1993年 アメリカ映画 127分 アドベンチャー 採点★★★★
初めて観た時に受けた衝撃って、年月を経て何度か繰り返し観ているうちに否応がなしに薄れてしまいますよねぇ。カイザー・ソゼが誰なのか知ってるわけですし。もちろん別な面白さを発見できたりもするんですが、初見時のインパクトを超えるってのはなかなか。だって、最後に届けられる箱の中身は嫁の生首って知ってるわけですし。レビューを書く際に、その辺をどう調整するか悩むんですよねぇ。思い出話に終始するのもアレですし、変に斜に構えるのもなんですし。

【ストーリー】
大富豪ジョン・ハモンドより、テーマパークとしてオープン予定のとある施設の査察を依頼された、古生物学者のグラントとサトラー。そこに数学者のマルコムも加わり、中南米コスタリカ沖合に浮かぶ島へと向かう。そこで彼らが目にしたのは、遺伝子工学によって現代に蘇った恐竜たちの姿であった。しかし、絶対的な安全を謳う施設を襲ったトラブルにより、恐竜たちが人間に牙を剥き始め…。

現代に蘇った恐竜の姿を最新のSFXと圧倒的な音響効果で映し出し一大センセーションを巻き起こした、『宇宙戦争』のスティーヴン・スピルバーグによるSFアドベンチャー。
“テクノロジーの反乱”という非常にマイケル・クライトンらしい題材を、見せ場たっぷりに描き出した本作。と言うか、見せ場オンリー。導入部のもたつきや回収されない伏線に皆無のドラマ、“脱出した”と言うにはあまりに忽然と姿を消すその他大勢の方々に、ラスト突如忍び足になるティラノサウルスと、問題だらけの脚本を見せ場の連続で一気呵成に見せ切ったスピルバーグの勝利。脚本を見たスピが、「あぁ…、もうこれはジェットコースターにするしかねぇなぁ」とでも思っちゃったんでしょうかねぇ。
特に“Tレックス大暴れ”一連のシークエンスは圧巻。姿の見えない巨大なものが近づくサスペンスフルな導入部から、矢継ぎ早にピンチが全方位から襲ってくるメインまで息つく暇のない展開は見事の一言。一家で楽しむファミリーアドベンチャー映画の一種にも関わらず、その危機の容赦無さっぷりに「この子供、死んじゃうんじゃないのか?」と思ってしまうほど死の香りがプンプン漂ってるのも素晴らしい。
また、死と笑いを背中合わせにしたスピ流ギャグも光る本作。ティラノから逃げ出し公衆便所に隠れた弁護士。そこにティラノが急襲し、四方の壁が外側にバタンと。完全にスラップスティックの構図。ドリフの世界のよう。下着にも見える短パン姿がより一層笑いを生みだすのだが、その見た目の面白さに吹き出した瞬間に頭からバリバリと食われてしまい、笑いだした笑い声の処理に困る腹黒いスピギャグの真骨頂。このバツの悪さと救いのなさが、恐竜という生身では到底敵わない存在の怖さってのを強調したんでしょうねぇ。

この騒動で父性に目覚めたグラントに扮する『デイブレイカー』『イベント・ホライゾン』のサム・ニールや、驚いた時に四角く開く口やベソ顔のクシャクシャっぷりが妙にそそられる『ミート・ザ・ペアレンツ3』『チェイシング/追跡』のローラ・ダーン、異彩を放つ以外は特に役目のなかった『ザ・フライ』のジェフ・ゴールドブラムに、財力を持ったピーター・パンみたいだったリチャード・アッテンボローと、錚々たる面子が中心に据えられた本作。
周囲を固める面々も、『4デイズ』のサミュエル・L・ジャクソンに『ソーシャル・ネットワーク』のジョセフ・マッゼロ、『ゲット・ショーティ』のマーティン・フェレロに『愛と死の間で』のウェイン・ナイトらと、個性的な顔ぶれが。
しかしながら、やはり本作で目を奪われるのは現代に蘇った恐竜たちでしょうねぇ。CG全任せではなくアニマトロニクスやモデルアニメーションなども駆使した、その場に何か重たい物体が実際に存在しているようなリアルさも圧巻だが、学説と最低限の接点を保たせながらもカートゥーンキャラクターのような性格分けををすることで、見た目以上の個性を持たせたことが主役としての存在感を発した要因なのかと。動物が自由にウロウロしてるってよりも、役者がキャラを演じてる感じと言うか。その恐竜に説得力を持たせると同時に、「もしかしたら近い内に実現するんじゃないのか?」と観客に思わせる遺伝子工学云々の下りの分かり易さも、本作の面白さを支えたもうひとつの要因。そして、“恐竜が現代に蘇る”ってロマンと、その恐竜を動物園で動物を見るかのように楽しめるエンタメ性が合体した、そんな子供の頃一度は思い描いた夢の世界が目前に広がる“ジュラシック・パーク”の存在こそが、本作の真の主役なのかと。

巨大なホオジロザメも怖いが、ちっちゃくても狡賢いのが集団でいる方がもっと怖い
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