2009年 イギリス映画 101分 サスペンス 採点★★★
“犯罪映画”って、計画の緻密さや犯行の手際良さ、追手をかいくぐる機転の良さなど、それ自体がメインのテーマじゃなくても、犯行がしっかり描かれていると俄然リアリティが生まれて面白くなるんですよねぇ。まぁだからこそ、その逆もあるんですが。
【ストーリー】
富豪の娘アリス・クリードを誘拐した、ヴィックとダニー。周到に練り上げられた計画に則りアリスをアパートの一室に監禁し、あとは身代金の受取りをするのみであった。しかし、首謀者のヴィックが知らない秘密を、アリスとダニーが抱えていて…。
『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』のジェマ・アータートン、『明日へのチケット』のマーティン・コムストン、『シャーロック・ホームズ』のエディ・マーサンの三人のみで繰り広げられる、『ディセント2』の脚本を手掛けたJ・ブレイクソンの長編初監督作となる愛憎と欲が入り乱れる犯罪サスペンス。直接的なネタバレは避ける方向で前向きに善処するつもりですが、きっとバレると思いますからおおらかな気持ちでお読み頂ければと。
アリス・クリードの“誘拐”ではなく、“失踪”ってとこがちょいと捻られてた本作。完璧に思えた計画が、誘拐犯と被害者の間に“悪女”ってのが紛れ込んでたおかげで散々な羽目になる様を、大きく物語を二転三転させながらスリリングに描き切っている。三人以外はエキストラも登場しない限定しまくった状況も、“愛と嘘”を描く上で功を奏していたとも。様々な感情と思惑が交差する物語を、上手く文章でまとめ上げたなぁって印象。“映像”ではなく、“文章”で。
この、“良く書けた脚本を丁寧に撮った”だけにも見える、この映画ならではの個性が見当たらないのが、本作の弱みかと。また、本作に仕込まれた仕掛けも、ビックリさせるのと物語を成立させるためでしかなく、整合性に乏しいのも難点。新人なら許されるが、ベテランだったら怒られるタイプのネタかと。
人間の愚かさに仄かなユーモアも感じさせる本作にはコーエン兄弟の影響も見え隠れするが、かと言って彼らほど人間を突き放す(若しくは見下す)わけでもなく、前後の印象を吹き飛ばすバランス度外視の強烈なショットがあるわけでもない。道を踏み外さないよう丁寧に慎重に撮った結果、灰汁を取り過ぎたスープのような風味のない作品に。意地悪な見方ではあるんですが、偏執的ですらあるほど緻密に誘拐準備を描いてた割に、最も難しい身代金受け渡しのシーンをスルーしてしまった様に、“犯罪を描くのがメインのテーマじゃない”から描かなかったのではなく、浮かばなかったから描けなかったようにも思えてくる。その辺を上手く誤魔化して逃げおおせたって感じ。
まぁ、体当たりの熱演の割には“被害者”の枠からはみ出れなかったジェマ・アータートンはさて置き、“ヤサ男/クズ男/淑女/悪女”をほんのちょっとのシフト変更で見事に表現しきったマーティン・コムストンと、愛に真っ直ぐな故に利用されてしまうエディ・マーサンの熱演が、本作を随分と締めてくれてたのかなぁと。
優位に立ってると思わせるのが悪女の技
↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
なるほどねえ。
それはそれですっきりとして、余計なもんがなくて潔きよかったかなあとも。
マーティン君にすっかりやられたおばさん的にはとっても面白かったです。
でも次回作で真価が問われそうですね、この監督さん。
作品がどーのこーのってよりは、最近の“新進気鋭”の作品が、あんまりにも無難にまとまってるなぁって感じが強くて。。。映画的に、イイ子ちゃんと言うか。