2011年 アメリカ/イギリス/ドイツ映画 111分 アクション 採点★★★
5年生になる娘が、MP3プレーヤーが欲しいと言い始めた。大いに偏った曲ばかり流れる我が家で育っただけに、きっとニック・カーショウやスネークマンショーでも聴きたいんだろうと思いきや、どうやら聴きたいのはAKBやらKARAやら我が家では名前すら出ない方々のようで。子供ってのは、自分の世界をしっかり持って成長するんですねぇ。お父さんは嬉しいんで、そのMP3プレーヤーにみっちみちとブラック・サバスを入れてやろうと思います。
【ストーリー】
元CIA工作員の父によって、幼い頃から戦闘テクニックを叩き込まれながらフィンランドの山奥でひっそりと暮らしていた少女ハンナ。16歳になったある日、彼女は父のもとを離れ知らない世界へ旅立つ事を決心する。そんなハンナに父は、外の世界では元同僚であるCIA捜査官マリッサに命を狙われること、そしてマリッサを殺さねば自らの命がないことを忠告するのだが…。
人間兵器として育てられた少女の過酷な戦いを描いた、『プライドと偏見』のジョー・ライトによる一風変わったアクション・サスペンス。
“一風変わった”としたのも、物語の起点も終点もフワっとした、アクション映画としての現実味にもキレ味にも著しく欠けた一本だから。本作を“アクション映画”としてのみ観るならば、「柄にもなくアクションなんて撮るから…」で済ませられちゃう作品でも。ただ、“森で育った少女が悪い魔女を倒す為に外の世界に旅立ち、様々な経験を経て森に戻る”という、グリム童話風アクションとしてはなかなか興味深い。人殺しが得意なラプンツェルみたいな。あるいは、童話風『炎の少女チャーリー』。
極寒の氷原から無機質な穴倉へと場面が写り、その穴倉を抜けると灼熱の砂漠が待っている幻想的な映像と展開も、童話としての面白さを加味している。まぁ、こっちはこっちでやっぱりフワっとしていて童話としての現実味も少なく、いずれにしろどっちつかずの印象は拭えないんですけど。映像特典として入っていた“森に帰る”別エンディングの方が、より童話としての締まりが生まれたのかなぁとも。ケミカル・ブラザーズによるサントラの、自己主張の強さも気になる所で。
ただまぁ、役者の魅力はとことん引き出されているし、なんと言っても変わり者の親であることを浮かれ気味に歌った、デヴィッド・ボウイの名親バカソング“クークス”も流れるので、評価は若干甘めに。
主人公のハンナに扮するのは、ジョー・ライトとは『つぐない』でも組んでいる『ラブリーボーン』のシアーシャ・ローナン。「あのファンタジー顔で人間兵器?」と不安もあったが、しっかりと身体を作り込んできた上に、物語自体がファンタジーだったので全く問題なし。浮世離れさえしているその透明感が見事にハマり、作り手すら彼女を撮るのに夢中って感じすら。生まれるのがもう数年早ければ、きっと『ロード・オブ・ザ・リング』に出てたんだろうなぁ、ってな浮世離れ感が素晴らしい。『ラブリーボーン』以降どう成長するのか心配だったのだが、大人一歩手前の脆い足場にギリギリ立っている雰囲気が保たれていたので、一安心。
一方、そんなハンナを追うCIA捜査官と言うか悪い魔女役には、これまた浮世離れ名役をやらせれば天下一品である『ロビン・フッド』のケイト・ブランシェット。グリム童話の魔女がスーツを着て現代にやって来たら、まさにこんな感じ。シアーシャ・ローナンと共にファンタジー顔なので、こっちの方が本当の親子に見えることも。
その他、“森の人”って朴訥さが似合っていた『スター・トレック』のエリック・バナや、魔女の手下の小鬼って感じだった『ワルキューレ』のトム・ホランダー、俗世間の代表として登場するには若干世間からズレてた『シックス・センス』のオリヴィア・ウィリアムズ、そして『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』のジェイソン・フレミングが久々の素顔での登場ってのがなんとも嬉しい、好キャスティングが魅力でもある一本で。
シアーシャ・ローナンをただひたすら愛でる作品になっちゃった感じも
↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
フィンランドの真っ白い雪で覆われた銀世界の中にいた方が、保護色となって見つからないに違いない。
そんな色白を通し越した透明感。
彼女を撮りたくて作った作品と言われても、納得です。
都会に出なければなお良かったのに・・・
>ジェイソン・フレミングが久々の素顔での登場ってのがなんとも嬉しい
そう言われて見ると、素顔が見られることが少な目のような・・・(苦笑)
彼目当てに見たので嬉しかったです!!
シアーシャちゃんのアクション楽しみにしてたのになんだかなーで終わってしまいました^^;
撮ってる内に物語なんてどうでも良くなってきて、ひたすらシアーシャを追いまわし始めたかのような作品でしたねぇ。まぁ、わからなくもないですが。
それにしても、最近のジェイソン・フレミングはメイクアップ俳優のようになってきましたねぇ。ボリス・カーロフにでもなりたいんですかねぇ?
まぁいろいろラプンツェルとは違うんですが、雰囲気的にはそうかなと^^;
今年も一つ、よろしくお願いします。
年末、一応主婦なんでいろいろと忙しくしておりまして、遅くなりました。
>人殺しが得意なラプンツェル
まさにそうですねええ。
ぴったり!なのですが、映画的には、壮大なる無駄でしたなあ。
誰か、この映画変だよ!って教えてあげないと。
ある種ありきたりのストーリーを、「オレ様がちょいと捻ったものにしてやるぜ!」的な頭でっかちさが目に余る作品でもありましたねぇ。そのくせ、シアーシャをカメラで追いまわすに終始する始末ですし^^;