1999年 香港映画 81分 アクション 採点★★★★★
どんなにカッコいい人だって、うどんを食べている最中にクシャミをすれば鼻からウドンが出てくることがある。どんな綺麗な人だって、餃子を食べればニンニク臭い。ついつい見た目から来る大まかなイメージでその人の生活全体を決め付けてしまうことがあるが、どんな人だって気を抜く瞬間はあるし、そんな時は大抵マヌケなもんです。
【ストーリー】
何者かに命を狙われている黒社会のボス、ブン。彼を護衛する為に集められた5人の精鋭達だは、時に衝突しながらもこの暗殺計画の黒幕を突き止め、万事解決したかに思えたのだが…。
傑作か問題作と、振り幅が異常に大きい作品作りを続けるジョニー・トー。“まぁまぁ”ってのが、ない。で、本作なのだが、最初っから書いてしまうのも心苦しいが、傑作である。
映画的に決まりきった視点とはほんの少し違う立ち位置から見つめるトー作品らしく、本作では殺し屋達の日常における何気ない一瞬に着目。その背景も性格も分からない5人の殺し屋達の過去やキャラクターを掘り下げることは一切せず、ほぼ即興とも言える俳優達の演技を通してホンノリとそれぞれの性格や関係が垣間見えてくる構成は秀逸。どんな言葉よりも無言の会釈が雄弁に人物間でメッセージを伝え合う凄味を見せたかと思いきや、クールな殺し屋とはいえ待ち時間は退屈なのか、紙を丸めてサッカーに興じる可愛らしさも見せる。もちろんただ遊んでいるだけではなく、『ブレイキング・ニュース』での料理シーン同様、一気に男たちの間の距離を縮めるオマケつきだ。
この坦々としながらもキャラクター達を雄弁に語っている日常シーンを“静”とするならば、その合間合間で繰り広げられる壮絶なガンアクションシーンも“静”である。ただし、迂闊に手を近づければズタズタに引き裂かれかねしない程の力強い渦が内側で巻いている“静”なのだが。“銃はブレないようにしっかりと両手で持つ”“しっかりと狙う”“絞るように引き金を引く”“迷わず撃つ”と、当然のことなのに普段映画ではあまり観れない基本的動作を、これでもかと見せる。それも、熟練した者の流れるような動作の美しさを。ジャスコ内で繰り広げられる、役割分担を熟知した者たちによる銃撃シーンには“見事”という言葉しか見当たらない。派手な爆発も横っ飛びガンアクションも一切ないのだが、どんな火薬量よりも迫力と緊張感が伝わるこの演出は、現時点でのガンアクション演出における一つの到達点である。だが、やはりこの作品の見所は、非情だが無情ではない男達の生き様を映し出すドラマ部にあるであろう。サブタレも、この作品のように少ない言葉でも雄弁に物語れる文章を書きたいものだが、如何せん私が無駄口叩きなもので。
『インファナル・アフェア』の成功で、今まで香港映画を敬遠していた客層にも一気に認知されたアンソニー・ウォン。だからと言って、「キャー!アンソニーってばカッコいいー!!」と『八仙飯店之人肉饅頭』まで追っかけて鑑賞する所までは行ってないのが残念ですが。凄まじい凄味とクールさを前面に出しつつも、凄腕の殺し屋と言えども腕っ節が強いわけではない「それもそうだ」と妙に納得してしまう茶目っ気を兼ね備えた主役を演じるアンソニー・ウォンの仕事振りは美味しいにも程があるのだが、傑作『エボラ・シンドローム』での「エ〜ボ〜ラ〜!うつすぞ〜!」と唾ペッペしていた頃の怪演が最近めっきり見れないのが寂しい。インタビュー映像での非常に面倒くさそうに答える姿は、本編以上にシビレましたが。
ビッグネームとしてのアンソニー・ウォン以外は、いつものジョニー・トー組が脇を固める本作。特に『PTU』でバナナとの相性が非常に悪かったラム・シューが素晴らしい。ピーナッツを食べている以外は殆んど口を動かさない寡黙な役だが、その少ない言葉や動作だけで自身の内面だけではなく、アンソニー・ウォン演じるグワィとの過去も垣間見せる表現力には脱帽。
一般的な作品では“無駄な部分”として描かれない些細な日常をクローズアップしながらも、全く“無駄な部分”がないこの作品。それどころか、80分と非常に短い時間の中に数多くのドラマを詰め込み、それらを全て消化さえしている。この作品の鑑賞前と鑑賞後では、映画の観方自体変わりかねない力を持っていると言えるだろう。既に動き出していると言われる続編には期待も大きいが、同じく企画が動いているハリウッドリメイクの方はちょっと、あのぅ・・・。まぁ、香港資本で、ジョニー・トー監督で、アンソニー・ウォン主演で、ラム・シュー助演なら。それが無理なら、いっそのことロブ・コーエンあたりに監督させて、主演がアイス・キューブとかの作ってくれた方が諦めもつきますが。
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『リーサル・ウェポン』のリッグス撃ちなんてホンマ、ギャグですもんな… でも以外と目を閉じてしまうってのも少なくないんですよな…
見た目だけが良けりゃいいってのも分かるんですが、キッチリ見せてもカッコいいんですけどねぇ。
ハリー・キャラハンでさえ撃つ時は目を閉じちゃうんですよね。そう考えると、『バリスティック』のルーシー・リューはすごかったですねぇー。映画自体はアレでしたけど。
少し前までは、香港映画といえば、ジャッキー・チェンの作品くらいしか思い浮かびませんでしたが、最近の作品は、面白いですね。
とくに男たちがかっこよくて。
たおさんがおっしゃるように、私もジャスコでのシーンは、役割分担がきっちりされていて、見ごたえがありました。
こちらからもTBさせていただきます。
出来不出来の差が激しいのも香港映画の魅力なんですが、本作は本当に面白いですよねぇ♪
どこを切っても見応えがある!
ほんと、”無駄のない”映画です。
そして濃い!いろんな意味で!
むっちゃくちゃかっこよくていつ見てもしびれてしまいます、この映画。
ジョニー・トー、目が離せませんがハズレも多いようで。
ほかの作品もレビュー参考にさせてもらいます(笑)
その出来の振り幅の大きさも魅力ですよねぇ^^
新作の『エレクション』にも期待!