プロデューサーズ (The Producers)

監督　スーザン・ストローマン　主演　ネイサン・レイン
2005年　アメリカ映画　134分　ミュージカル　採点★★★

野球や格闘技などのスポーツにしろ、コンサートにしろ、生で見るのが一番面白い。テレビにはテレビの面白さはあるし、確かに野球やプロレスを見に行くと「あれ？これ、解説ついてねぇや」と思うこともあるが、振動する空気が肌に伝わる臨場感は生ならでは。逆に、映像としての見せ方を追求している映画などは、画面を通してみるのが一番だったりも。『スター・ウォーズ』とかを撮影現場でずっと見ててもなんのことだかサッパリでしょうし、ミュージカル版の『スカーフェイス』なんて……あ、コレはちょっと見たい。なにはともあれ、どんな素材にもその魅力を最大限に引き出す表現方法があるもので。手品をアニメで見ても、なんかアレですし。

【ストーリー】
落ち目のブロードウェイ・プロデューサー、マックスは、小心者の会計士レオが発見した“失敗作の方が儲かる”カラクリを基に、最悪の脚本、最悪の演出家、最悪のキャスティングでショーを製作するが…。



思わず歌って踊りだしてしまうほどの幸せを感じたことがない人生を送ってきたせいか、ミュージカルが大嫌いな私。いかに豪華であろうとステージ幅を基準とした画面構成には、“名探偵ポアロ”シリーズや“００７”シリーズで味わえるちょっとした世界旅行気分にも似た贅沢さは感じず、突如歌いだす登場人物に我慢できたとしても普段からナイン・インチ・ネイルズのような曲ばかり聞いている身には、「私は幸せよ〜♪あなたも幸せね〜♪さ〜みんなでグルグル回りましょ〜♪」みたいな高尚な楽曲が我慢できない。そんな私にも、大好きなミュージカルがあったりもする。『ロッキー・ホラー・ショー』『リトルショップ・オブ・ホラーズ』、しいてミュージカルに組み込むなら『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』『ブルース・ブラザース』なんかが、そう。見るからに変わり者のラインナップですが。
で、本作。メル・ブルックスのオリジナル版『プロデューサーズ』をブロードウェイ化したものを忠実に映画化。もちろんブロードウェイ版は見ていないので、どんなに忠実なのかは分かりませんが。『ヤング・フランケンシュタイン』はもちろんのこと、『新・サイコ』『サイレント・ムービー』『スペース・ボール』と大好きな作品ばかりのメル・ブルックス。『逆転人生』に到っては劇場で観てしまったのだが、どういうわけか『プロデューサーズ』だけは観た事がない。だって、近所のビデオ屋に置いてないんですもの。まぁ本作を観る限り、ユダヤ人ならではのナチスいじりをしているので、きっと面白いだろうと。
芸風を作りに作ったクドいキャラクター達が歌って踊る本作。やはりミュージカル慣れしていない身にはなかなか馴染まず、それこそ新喜劇を見ているかのような居心地の悪ささえ感じるのであるが、それも序盤のうちだけ。元々映画の枠組みを思う存分はみ出す遊びと楽しさに溢れたメル・ブルックス作品のミュージカルとの相性の良さと、ベースとなるストーリーが面白いせいもあるのだが、派手な歌と踊りに麻痺してしまったのか、９０分もすると「うわぁー！コレ、楽しいー!!」と。まぁ、残りは３０分しかないのですが。残念なのは、舞台独特の遊び心が溢れるものの、“ジャジャーン！”と緊迫感溢れる音楽が流れると隣をオーケストラ満載の車が横切ったり、ズームするカメラが窓を壊してしまい登場人物が驚くなどの、メル・ブルックス流映画的お遊びが乏しいこと。せっかく映画なのに。



