン監督第1作はちょっぴり微妙でしたが、こちらはかなり良かったですね!

>ガラスを見れば自ら進んで頭を突っ込んだジャッキー
そこができるようになれば一人前といったところでしょうか(笑)
Posted by 微妙 at 2007年01月27日 15:35
微妙さまこんにちは!
『エンター・ザ・フェニックス』も本作と似たようなテーマとゲイ遊びがあって楽しかったんですが、これは娯楽作として文句なしの面白さでしたねぇ^^
一番高い所から落ちるのも、一番硬い所に頭を突っ込むのも自分が率先して初めて一人前ですねぇw
Posted by たお at 2007年01月28日 14:24
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