ミッション：インポッシブル／ゴースト・プロトコル (Mission: Impossible - Ghost Protocol)

監督　ブラッド・バード　主演　トム・クルーズ
2011年　アメリカ映画　133分　アクション　採点★★★★★

筋力が物を言う力仕事だけならまだしも、頭脳勝負でさえ筋肉で何とかしてしまう“筋肉映画”。もちろんただのマッチョじゃそんな荒技は通用するわけもなく、スタローンやシュワルツェネッガーのような類稀なるキャラと、そのキャラを維持する為の努力を惜しまない役者にによってのみ成立。これって、“ハンサム映画”にも言えることだと思うんですよねぇ。ただの美形にゃ務まらない。



【ストーリー】
ロシアの中枢クレムリンでのミッション中に爆発事件に巻き込まれた、ハンサムスパイのイーサンとチーム・ハンサムの面々。彼らはその事件の濡れ衣を着せられ、政府からの支援も打ち切られてしまう。孤立無援となったイーサンらは、この事件の背後に核戦争によって理想郷を作りだそうとする謎のテロリスト“コバルト”が絡んでいる事を突き止め、核戦争の危機を防ぐためにドバイへと向かうのだが…。



トム・クルーズの虎の子シリーズ“ミッション：インポッシブル”の第4弾。これまでと違いナンバリングがされていないが、それは原点に立ち返ったリブートの意味合いが強いからなのではと。今回監督に抜擢されたのは、『アイアン・ジャイアント』『Ｍｒ．インクレディブル』のブラッド・バード。
『ミッション：インポッシブル』のブライアン・デ・パルマ、『Ｍ：Ｉ-２』のジョン・ウー、『Ｍ：ｉ：ＩＩＩ』で当初監督に予定されていたジョー・カーナハンと、絵作りにもストーリーテリングにも強烈な個性を発する監督を抜擢してきたトム・クルーズが今回抜擢したのが、実写劇映画初監督となるブラッド・バード。今回もまた予想外の所から引っ張ってきたなぁと当初驚いたものですが、観賞後にそれは私の浅はかさだったことを痛感。考えてみれば、今世紀最高のアニメ映画の一つだけではなく、最高のスパイ映画の一つでもあった『Ｍｒ．インクレディブル』を作り上げた監督である。言うなれば、テレンス・ヤングとルイス・ギルバートの遺伝子の良いトコだけを継承して今に生まれ落ちたような監督。逆に遅過ぎる抜擢だったのかと洒落たタイトルバックで気付き始め、王道を行くエンドクレジットの音楽で確信させられた人選で。



これは“スパイ映画”である。シタリ顔で言うまでもない至極当たり前の事なのだが、そんな当たり前のことに気付かされた本作。不可能とも思えるミッションを、人並み外れた洞察力と行動力、そして運と勘で解決していく様を描いている。“人並み外れた”とは言っても超人ではないので、とにかく必死。嫌なものを前にすれば、当然ボヤく。スパイ映画に欠かせない夢のようなガジェットも数多く登場するが、それらは何でも解決する万能マシーンなんかではなく、事態をより一層困難にするギミックとして使われているのも特徴的。いくら精密と言っても機械は機械なので故障もするし、全ての状況を想定しているわけでもないので、不便な時はとことん不便。「5秒後に消滅する」って言ったって、そうなるとも限らない。結局のところ、人力で何とかするしかない。やっぱり必死に。これが見事なサイクルを生みだしている。危機に次ぐ危機に手に汗握り、合間に挟まれるユーモアに息をつき、また危機に次ぐ危機。アクションも度肝を抜くスケールのでかいものから、痛みを共有するミニマムな物まで多種多様で全く飽きさせない。
往年のスパイ映画的雰囲気とデパルマジックの融合が、悪くはなかったが良くもなかった一作目を皮切りに、トムちんのプロモと化した二作目、シリーズの雰囲気だけをなぞった三作目と、試行錯誤と紆余曲折があった本シリーズだったが、“凄腕のスパイが世界を股に架け不可能なミッションを完了する。しかもハンサム”という、トム・クルーズが求めていた“ミッション：インポッシブル”が15年の歳月を経て遂に完成したと言っても過言ではない本作。当たり前のことをもう一度繰り返すが、本作は“スパイ映画”であり、“トム映画”であり、そして“ハンサム映画”である。トムちんのミッション、ひとまず完了。