「こんな人間になりたい！」と、自分の理想像ナンバー１の座に君臨し続けるフェリス・ビューラー。どんな状況でも最大限に楽しむ姿勢を崩すことのない姿に、何度励まされたことか。そんな人生のビタミン剤のような作品『フェリスはある朝突然に』のマシュー・ブロデリックだが、ちょっと見ないうちになんともまぁ。なまじ見た目が変わらないだけ、残酷なまでに年月を感じる結果に。作りに作った芸風と声色に、「これはフェリスなんかじゃない！きっと、リック・モラニスに違いない！」と現実逃避を。ユマ・サーマンはまぁ、相変らずもの凄く怖かったのです。
先に挙げた大好きなミュージカル作品群はどれも、ごっそりと歌と踊りを取り除いても大好きな“何か”が残る作品群。で、本作から歌と踊りをごっそりと取り除くと、そこに残るのがウィル・フェレル。ベットリと底の方にこびりついている。もう、フェレルの素晴らしさに尽きる。どんな場所もどんな服もどんな役も似合わない、フェレルの持ち味が存分に発揮されている。あまりにフェレルが素晴らしすぎるので、ジョン・ロヴィッツとそこしか覚えてません。
あ、主演のネイサン・レインのことを書くの忘れてました。えっと……なんか、眉毛が８時２０分でした。
肝心の主役の存在感をも吹き飛ばすフェレルの威力と、「出ないハズがない」と踏んでおきながら一向に登場する気配のなかった御大メル・ブルックスの元気な姿を最後の最後に拝めたので、採点甘めで。


フェレルを見ると、色んな意味でトリハダが立つ

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Comments

ＴＢありがとうございます。

私もどちらかといえば、
ミュージカルは苦手なほうですが、
この映画は文句なく面白かったです。

Posted by KGR at 2006年10月20日 19:56

ＴＢどうもありがとう(p≧∀≦q)〃
歌って笑って【ホットブラザーズ】のような映画でした(´∀｀*))ｧ'`,､

お嬢もミュージカル系の映画は苦手ですが
これに関しては何度も見たいと思いましたよ☆

Posted by お嬢 at 2006年10月20日 20:08

ＴＢありがとうございます。

この映画結構好きです・・。
ミュジカル好きだからかも
あのワザトラシサが良いのです。
それに、あのゲイ達者たちも・・・

Posted by スナッチャー at 2006年10月20日 20:23

>『ブルース・ブラザース』
音楽映画の中で、恐らくは１番好きじゃないかと･･･
ミュージカルとは違って、セリフは歌ってませんが(笑)

>ベットリと底の方にこびりついている
凄くイメージしやすい表現ですね(爆)
何がこびりついてるんだろうと見ていると、アメーバーのように動き出し、立体化し、歌い踊るフェレルが登場！！

Posted by 哀生龍 at 2006年10月20日 21:24

エンドロールまでウィル・フェレルでお腹一杯になりましたよねぇ本作（笑）。
　
楽曲が本当に素晴らしく、且つ言葉遊びの多さにニヤニヤもんでしたわ〜

Posted by USA-P at 2006年10月20日 22:22

KGR様こんばんは！
時間は掛かりましたが、面白かったは面白かったんですよ。
ただ、“映画”として考えると。。。

Posted by たお at 2006年10月21日 02:26

お嬢さまこんばんは！
私も何度でも観たいですよ！
フェレルんとこ！！

Posted by たお at 2006年10月21日 02:27

スナッチャー様こんばんは！
誤解されそうなんですが、ミュージカルとして観る分には面白いんですよ。舞台としては。
ただ、せっかく映画なのにって思いが。

Posted by たお at 2006年10月21日 02:28

哀生龍さまこんばんは〜♪
＞アメーバーのように動き出し、立体化し、歌い踊るフェレルが登場！！
うわぁぁぁぁ!!!
全身にさぶいぼ立つけど、堪らなくいいー！

Posted by たお at 2006年10月21日 02:30

USA-P様こんばんは〜♪
フェレルが最高！
先ほどUSA-P殿のレビュー拝見しましたが、そう！それ！それが言いたかったの！
せっかく映画なのに、映画ならではの楽しさがないの！

Posted by たお at 2006年10月21日 02:32

(^o^)コ(^-^)ン(^0^)バ(^-^)ン(^0^)ハ
TB有難うございました。

私もこの映画・・・実は前半で笑いすぎてしまいまして・・（たおさんとは反対ですね＾＾）
後半飽きちゃったのを覚えています。
笑う事が大好きな私ですが、無理にわらかそう　わらかそうとしている（？　そういう訳でもないのでしょうが）のが　段々
しらけてきちゃって・・・・でも　豪華で
本物のミュージカルは　田舎なのでそうそう観れないけど　この映画で堪能できました★
ところで　たおさんって男性なんですね〜〜〜＾＾　今、知りました。サイドバーで（笑）

