1990年 香港/台湾映画 97分 アクション 採点★★★
映画の醍醐味の一つに、“騙される”ってのがありますよねぇ。“騙される”って言っても良く耳にするサスペンス映画の謳い文句のようなやつじゃなく、ジョギリがちょっとしたナイフに過ぎなかったり、“全米○○州上映禁止”が単に出来が悪くて上映されなかっただけだったり、ブルース・リーかと思ったらブルース・リだったりする類のやつ。こんなのに騙され続けてきたおかげで、ちょっとだけ映画を見る目が養われてきたような気も。まぁ、最近じゃそんな詐欺まがいの作品も減ってしまいましたけどね。「騙された!」で済ませられる入場料金でもないですし。
【ストーリー】
警察署長暗殺犯は死刑執行済みの死刑囚であった。警察官のウェイはその謎を探るため、囚人に成りすまし刑務所へ潜入。そこでワケアリ囚人のロン、キア、ビンバルらと出会う。あれこれあって死刑囚となったウェイだったが、衝撃の真実を知ることとなり…。
「なんだ?ジャッキー主演じゃねぇじゃん!」と世界中のジャッキーファンを憤慨させた、実話を基にしたというアレコレ驚愕の連続であるアクションサスペンス。監督は、これまた衝撃的な展開の詰め合わせだった『ジャッキー・チェン/ドラゴン特攻隊』のチュー・イェンピン。
“死刑囚をスナイパーに仕立て上げる”というどっかで聞いた事あるプロットを、刑務所映画の数々で見覚えのあるシーンを繋ぎ合わせて仕上げた、継ぎ接ぎ映画の怪作である本作。ジャッキー・チェンにサモ・ハン・キンポー、アンディ・ラウにレオン・カーフェイらビッグスターの共演ってのも見所なのだが、各々が自分の持ち味を主張しちゃってて混じり合うわけでもなく、一人が前へ出てくればそれまで出てた人が引っ込む、こんなとこでも継ぎ接ぎ感を堪能できる、元も子もない言い方ですけど“変な映画”。イントロ9割/本編1割という、延々前菜が出てきて腹一杯になった所に分厚いステーキが出てきてしまうかのような狂った構成も、この映画ならではの味わい。確かに各所でけちょんけちょんに貶されてしまうのも分からなくもない、なんとも自由奔放な仕上がり具合だなぁと。
ただまぁ、嫌いにはなれないんですよねぇコレ。どっちかと言えば、好きな部類でも。結果が伴ってるとは言い難いんですけど、「面白けりゃいいんだよ!」って貪欲具合も、予想の斜め上を軽く通り越すワンパクな展開も、この時期の香港映画(まぁ実質台湾映画ではありますが)でしか味わえないものですし。やっぱりアレですかね?昨今の予想の範疇内で収まってしまう、小奇麗にまとまった映画ばかり観ているからですかね?多分、私の悪趣味がこれを「好き!」と感じさせてるだけなんでしょうけどねぇ。
『ポリス・ストーリー/香港国際警察』のジャッキー・チェンに、『SPL/狼よ静かに死ね』のサモ・ハン・キンポー、『マッスルモンク』のアンディ・ラウ、『エレクション』のレオン・カーフェイと、人気も実力も兼ね備えた香港四大スターが顔を揃えた本作。狭い場所で小道具を巧みに使ったアクションをジャッキーが披露したかと思えば、サモ・ハンが人情喜劇臭を作品に漂わせ、ドラマ部分をカーフェイが引っ張る中、アンディ・ラウがいつの間にか混ざっている、もうなんとも贅沢な使い方。まぁ、それが一つに混じり合ってるわけではなく、メインが変われば作品のトーンもがらりと変わる自己主張のし合い映画になっちゃってるんですけど。色々と大人の事情があるんでしょうねぇ。
そんな自己主張の強い4人が主導権を奪い合っているような作品なんですが、そんな4人をちょちょいと往なして美味しい所を全部持ってっちゃってるのが、『片腕ドラゴン』のジミー・ウォングさん。根拠不明の並々ならぬ自信で色男を演じ、観客を心底困惑させることに定評のあるジミーさんですが、本作でもなで肩に風呂敷っぽいのをマントの如く纏い、ヒップアップの小林進な面構えで男前のギャングの大物を堂々と演じ切って、観る者全てを困惑させる強烈存在感。ずらりと並んだ顔ぶれを見渡し、「この中でポール・ニューマンになれるのってオレくらいだろ?」と確信しちゃうハートの強さは圧巻。各々自己主張が過ぎて印象がクシャっとしてしまった本作を観賞後に振り返ると、もう思い出せるのがジミーさんだけだったりする圧勝ぶり。自分を信じるってのは大事なんですねぇ。
見習いたいけど真似はしたくない
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