ハンサム度合いを美形度合いのみと比例させてしまうと、トムちんがハンサムであることに異論を唱える方も多いかと思うのですが、そこに“ハンサムとは日々の努力によって生み出される説得力”を付け加えれば、トムちんは紛うこと無くハンサムである。ブライアン・フェリーがダンディに見えてしまうのも、この理論によると断言。先ごろ話題となった、トムちんがレースカーを運転したりヘリコプターを操縦する映像に、その真偽はさて置いても「トムちんならやり得るなぁ」と思わせたのも、ハンサムだから。“イケメン”なんて言葉で括るのは言語道断。イケメンはブルジュ・ハリファにぶら下がっても様にはならない。ハンサムはなるし、ぶら下がってナンボ。そのトムちんの理想像が集結したのが、本作のイーサン・ハントなのかと。もはや50歳にもなるので、さすがに体型はベテランプロレスラーみたいになってはきたが、その辺がまたイーサンの息切れ具合とマッチする等身大ハンサムを好演。
常々トム映画に対し“自意識過剰！”とか“トムだけ映画”的な批判を目にすることが多いんですが、「それがトム映画なのに何を言ってるんだろ？」と。泣きたければ涙泥棒の映画を観ればいいし、ひたすら派手なアクションが観たければマイケル・ベイを観れば良いように、ハンサムな自分に酔いしれるトムちんが観たければトム映画を観る。もう、そういうジャンル。そこへ批判を集中させるのって、蕎麦屋に行って「蕎麦ばっか！」と怒るようなものではと。



前作から描かれたチームプレーというものが、より濃密となった本作。その“チーム・ハンサム”の面々の筆頭は、前作から引き続き登場し、ボケ役を一手に担った『ホット・ファズ　俺たちスーパーポリスメン！』のサイモン・ペッグ。超メジャーの作品に出演しながらも、いつものサイモン・ペッグで居続けている姿を見ているだけでも嬉しい。その他にも、ジャンル的にはハル・ベリーに近いのだが、向こうが体温も体臭も感じないプラスチック的な雰囲気でそそられないのに対し、こっちはしっかりと“生”の魅力を醸し出していた『デジャヴ』のポーラ・パットンに、戦闘のプロを演じることが多いが、確かにそんな役柄が見事なまでにハマる『ザ・タウン』のジェレミー・レナーらがキャスティング。
また、私利私欲ではなく理念で動いているだけに性質が悪いテロリスト役に、『ミレニアム　ドラゴン・タトゥーの女』のミカエル・ニクヴィストや、「この子に命を狙われるのも悪くないかも」と一瞬頭をよぎるが、他の作品での顔を見ると一気に我に返る、化粧で大きく印象の変わる殺し屋役に『ロビン・フッド』のレア・セドゥー、ノンクレジットではあるが『グリーン・ホーネット』のトム・ウィルキンソンも出演。
あ、そうそう。隠し玉的な扱いなので名前は伏せておきますが、本シリーズには欠かせないアノ人と、イーサンには欠かせないアノ人も登場してるので、その辺は観賞時のお楽しみってことで。


お顔隠してハンサム隠さず

↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
　　　

　　　　　　　　

　　　　　　　　

Comments

面白かったですね〜
ホントに危機に次ぐ危機と合間に挟まれるユーモアに
飽きることなく、
「ハンサム映画」を堪能しました。
おっしゃるとおり、ハンサムとは日々の努力によって
産み出されているのだとすごい説得力でした！

いつもTBありがとうございます！

Posted by misachi68 at 2011年12月21日 07:58

misachi68様、こんにちは！
いやぁ、コレが本来あるべきミッション：インポッシブルなんだろうなぁと思わせられたハンサム映画でしたねぇ。見事！

Posted by たお at 2011年12月21日 09:25

こんにちは♪
ハンサムという文字が多い(笑)
しっかりハンサムな自分に酔いしれるトムちんを堪能いたしましたよ^^

Posted by yukarin at 2011年12月21日 14:44

yukarin様、こんにちは〜♪
やっぱりハンサム映画について書くと、ハンサムの文字が異様に増えますねぇｗ
しかもトムちんだし。

Posted by たお at 2011年12月21日 16:44

ＴＢ、ありがとうございます。

＞イケメンはブルジュ・ハリファにぶら下がっても様にはならない。ハンサムはなるし、ぶら下がってナンボ。

↑とってもよくわかります〜♪。
綺麗な男子がぶらさがっても絵面が美しいだけですもん。
うまれながらに持っている容姿に、積み重ねて確立してきたものが加わっているから、観ていてドキドキするし、魅力的☆。

ハンサムなトム君をチームメイトの活躍と共に堪能しました〜(^^)。

Posted by みぃみ at 2011年12月21日 17:03

TBありがとうございました。ワルキューレのレッドカーペットで、初めて生トム見ましたが、映画で見るよりきれいな顔立ちでびっくりしました。「インタビュー・ウイズ・バンパイア」の白塗りできれいだったのは、もとの顔立ちがいいからなのだと思いました。
今回はトムの舞台挨拶のあとの鑑賞だったので、テンション上がりました。

Posted by 風子 at 2011年12月22日 11:46

みぃみ様、こんにちは！
絵面が美しくなるならまだしも、「綺麗な顔して何やってんの？」とアホみたいに見える可能性もあるから要注意。何をやっても様になる、様にしてしまうのがハンサムの力なんだろうなぁと。

Posted by たお at 2011年12月23日 08:26

風子さま、こんにちは！
生トムちんは見た事がないので羨ましい限りでねぇ。
やっぱり、元々顔立ちの整った人が努力に努力を重ねないと“ザ・ハンサム”にはなれないんでしょうねぇ。