Posted by とんちゃん at 2006年10月21日 03:25

こんばんは〜♪TB有難う御座いました♪
ワタクシ、ミュージカルは結構好きなはずなのにこの作品はも一つでした(^^ゞ
一体どこで笑って良いのやら・・・
劇中劇だけはすっごく良かったです^^

ではでは〜、これからもよろしくお願いします♪

Posted by Aki. at 2006年10月21日 03:56

TBありがとうございます。

ウィル・フェレルよかったですよね。ヒトラー役候補達を押しのけて自らがヒトラー役を獲得してしまうシーンがおかしかったです。

Posted by light-light at 2006年10月21日 07:42

こんにちは、jamsession123goです。
ブログにTBありがとうございました。
ミュージカル嫌いのjamsession123goが最後まで楽しく観れた映画です。
意外な面白さが混ざってる映画だと思いました。
ユマ・サーマンの背の高さにびっくりです。

Posted by jamsession123go at 2006年10月21日 08:53

たおさん　ＴＢとコメントありがとうございました！
実は私、これを観た後に、メル・ブルックスの監督したオリジナル版も観たのです。
大まかな流れは同じですが、メル流のウィットに富んだ作品でした。
こちらは、もう主役のお二人が芸達者なのに脱帽です！
もちろんＷ・フェレルも最高でした！

Posted by なぎさ at 2006年10月21日 16:14

とんちゃん様おはようございます！
もの凄く良く出来たミュージカルの舞台を観た気はするんですが、映画っぽくはなかったですねぇ＾＾；
そうでございます。
実は男です。隠してたわけではありませんがｗ

Posted by たお at 2006年10月22日 09:49

Aki.様おはようございます！
そうなんですよ・・・。
実際の舞台を固定カメラで見させられているかのような感じがしてしまって。
その反面、舞台と割り切っている分だけ途端に躍動感があふれ出す劇中劇が面白い結果に。

Posted by たお at 2006年10月22日 09:52

light-light様おはようございます！
よかったですねぇ、フェレル！
浮いているのか馴染んでいるのか全く判別不能な立ち位置がたまらなかったです！

Posted by たお at 2006年10月22日 09:53

jamsession123go様おはようございます！
私もミュージカルが大嫌いな割に、大好きなミュージカル作品もあるのですが、そのどれも歌や物語の面白さはもちろんのこと、映画ならではの遊び心や仕掛けに富んだ作品なんですよ。でもこれは、良い舞台を見た気にはなるのですが、映画とは・・・。

Posted by たお at 2006年10月22日 09:56

なぎさ様おはよーございます♪
メル・ブルックスの作品は是非観たいですね！
早速探し回ります。
フェレルが出てないのは気がかりですがｗ

Posted by たお at 2006年10月22日 10:08

たお様。フェレルの甲高い歌声が面白かったです。楽しそうに歌うゲイ達も。私の人生で真面目に観た数少ないミュージカルの一つでした。

Posted by Lance at 2006年10月22日 23:55

Lance様おはよーございます♪
フェレルの歌も、その内容も、その動きも、どこを取っても素晴らしすぎるフェレルでしたねぇ！

Posted by たお at 2006年10月23日 10:15

ＴＢありがとうございました。
ウィル・フェレルきもかったです。
でもキモくてもそれが彼のチャームポイントだと最近思えるようになりました（笑
そんな彼が最近好きです♪

Posted by ななな at 2006年10月23日 10:46

こんばんわ〜！
ミュージカルは私も苦手です。
でもフェレル版のミュージカル見たいですー！！！！
そっちのほうが私には笑えてしまいそうな
フェレル病です・・(；´∀｀)

Posted by PINOKIO at 2006年10月24日 00:55

ななな様こんばんは！
そうです！フェレルは気持ちが悪いのです！
ファンですら認める気持ち悪さですが、気持ち悪くなければ、フェレルは全く面白くありませんしｗ

Posted by たお at 2006年10月24日 01:24

PINOKIO様こんばんは〜♪
観たいですよねぇ。フェレルオンリーのミュージカル。フェレル出ずっぱりのミュージカル。観たいなぁ。。。

Posted by たお at 2006年10月24日 01:26

こんばんは＆遅れてすみません(^^);
>思わず歌って踊りだしてしまうほどの幸せを感じたことがない人生・・・
あっ！私もないな〜うっ，寂しい(^^);

