2006年10月16日

ニューヨーク東8番街の奇跡 (Batteries Not Included)

監督 マシュー・ロビンス 主演 ジェシカ・タンディ
1987年 アメリカ映画 107分 ファンタジー 採点★★★★

奇跡ってのは、個人を名指しで訪れるんじゃないんだろうなと。「あなたにだけ奇跡を起こします!」ってわけじゃなく、なにかしらが起きた時に、それを見たりその場にいたりした人それぞれが自由に解釈をするんでしょうね。人によっては「奇跡だぁ!」ってなるでしょうし、人によっては「ただ空からなんか眩しく光ったヒゲの人が降りてきただけじゃん」って。

【ストーリー】
高層ビル建設の為に立ち退きを要求され、悪質な地上げ屋に悩まされる老夫婦とその同じアパートの住人の前に、ある日ちいさなちいさなUFOがやって来る。壊れた物を何でも直すそのちいさな訪問者の出現で、住人達の心は一つになり、そしてある一つの奇跡を目の当たりにする。

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スピルバーグは大好きな監督であるのだが、『E.T.』以降自身のダークサイドに封印をしたのか、製作のみに携わった作品を含め甘ったるいケーキにたっぷりと練乳をかけたかのような作品を連発。その『シンドラーのリスト』まで10年以上も続いた暗黒期には、なまじ大好きだったが故に反動による嫌悪感も強く、その時期のスピルバーグ作品のほとんどを観ないで過ごしておりました。本作はその暗黒期ど真ん中の時期の作品で、もちろんノーマーク。ところが、先日『レディー・イン・ザ・ウォーター』を鑑賞した際に、「前にもアパートに何か変なの来る映画あったなぁ」と思い出したついでに鑑賞してみたら、なかなか面白いじゃないですか。
都合のやたらと良い御伽噺の外観を持っているのだが、その甘ったるい上っ面の反面、扱う題材は“土地開発に伴う立ち退き”“痴呆症”“老々介護”と深刻なものばかり。現実問題の深刻さを伝えつつ夢物語へと誘うのが御伽噺の定型だとすれば、本作はまさに現代の御伽噺である。厳しい現実を正面から捉えつつも、その現実に妖精を模したのであろうUFOを入り込ませ、一時だけの現実逃避をさせてくれる本作は、非常に心地が良い。老優たちの妙演、はっきりと絵と分かる背景による絵本的美術、柔らかい色合いに、愛嬌のあるUFO。それらの全てが、手作り感覚溢れる暖かみをこの作品に与えている。

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この作品の暖かみは、『コクーン』で再び脚光を浴びたジェシカ・タンディとヒューム・クローニンの息の合った妙演によるものが大きい。おしどり夫婦としても有名だった二人の掛け合いと、その間の良さは絶品である。
しかし、この作品最大の魅力はやはり素晴らしいまでに愛らしいUFO達であろう。『未知との遭遇』の小型UFOをより機械的なデザインにしたUFO達は、『未知との遭遇』のそれは形を明確にせず光の点として妖精の神秘性や無邪気さを表現したのに対し、本作のUFOは表情を持つことでよりダイレクトに、よりコミカルに感情表現を見せてくれる。“修理が大好き”というよりは“壊れた物が大嫌い”という性格以外は、“なぜ?”“何をしに?”と来訪理由がさっぱり分からない彼らだが、その“理由の分からなさ”は都合のよさを強調する為というよりは、神秘性を持たせる意味合いが強いのであろう。また、ストップモーションを用いたのであろうその多彩な動きは、気持ち悪いくらい滑らかに動くCGでは味わいにくいコミカルさと見た目以上の表情を持ち、もの凄く可愛い。今観てもさほど遜色ない特殊効果のレベルの高さにも驚く。
ややぶっきらぼうな展開や、糖分過多な印象は拭えないものの、たまらなくUFO達が可愛いので★ひとつオマケ。

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“電池別売り”って原題は、ずいぶんと味気ない気もしますが

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posted by たお at 02:49 | Comment(8) | TrackBack(3) | 前にも観たアレ■な行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お邪魔します。
このミニ円盤は、かわいい存在ですね。
私、甘ったるいの大好きやから、見たら
結構、恥ずかし気もなく泣いてるときありますよ。
Posted by プチローズ at 2006年10月16日 15:39
あー、なつかしい!
私のビデオ鑑賞黎明期を思い出しました。
老人達とUFOという取り合わせや、とぼけた小悪党、そして表情豊かなさUFOにほんわかした記憶がよみがえりました。
甘ったるいの嫌いじゃないデス。
また、寄らせてください。
Posted by berabo at 2006年10月17日 00:37
プチローズ様こんばんは!
私はただ甘ったるいだけの映画はどうにも苦手なんですが、これは好きでしたねぇ。程よいホロ苦さもあって、なによりも可愛い!
Posted by たお at 2006年10月17日 02:44
berabo様こんばんは!
なつかしーでしょー^^
当時はさほど注目してた作品ではなかったものの、80年代映画の特徴を色々と兼ね備えた一本ですね。楽しめました!
是非また遊びに来てください♪
Posted by たお at 2006年10月17日 02:49
再びこんばんにゃーーーー♪
映画リストでコレを発見したのでTBしちゃおう(笑)
ほんわかほのぼのしました。
“土地開発に伴う立ち退き”“痴呆症”“老々介護”という絶望的ともいえる状況の中でまさに現代の御伽噺をみた気分です。
ちびちゃんたちがハンバーガーショップを手伝っているのはめっちゃラブリー♪
Posted by chibisaru at 2007年01月30日 22:58
chibisaru様、こちらにもどーもー♪
扱ってるのは深刻極まりない題材なんですが、だからこそ御伽噺として心地のいい時間を形成してましたよねぇ^^
家に一個欲しいですもんw
Posted by たお at 2007年02月01日 01:55
そっかぁ〜コレは暗黒期の作品だったのですね。
でも、今はハートウォーミング系って言っても
なんかテーマが重かったりしますからね。
軽い感じが良かったです。
スピルバーグもたまには低予算で映画を作ったらいいのにね。
Posted by miyu at 2008年06月07日 09:01
miyu様、こんにちは!
まぁ、最近のスピルバーグに“ハートウォーミング系”があるかどうかは別にして、本作はテーマの重い部分にも触れつつフンワリと仕上げてましたねぇ。
>スピルバーグもたまには低予算で映画を作ったらいいのにね
案外予算がかかってなかったりもしますよ、スピ映画。
Posted by たお at 2008年06月14日 16:10
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