2012年01月08日

ステイク・ランド 戦いの旅路 (Stake Land)

監督 ジム・マイクル 主演 ニック・ダミチ
2010年 アメリカ映画 98分 ホラー 採点★★★★

“良いゾンビ映画”ってのは、当然のことながらゾンビ映画に何を求めるのかで違ってきますよねぇ。臓物ムシャムシャのスプラッター満載を求める方もいれば、昨今のアクション傾向が強い物を求める人も。私なんかは、臓物ムシャムシャも大事ですけど、やっぱりゾンビによって変わってしまった世界ってのをしっかり描いている作品が好きだったりも。

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【ストーリー】
ヴァンパイアによって崩壊してしまったアメリカ。その荒れ果てた土地を両親を失った少年マーティンは、“ミスター”と呼ばれる名も知らぬヴァンパイアハンターと共に新たな楽園と噂される“ニュー・エデン”を目指し旅をしていた。しかし、ニュー・エデンに到達するには、邪教集団によって占拠されている地域を通らねばならず…。

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監督ジム・マイクル、主演/脚本ニック・ダミチの『ネズミゾンビ』コンビによる、ヴァンパイアによって崩壊した世界を生き抜く人々の姿を描く、ホラー仕立てのロードムービー。
過激なアクションに走らず、過剰なゴア描写でお茶お濁すわけでもなく、しっかりと崩壊後の世界と人々の姿を描くことに注力した本作。障壁となる存在はヴァンパイアだが、そのお膳立ても世界観も完全にゾンビ映画。登場人物にとって最大の脅威となるのが、ヴァンパイアではなく、恐怖のあまり邪教に走り、神の名のもとに蛮行を繰り返す狂気に駆られた人間だという“わかってる”具合も嬉しい。
ホラー映画と言うよりは、旅を通して少年が一人の男に成長していくロードムービーの趣の方が強い本作。怪物と狂気に駆られた人間たちが跋扈する荒廃した世界を、利害が一致した理性を残す人間が寄り添い疑似家族を構成しながら旅を続けていく過程や、僅かながらも秩序を保ち、まるで西部開拓地のような町並みを復興させている描写も非常に面白い。この、他人に残る理性を描いたことが、劇中「食べ物がない!」「人が人を食ってる!」と良い話の聞かない“ニュー・エデン”に対しても、ほんのりと明るい希望を感じさせた結果に繋がったのではと。もちろん、一人の男に成長した少年の頼もしさも相まって。
確かにまぁ、“ミスター”がどうしてあんなに問答無用のカッコ良さを誇ってるのかとか、種の逆転になりそうなところを因縁話で済ませちゃったりと、詰めの甘さもないわけでもない。しかし、それらは作品を致命的につまらなくするものではない。そういった部分を穿り回すのもどうかと思いますし。チャカチャカとした小手先の編集やCGでお茶を濁さず、映画としてドッシリ重みのある画作りが成されているのも好ポイントで。

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マーティンの父親代わりの存在でもある“ミスター”に扮したのは、本作の脚本も手掛けているニック・ダミチ。ネイティブ・アメリカン色を強めたミッキー・ロークっぽい風貌が、西部劇の雰囲気もある本作に良くハマっている。寡黙で利己的で、“強さ”が前に出たキャラクターではあったが、その底に大きな優しさが見え隠れする書き込み方が素晴らしい。“息子”とは決して呼ばないが、成長したマーティンを見つめる複雑な感情が入り乱れたその眼差しは、間違いなく父親のもので。他の作品で見た覚えのない役者だが、ジョゼフ・ゴードン=レヴィットの新作アクションスリラー『プレミアム・ラッシュ』にも出ているようなので、この作品を観る楽しみが増えましたねぇ。
一方のマーティン役には、『ミスティック・リバー』でケヴィン・ベーコンの少年時代を演じたコナー・パオロ。エロトランプを見つけ表情に出さぬよう心の中で小躍りしたり、若い娘にすぐ目を奪われたりと、なんかもうとっても思春期な感じを好演。そのくせ、どんな状況においても泣きごとを言わないのは、ミスターの教育が行き届いてるってことかと。
その他、年齢を考えれば当たり前なのだが、あんまりに久しぶりだったのでその100%お婆さんっぷりに衝撃を受けた、『トップガン』のケリー・マクギリスや、なんか大物スクリームクイーンと化してきた『HATCHET After Days/ハチェット アフターデイズ』のダニエル・ハリスも出演。考えてみれば、ここ最近ダニエル・ハリスづいてるなぁと。
それにしても、ケリー・マクギリスとダニエル・ハリス。双方を初めて映画で観たのも共にほぼ30年前。まぁ、ダニエル・ハリスは子役だったってのもありますが、これだけ加齢の差が明確になっちゃうと、なんとも歳月ってのは残酷だなぁと。

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親離れより子離れの方が案外難しい

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posted by たお at 11:02 | Comment(2) | TrackBack(3) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
星四つ、イタダキましたーっ!

私は何の予備知識も無く、単に他に借りたDVDの宣伝観て
食いついちゃったんですが、これが思わぬ拾いモノ。
好きですねぇ。
やっぱりゾンビ映画といえども、きっちり人間が
描かれていないと、汚いだけで冴えない映画になりさがっちゃいますもんね。

それにしても、ケリー・マクギリス・・・・。
ゾンビ映画なのにちゃんとした女優さんだなー、?ん?どっかで観た事あるぞ?
と、気づくまでの時間差が。年月って惨い。
私もアンチエイジング励まなきゃと焦ったしだいです。
Posted by かえる星人 at 2012年01月08日 16:01
かえる星人さま、こんばんは!
新年早々良いネタをありがとーございます!
ゾンビ渦に苛まれる社会とそこで暮らす人の姿が描かれてこそ、“良いゾンビ映画”だと思ってるんで、なかなか満足できた作品でしたねぇ。
にしても、ケリー・マクギリス。年齢を考えれば仕方がないんですけど、やっぱり衝撃的でしたねぇ^^;
Posted by たお at 2012年01月09日 00:48
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