>メル・ブルックス流映画的お遊びが乏しいこと。せっかく映画なのに。
まあ，監督が演劇畑の方のようなので，仕方が無いかもっ！

>ユマ・サーマンはまぁ、相変らずもの凄く怖かったのです。
苦手なタイプなのですねっ♪

Posted by しゅー at 2006年10月25日 01:28

たお様
albrechtです。
『ケーブルガイ』、『GO! GO! ガジェット』でしか見たことがないので、僕の中ではマシュー・ブロデリックは「のび太」です(笑)。
その「のび太」が、しずかちゃんをとび越し、身長6尺の金髪美女といっしょになっちゃったのが一番のオドロキ！　やっぱ、ドラえもん(ネイサン・レイン)に不可能はないですね！！(笑)

Posted by albrecht at 2006年10月25日 02:45

しゅー様こんばんは！
そうなんですよねぇ。監督が舞台屋なんで、映画と言うより舞台の映像なんですよね。なんか、ライヴビデオを観ている気さえ＾＾；
ユマですか？
すっごく怖いです。。。

Posted by たお at 2006年10月25日 23:27

albrecht様、こちらにもようこそ〜♪
『ケーブルガイ』も『ガジェット』も見てないんですが、のび太だったんだぁ。
眉毛が８時２０分のドラえもんも、なかなかやるなぁｗ

Posted by たお at 2006年10月25日 23:31

「カジャ」と言えば「グーグー」ですが「デヴィッド」と言えば「シルビアン」な八ちゃんです。いつもいつもありがとうございます。
実はPC壊れましてお返しが遅くなってしまいました。

ウィルはほんとうに凄い存在感です。こういうのでこそ本領発揮なのでしょう。メリンダはおとなしすぎるかな…？

Posted by 八ちゃん at 2006年10月27日 23:56

八ちゃん様こんばんは！
デヴィッドの裏ボスとしてシルヴィアンがいますよ、私にもｗ
未だに『シークレット・オブ・ビーハイヴ』と『ゴーン・トゥ・アース』は愛聴版ですし。
ウィルは野放しにすると大変危険な存在なのですが、野放しにしないと本領を発揮しない厄介な存在でもありますからｗ

Posted by たお at 2006年10月28日 02:21

マシュー・ブロデリックは私にとってもアイドルでした。
「フェリス」何回観たかわからない・・・。
すっかりトッチャン坊やですね（哀）
その彼の出世作舞台がこうして映画で観られるというだけでも
感涙モノでした。ちょっとハマりきれなかったとこも
あるんですけど、何度も観てたら快感になってくるかも。

Posted by kino at 2006年10月29日 00:50

kino様、こちらにもありがとうございます♪
私も“ブロデリック＝フェリス”なもんで、さっぱり入り込めないどころか、違和感アリアリで苦しみました。フェレルには随分と助けられましたが、本作を何度も観るくらいなら、フェリスを観続けていた方が＾＾；
知らないうちにフェリスのコレクターズエディションが出てましたねぇ。買い直さないと。。。

Posted by たお at 2006年10月30日 01:09

ミュージカルが苦手というか、嫌い、
という方、
結構多いですね〜。
メル・ブルックスは舞台メインの人ですし、キャスティングも舞台からそのまま持って来ていたようで、如何にも、でしたねぃ。
しかし、その「如何にも」さが、小生にはとっても楽しく、ユマ・サーマンすら気になりませんでした。（あ…ちょっと嘘です）

Posted by sheknows at 2007年01月10日 22:59

sheknows様こんばんは〜♪
んー、ミュージカルが苦手というか、舞台で観れば思う存分楽しむんでしょうけど、スクリーンや画面を通して観てしまうとやはり映画的遊びを期待しちゃうんですよねぇ・・・。メル・ブルックスの映画ならではのお遊びも皆無だったんで、どうにも＾＾；

Posted by たお at 2007年01月12日 19:34

実はメル・ブルックスの映画って見た事ないんですよ〜。
この映画を見た直後はよし観よう！
と意気込んでいたのですが、
すっかりその気持ちも萎えかけていたところ
たおさんの記事を読んでまた観よう！って
気持ちになりました〜。
面白そうですね！

Posted by miyu at 2008年05月05日 22:51

miyu様、こんばんは！
メル・ブルックスの作品は、いつ見ても好きなんで、興味があったら是非＾＾

Posted by たお at 2008年05月12日 02:36