1973年 イギリス映画 102分 ファンタジー 採点★★★
自宅からさほど遠くない所に、あと一回地震でも来ればツブれてしまうんではないかと思うほどのあばら家で営業を続ける食堂があるんだが、そこの中華ソバがとにかく美味い。腰がブーメランのように曲がったお婆さんが作る煮干だしを使った昔ながらの中華ソバなのだが、その澄んだスープといい、麺の茹で加減といい、仕事が非常に丁寧。背脂やトロチャーシューとは無縁の派手さの全くない中華ソバだからこそ、何年食べ続けても飽きないんだろうなぁと。
【ストーリー】
奇怪な怪物が持っていた黄金のレリーフの欠片を手に入れたシンドバッドは、そのレリーフが完全な形になった時に得れる絶大な力を求める悪の魔術師によって窮地に追いやられていた仮面の王を助け、残りのレリーフを求め幻の島へと向かう。
1958年の『シンドバッド7回目の航海』に続く、シリーズ第2弾。前作から15年も経っているのを全く感じさせない変わらなさが魅力とも言える本作だが、そもそも58年の時点でさえ使い古されていた技術であるストップモーションアニメを、丁寧な仕事と想像力を刺激するデザインで、どの時代の観客でも興奮させることのできるハリーハウゼンだからこそ生まれる魅力である。ストップモーションアニメの特徴であるカクカク動きも、伝説の生き物がメインだった前作から趣を変え、本作では魔術師によって命を与えられた銅像や木像といった普段は動かないものをメインに据えている為、より高い臨場感を生んでいる。
しかしながら、ダイナメーションの迫力とは裏腹に、今回は実写面がてんで弱い。見せ場のつるべ打ちだった前作と異なり、クライマックスに見せ場を集中したはいいが、そこへ繋がる展開が場当たり的な割にはダラダラと冗長。民族色や宗教色を強めに打ち出しているのも、娯楽作として楽しむには口当たりが重い。ダイナメーションと実写との相性がカギを握るタイプの作品だけあって、ラーメンにチョコレートがのかってきた様な相性の悪さが残念。
なによりも主人公に魅力が乏しいのが本作の敗因。拾った物とはいえ、「返せ」と言われても頑なに返そうとしないドロボウ顔のシンドバッドといい、悪事を企んでいるとしか思えない仮面の王といい、善玉が全員揃いも揃って悪人面。「海賊船はみな沈めてやる!ふゎははは!」と高笑いをするシンドバッドの姿は、どっちが海賊なのか分からなくなるほど。逆に、魔術を使う度に老け込んでしまう魔術師は哀れなもの。手下が一人しかいないですし。その手下に到っては、衰弱していく魔術師に「もう、お止め下さい!身体がもちません!」と真剣に心配して懇願してたりする。実はいい人たちなんじゃないのか?
ダイナメーション以外に見所が全くないと思われた本作だが、ハリーハウゼンのクリーチャー以上に目を奪う存在が。70年代のお色気要員を語る上で欠かすことの出来ない存在、キャロライン・マンローが。ハマーホラーから007までと、見事に自分の存在意義を理解したフィルモグラフィを誇る彼女は、本作でも黒髪に表面積の小さい衣装をまとい、はちきれんばかりと言うかはちきれちゃってる胸元に必要以上の汗を滲ませ画面上を右往左往。「私は貴方様の奴隷です」と、男子中学生悶絶のキャラクターを演じている。当時の男子中学生は、きっと随分お世話になったんでしょうねぇ。その名前と一緒にほろ苦い思い出も蘇るであろう彼女の存在感に、★オマケ。
怪物を倒す時は背後からって卑劣さも
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