2006年 アメリカ/ドイツ映画 104分 アクション 採点★★
世界中の情報をリアルタイムで知れる時代になっちゃったせいか、トンチンカンな日本像ってのを描く作品が随分と減りましたねぇ。かつては中日にトム・セレックが入団したり、名古屋で忍者が暗躍してたりと、なんか名古屋ばっかりではありますが、日本でありながら日本じゃない“ニホン”という名のワンダーランドを楽しめたものです。まぁ、今そんなことをやったら「映画を観て信じたらどうするんだ!」ってクレームが来ちゃうのかも知れませんけど、そんなの観て信じちゃう人は映画を観る以外の日常生活に問題を抱えてるような気がしますし、そんなのを信じれるピュアさが羨ましい気も。
【ストーリー】
アメリカで問題を起こしてしまい少年院入りを逃れるために父のいる東京へとやって来た、車好きの高校生ショーン。異国での生活に馴染めない彼であったが、友人に誘われドリフト・レースを見学に行く。そこでドリフト・キングに勝負を挑まれたショーンは完敗。しかし彼は、これを機にドリフトの世界に魅入られていく…。
消費者金融の看板ばかりが目立つ東京を舞台に、車がキュッキュキュッキュと尻を振るドリフトの世界を描いた、“ワイルド・スピード”シリーズ第3弾。まぁ3弾とは言いつつも、ストーリーにもキャラクターにも特に繋がりの無いスピンオフの様なものである上に、4・5作目にも登場しているハンの末路を見る限り、時系列で並べると最も新しい話になるっていう若干ややこしい一本。メガホンを握ったのは、本作以降シリーズのお抱え監督となる『ワイルド・スピード MEGA MAX』のジャスティン・リン。
元々“車を走らせる”ってコンセプトで出来あがってるシリーズではあるものの、過去作ではレースをする必然性を最低限物語の中で描いてきたのだが、本作はレースとレースの間に辛うじてストーリーっぽいのがある程度。キャラクターには魅力も中身もなく、肝心のレースもドリフトだからしょうがないとはいえ、開放的なスピード感がないのは痛い。「この車じゃなければダメなんだ」っていう車偏愛的視点もストイックさも然程感じられない、正式シリーズなのにパチモンVシネみたいな仕上がりも残念で。レースを題材にしながらも、様々なカルチャーに挑戦する姿勢は認められるのだが、やっぱりただっ広い道をタンクローリー相手にド派手なカーアクションを繰り広げるようなものを、こっちは観たいんだよなぁと。まぁ、外国人を受け入れる姿勢が全く出来てない上に学食が懐石料理という、とんちんかんな学園描写が面白かったのが救いかと。これで、“箱乗りした芸者が三味線振り回しながら襲いかかって来る”みたいな、インパクト重視の描写があれば尚良かったんですが。
一事が万事、自業自得の主人公ショーンに扮したのは、『レギオン』『ジャーヘッド』のルーカス・ブラック。ワルでもなければ善でもなく、かと言ってなにか特別な魅力を持ってるわけでもない、別に何でもない主人公なので観ていて応援する気にもならず。強いて印象に残ったと言えば、あの強烈な残念胸毛かと。
その他、ロサンゼルスからブラジルに行って、ベルリン寄ってから東京に来たのであろうハンに扮した『ワイルド・スピード MAX』のサン・カン、『スターシップ・トゥルーパーズ2』のブライアン・ティー、いつの間にか英語名にJJが付いてた『魔界転生』の千葉真一らも出演。
また、中心グループに属しているにもかかわらず、まともなセリフも物語もない北川景子や、『チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル』のP!nkと同じ扱いの妻夫木聡、一瞬だけ出てくる真木よう子などの出演が日本的には話題の的なのかも知れないが、やっぱり注目は最後の最後に出てくるヴィン・ディーゼルかと。コメディが続いてた時期なせいか、若干ふやけ過ぎてて全くドミニクに見えないって難点はあるものの、作品が残念過ぎた事もあり全てをかっさらう存在感を。結局カメオが最後に全部持ってっちゃうんで、豪華なオマケにラムネが申し訳程度に付いた食玩みたいな映画になった感も。
それにしても、日本を舞台にした映画にもかかわらず、日本人役者の誰一人として物語の中心に絡んでいないのはやっぱり寂しいもんですよねぇ。
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