2012年03月21日

エリート・スクワッド (Tropa de Elite)

監督 ジョゼ・パヂーリャ 主演 ヴァグネル・モーラ
2007年 ブラジル/オランダ/アメリカ/アルゼンチン映画 115分 ドラマ 採点★★★★

オリンピックやワールドカップ開催を機に街を浄化しようって話を、最近よく耳にしますねぇ。そのやり口にどうかと思う点も多々ありますし、イベント終了後にきちんと維持され続けるのかって疑問もありますが、なにかと問題を抱える暴れん坊の国々にとってはこういう機会も大切なのかなぁと。まぁ、個人的にはオリンピックもワールドカップも結局金の話に行き着きがちなので、毎回ホスト国は変えても開催地はどっか中立な場所に固定した方が良いと考えてる口なんですが。

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【ストーリー】
ローマ法王来訪に向け、犯罪密集地区となったリオデジャネイロのスラム街一掃作戦を命じられた、ブラジル警察のエリート特殊部隊BOPE。そんな中、BOPEの隊長ナシメントは、過酷な任務による強度のストレスと妻の妊娠により引退を決意、腐敗しきった警察に反発する正義感の強い新人警官ネトとマチアスを自分の後継者として訓練を始めるのだったが…。

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リメイク版ロボコップの監督に抜擢された事でも話題になったブラジルの新鋭ジョゼ・パヂーリャによる、ブラジルの麻薬犯罪と警察腐敗の実態を描き出した犯罪ドラマ。
軍隊並みの装備と組織力を持つ麻薬ギャングの実態や荒廃しきったスラム街の描写も強烈だが、組織全体が腐敗した警察描写にただ驚かされる本作。“警備料”名義で市民から賄賂を徴収し、その縄張りを身内で奪い合い、裏切り者の身内は丸腰でスラム街へ放り出し殺害されるように仕向ける、話としては耳にしていたが映像になって目にすると呆れるを通り越して、ある意味感心してしまうほどの腐敗っぷり。同じ悪行でもギャングのそれとは大きく異なり、所轄で事件が増えると上司に怒られるから、見つかった他殺体は他の所轄のエリアに移動させて知らんぷり。でも、そっちの所轄でも困るからこっそりまた死体を移動させる“死体ラリー”のように、全てが非常に公務員らしい慣習と怠惰とことなかれからきているのも興味深い。ダメな方にシステムが完成されており、しっかりそれが回転してしまってるから改善のしようがないってのも、まさに公務員のそれ。
一方、そんな警察を軽蔑する特殊部隊BOPEも相当なもので、事件は現場で解決させる要は“処刑部隊”に過ぎない描写。一方を否定し他方を肯定する勧善懲悪的な視点で描くのではなく、現状やその周辺のシステムが変わらない以上は“これはこれで仕方がない”必要悪として映し出されているのも面白い。ギャング・警察・BOPEに対しある一定の批判的視点で描かれてた本作だが、一番批判的かつ軽蔑にも近い視線を向けられていたのが、小遣い稼ぎ程度の感覚で麻薬密売に手を染め、TVで見聞きした情報のみを鵜呑みにし、安全圏に身を置いたまま社会や権力に対し声を高らかに上げる中流階級以上の人々だったりするもの、非常に印象に残る描き方で。
『フルメタル・ジャケット』の新兵訓練がサマーキャンプに思えてくるほど過酷なBOPE訓練風景や、警察側も含めスラムと直面する人々のドラマ、ネタの強烈具合など非常に見応えのあった本作。販売元がトランスフォーマーなんで、ついついいつもの“なんちゃってハリウッドアクション”だと思いがちだが、そんな見た目のみで敬遠するにはちょっと惜しい作品だなぁと。

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“男の職場は戦場”って、これ位のレベルじゃないと言えないのでは?

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posted by たお at 13:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■あ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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