Posted by たお at 2011年12月23日 08:29

そう。筋肉バトルだったりする
実はガチバトルなのって
あーらトム大好きな方達は
イケメンなガチバトルとあれば
萌えたんだぅな〜なんて
＼(･_＼)ソノハナシハ (／_･)／コッチニオイトイテ
私にゃツラ構えは無関係
サイモン・ペッグ♪むっふっふ。
視覚・聴覚にびしばしっと来る監督
イマジネイション湧くし
ドラマの「スパイ大作戦」に戻りつつ
ってのも今回は楽しめたわ♪
　え?!ブライアン・フェリー　
jazzピアノを弾く私は彼のこと
好きなんだ〜〜〜♪♪

Posted by q 　３匹の愛猫達とともに at 2011年12月23日 22:28

ｑ様、こんにちはー！
トムちんの思い切りの良さというかプロ根性ってのは、結構好きなんですよねぇ。
にしてもコレ、ブラッド・バードらしい見せ場の畳みかけっぷりとスパイ風味のこだわりが見事だったなぁと。
で、ブライアン・フェリー。
自身と努力で完全武装ダンディとなった代表格として、ロキシー時代から好きな一人で＾＾

Posted by たお at 2011年12月24日 13:29

＞トム・クルーズが求めていた“ミッション：インポッシブル”が15年の歳月を経て遂に完成した
ですねえ。
きっとトムちンは、こういうのを作りたかったんだよ！と。
今回ばかりは、しっかりどや顔をなされても、わかる！わかると言いたい。

Posted by sakurai at 2011年12月27日 20:17

sakurai様、こんにちは！
「こーゆーのがやりたかったんです！それも含めてボクを観てください！」
「ハイ！わかりました！」
そんな掛け合いで成立する、見事なトム映画だったなぁと。

Posted by たお at 2011年12月28日 11:45

>“人並み外れた”とは言っても超人ではないので、とにかく必死。
とにかくこの部分が、カッコ良くて楽しくて笑わえて・・・

>イーサンの息切れ具合とマッチする等身大ハンサムを好演
イーサンと言うキャラも歳食った分、エリートエージェントであっても体力的にきつそうだったのが、自然な感じで良かったです。

>チームプレー
今回のチームもまた個性が強くて、かなり笑わせてもらいました！

Posted by 哀生龍 at 2011年12月29日 16:28

哀生龍さま、こんにちは〜♪
前回のチームハンサムは、作り手の裏事情が絡んでしまったかのような感じでしたが、今回はチームとして随分とまとまってた感じも。トムちんが一歩下がったわけでももちろんなく、単にチームの個性が良い意味で強かったんでしょうねぇ。

Posted by たお at 2011年12月31日 10:48

先日はコメントありがとうございました。

今作は最高のトム映画でありスパイアクション映画でしたね！
もうサイコー！　
トムファンでないワタシでもうれしくなってしまう「トム様フィーバー」で、これでもかこれでもかと見せてくる感じがたまりませんでした。

個人的に「Mr.インクレディブル」はとてもおもしろい作品だと思っているのですが、周りにあまり見ている人がいなくて共有することができなかったので、監督がこういう形で日の目を見るのもうれしかったです。
この人が撮った「Mr.インクレディブル」がおもしろくないわけないだろ！　と言って友人に無理やり勧めています（笑）

Posted by 小野 at 2012年01月11日 16:00

小野さま、こんばんは！
インクレディブルはあらゆる意味で傑作ですし、アイアン・ジャイアントも傑作なんですが、一般的になぜか受けてない作品でもあるんですよねぇ。インクレディブルと一緒に、アイアン・ジャイアントの布教活動の方も宜しくお願いいたします！

Posted by たお at 2012年01月14日 00:48

まったくもってハンサムトムちん最高ーー！！な映画でした。
ニワカだけどあっという間にイーサンハントのファンに・・・
笑えるシーンが多かったのもツボです。

そうそう、夢のようなスパイ道具もそれぞれおもしろいんだけど
万能ではなくてちょいちょい不具合あるのが絶妙でしたねー

Posted by kenko at 2012年01月22日 00:57

kenko様、こんにちは〜♪
初めて観る人にもその魅力が伝わる、見事な作りだったってことですよねぇ。ハンサムファンタジーの様に思えて、ハンサムも夢の秘密兵器も万能じゃないってとこもツボで＾＾

Posted by たお at 2012年01月23日 10:50

もう、トムは　”ハンサム映画”　という新たなジャンルを確立した、といっても過言ではないくらいハンサムを極めましたね〜（笑）シリーズ中でも一番面白くて、いつになく必死なイーサンが新鮮で、人間らしい彼の姿に今までになく親近感を感じました〜^^

Posted by りら at 2012年02月09日 20:45

りら様、こんにちは〜♪
もう、トムちんはこれを作りたかったが為に、今までアレコレ試行錯誤を繰り返してきたに違いないと思わせられた、ハンサムスパイ映画の最終形でしたねぇ。

Posted by たお at 2012年02月10日 10:55