2009年 フランス/アメリカ映画 97分 コメディ 採点★★★
深夜のファミレスなんかに行きますと、時折周囲どころか我をも失っているカップルの方々を見掛けることがありますよねぇ。普通に食事に来た私が場違いに感じるくらい。でもまぁ、誰しも人を好きになる時ってのは通常の精神状態にないんでしょうから、あんまり指を差して笑ったりしないのが宜しいのかと。常々指を差したくなる衝動に駆られる私が言うのもなんですけど。
【ストーリー】
妻子と共に幸せな生活を送っていた警官のスティーヴンは、交通事故を切っ掛けに自分に正直に生きることを決意し、ゲイとしての人生を歩み出す。しかし、思いのほか金の掛かるゲイライフを維持するために詐欺師に転向するも、程なく逮捕され投獄されてしまう。そんなある日、刑務所でフィリップという運命の人に出会ったスティーヴン。出所後ふたりでの生活を送るのだが、スティーヴンはより幸せな生活を実現するため再び詐欺に手を染め…。
『ラブ・アゲイン』のグレン・フィカーラ&ジョン・レクアによる、実話をベースにしたラブコメディ。製作総指揮に『アデル/ファラオと復活の秘薬』のリュック・ベッソンが携わっているが、別に脚本にまでは手を出していないので、おてんば娘にカンフー使いが振り回されるいつものベッソニズムは欠片もなし。
愛する人と一緒に居るために詐欺と脱獄を繰り返した、なんともバイタリティ溢れる主人公の姿を描いた本作。“実話”ってのと“ゲイ”ってのに目を奪われてしまいがちだが、ちょいと変わった人生を送る主人公が恋に狂う、そもそもの物語自体が非常に面白く仕上がってた一本で。確かに中年男が監獄内でラブラブなのは見ていて痛々しいが、それは深夜のファミレスでチュッチュしてるカップルに対しても同じような印象ですし。見てくれのみに頼らず、その行動に笑いを生みだすサジ加減も上手いなぁと。
あの手この手でフィリップと一緒になるスティーヴンのポジティブさを表面にまといながらも、全てを捨て自分に正直に生きる決意をした割にその人生が嘘に塗れている様や、オチにも効いてくる“よりによってテキサスで”という皮肉も上手に織り込まれた佳作で。
スティーヴンに扮したのは、『ブルース・オールマイティ』のジム・キャリー。こっちの都合も考えずにグイグイ来る感じが苦手な役者だったんですけど、思い付きで動いている割になんだかんだと上手く行く天才肌特有の落ち着きの無さや、恋に浮かれて躁鬱が激しくなる様が非常にハマった、とっても丁度良いジム・キャリーだったなぁと。
一方のフィリップに扮したのは、『ゴーストライター』『アイランド』のユアン・マクレガー。このユアンは素晴らしい。もともと初老の人の傍に寄り添ってる様が非常に似あう仔犬系の可愛らしさを持つ彼なんですけど、本作ではそこに可憐な少女の可愛らしさまでプラス。多少あざといくらいが可愛く見えるってのを熟知した好演で。コピーを見る限りジム・キャリーが熱望した映画ってことらしいんですが、実は“ユアンに恋する乙女を演じさせたいってのが発端にあるんじゃないのか?”って思えてしまうほど。
その他、“実は旦那はゲイでした”ってのが妙に似あう、『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』『ビッグ・ダディ』のレスリー・マンや、“夢に出てくる彼氏”ってのを突き詰めていくとゲイっぽくなるってのを体現した、『300 <スリーハンドレッド>』『ラブ・アクチュアリー』のロドリゴ・サントロなど、脇も良くハマったキャスティングで。
こんなんが道端に捨てられてたら、衝動的に拾ってしまいそうで
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