2009年 中国/香港映画 139分 アクション 採点★★
冷戦の緊張の高まりと宇宙開発競争の激化が、人々の恐怖の対象を“空から来る何か”に向けさせ、それが50年代の宇宙人侵略映画大流行の背景にある事を例に挙げるまでもなく、映画が大衆娯楽であるだけに、その時々・地域の世論を敏感に反映させてるもんなんですよねぇ。そうすると、最近中国/香港で多く作られてる“辛亥革命映画”って、どんなニーズで作られてるんでしょうねぇ。

【ストーリー】
清朝末期の香港。王朝打倒に向けた武装蜂起への気運が高まる中、日本へ逃れていた孫文が香港へとやってくる。孫文を亡き者にしたい西太后が送り込んだ500人もの暗殺者から彼を守るため義士団が結成されるのだが…。

辛亥革命を間近に控えた香港を舞台に、革命運動に身を投じる者と周囲の者たちの姿を描いたアクション・ドラマ。監督は『アクシデンタル・スパイ』のテディ・チャン。
革命運動から息子を遠ざけたい父親と、その想いとは裏腹に革命運動に身を投じていく息子という親子の姿を中心に、己の理念や大切な人々の為に命を落としていく者たちの姿をエモーショナルに描いた本作。終盤に詰め込まれたアクションもかなりの迫力。ただまぁ、どうにもエモーショナル過ぎ。それぞれのキャラクターを描くドラマもアクションも、全てその人物の死をより一層悲しくするための前フリでしかなく、“結婚を間近に控えた若者”“禁じられた愛によって全てを失った男”“生き別れ娘に尊敬されたい父親”など、死んだら悲しい設定を施されたキャラが死んでいく様に盛り上げを頼り切ってしまっているこの手法は、やっぱり好みではない。「命を落としてでも!」という理念の力強さがもっと描かれてれば印象も変わったんでしょうが。
トップにキャスティングされながらも、扱いはスペシャルゲスト的だった『イップ・マン 葉問』のドニー・イェン。出番の少なさとあられもない最期が、なんとも残念。まぁ、レオン・ライや『インビジブル・ターゲット』のニコラス・ツェー、『エレクション』のレオン・カーフェイにエリック・ツァン、『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』のサイモン・ヤムなど、大作らしい顔ぶれは豪華でしたが。「あんなのが新しい母親でやって来たら革命運動どころじゃないでしょうに」と思っちゃった、『導火線 FLASH POINT』のファン・ビンビンも出てましたし。

こっから先はほとんど映画の内容と関係ないんですが、なんで今“辛亥革命”なのかがちょっと分からない。本作はもとより、『新少林寺/SHAOLIN』も『1911』も結構な大作ですし。
“過去の偉業によって今がある”的作品と考えてみると、君主制打倒から現在が線に繋がってるようには思えず。『イップ・マン 序章』もそうだったんですが、中華民国の樹立と崩壊、中華人民共和国に、本作の中心人物層である医師や知識人らが粛清の名の下大虐殺された文化大革命を経た、一党独裁の現在に至る“その後”が描かれないだけに、やっぱり線で繋がる感じがせず。
じゃぁ、“清王朝を中国共産党に見立てた大衆のガス抜き映画”なのかと言えば、そもそもそんな映画を自由に作らせる国とは思えず。本作で描かれる清王朝も、やたら暗殺者を送り込んでくる困りものとしては描かれているが、打倒すべき悪玉としてまでは悪行が描き込まれておらず、また革命で命を落とす者たちの姿も、うがった観方をすれば“変な思想に染まった挙句に死んで、身内が悲しい思いをする”と見えてしまう事も。まぁ、これが何かしらの意図を持った印象操作なのか、演出としての不手際なのか、アレコレ妥協した結果なのかはちょいと分かりませんが。
如何せん現地の事にも歴史にも疎いので、ここで挙げた疑問は知ってる人にとっては既に答えの出ている常識なんでしょうけど、ちょっと分からなかったのでダラダラ書いてみましたよって次第で。

死んだら悲しい
↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓


まあ、そんな小難しいことはあまり考えず、胡軍の眉なし、悪役ぶりを堪能しました。
「1911」よりは、ずっと見やすかったです。
「1911」は書けずに終わりそうです。
まぁ100年なんでしょうけど、描いてることと現代が繋がらないんで「だからなんだ?」って感じがしちゃうんですよねぇ^^;