1958年 アメリカ映画 88分 ファンタジー 採点★★★★
“好きな映画ベスト10”とか挙げると、その時期その時期でランクインする作品の変動が激しいのですが、『アルゴ探検隊の大冒険』は常にランキング入りをしている私たおです、こんばんは。結局のところ神様の痴話喧嘩なギリシア神話を舞台に、数々の魔物が跋扈する世界観に心が躍り、異常にリアルなCGよりも想像力を刺激するストップモーションアニメで表現されたクリーチャーの姿に、妄想の旅へ出っ放しになったものです。そんな私なので、ゲームの“アトラス”なんてやってしまうと、海にはクラーケン、陸にはケンタウロスと夢は一杯だが生活には苦しい世界が出来上がってしまうことに。
【ストーリー】
婚約者のお姫様とバグダッドへ戻る航海中、食料調達の為に立ち寄った島は一つ目の巨人サイクロプスらが跋扈する魔の島だった。その島で怪物に襲われていた魔術師を救いバグダッドへと戻ったシンドバッドだったが、魔の島へと戻り魔法のランプを手中に収めんとする魔術師の策略にはまり婚約者を小人にされ、彼女を救う為已む無く怪物たちの待ち受ける魔の島へと旅立つのであった。
これの前の6回の航海がどんなのだかはよく分かりませんが、7回目の航海を描く一本。もちろん本作最大の見所であり魅力は、レイ・ハリーハウゼンによる表情なくとも感情と表現力の豊かなモデルアニメーションにあるのだが、その特殊効果のリズムを狂わせることのない、思いのほかテンポの速い演出を見せるネイザン・ジュランの手腕も見事なもの。まぁ、あまりに展開が速すぎて、1時間ほど何かを見損なった気にもなりますが。それが顕著なのが、中盤の魔の島への航海のシーン。嵐の中、遠くから響く魔物の声に乗組員らがなんとなく発狂、座礁の危機にシンドバッドが舵を取るが、島への上陸ポイントは大岩の間の狭い海路のみ。「さぁ、どうなるシンドバッド?」とワクワクしていると、次のシーンでは何事もなかったかのような晴々とした顔で上陸しちゃってる。TVではカットしてたのだろうと今回DVDを観てみたのだが、やはりにこやかに上陸している。まぁ、特典のインタビューで主演俳優がマラリヤに罹って撮影できなかったのが判明したので、長年のつっかえが取れましたが。
その程度の些細な唐突さはあるものの、「こんなのが歩き回ってたらなぁ」と妄想に耽ること請け合いのクリーチャーたちとカラフルに彩られた町並みの前には、非常にちっぽけな問題。夢と驚きに満ちた一時間半を楽しめたことには変わらない。
超高層ビルに並ぶ大きさの怪物も怖いが、小高い丘から顔を出す程度の大きさの怪物の方が、リアルに怖い。そんな絶妙で微妙な大きさのモンスターも魅力のハリーハウゼンだが、愛嬌タップリの芸の細かさこそがその最大の魅力。双頭ロック鳥のヒナの“ヒナといえばヒヨコ”という基本に則ったパヤパヤした羽毛の愛らしさ、食事の時はキチンと椅子に座って舌なめずりをするサイクロプスの行儀良さと、愛嬌タップリのモンスターたちに悶絶。モンスターが二匹並べば対決と、分かっている作りにも脱帽。見せるべき物を充分に理解しているからこそ、古びれはしても風化することのない魅力が生まれるのであろう。
『アラジン』でも有名な“ランプの精”ジニーが登場しているのだが、意外にもジニーは子供。肌も青くない。子供のクセに、覇気もない。まぁ、好きでランプの精をやっているんじゃないとぼやいてたので、色々あるんでしょうが。四六時中呼び出されて願いを聞かされてるのも、楽しそうな仕事ではないですし。「頑張ってはみますがぁ…」と、やる気を全く感じさせない返事と共に繰り出されるやっつけ魔術がリアル。
イラク人を主役にイラクの伝説をアメリカが当時映画にしていたことを取り上げるのは、政治と伝説を一緒くたにしている気もしないでもないので、ここでは触れず。
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