2006年09月16日

バーディ (Birdy)

監督 アラン・パーカー 主演 マシュー・モディーン
1984年 アメリカ映画 120分 ドラマ 採点★★★★

たまに空を飛ぶ夢を見ます。と言っても別に大空を自由に飛び回る夢ってわけじゃなく、シャツの裾が着くくらい地表スレスレの所を力を踏ん張って辛うじて浮いているだけなんですが。ちょっと気を抜くとすぐ顔から地面に着いちゃうので、「あー、もう!」ってイライラしてる夢です。自由もへったくれもない夢ですねぇ。別に飛んでいる夢じゃなくても、空港や駅が舞台の夢はよく見ますが。なんですかね。なんか逃げ出したいんですかねぇ。

【ストーリー】
イタリア系の貧しい家庭で育つ不良少年のアルは、ある日鳥に特別な感情を抱き、自ら鳥になることを夢見るバーディに出会う。正反対の性格ながらも交流を深めるアルとバーディだった。そしてベトナム戦争が勃発。顔に深い傷を負ったアルは、戦争の恐怖から言葉を失い心を閉じてしまったバーディと再会する。

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心の自由と反戦の思いを込めて脂の乗りきっていた時期のアラン・パーカーが送る、80年代を代表する一本。一見タイプは違うが、大人や社会に反抗しながらもそのしがらみから脱することの出来ないアルが、社会はおろか人間という自分自身の不自由さから、自由の象徴としての“鳥”と同化し逃れようとあがくバーディに対し、一種の憧れにも似た感情を持ち交流を深める様を丹念に描いている。彼らは共に“檻”に閉じ込められた存在でもある。アルにとってそれは暴力的な父親のいる家庭であり、嘘をつき彼を傷つける大人達のいる社会であり、階級が物を言う軍であり、恐怖から逃れることの出来ない戦場である。そしてバーディにとっては、どこへも自由に飛び立つことの出来ない人間の肉体自体が強固な檻として彼を苦しめる。彼らは“嘘”にも苦しめられる。親の嘘、世間の嘘、そして戦争という名の国家の嘘に。それらの嘘は、アルの反抗心を削ぎ、バーディを逃れようとしていた肉体の檻へ、自ら閉じこもらせてしまうのだ。アラン・パーカーは、社会に打ちのめさせられ夢も希望も失っていく青年達の姿を、その心の微細な変化も含め非常に丹念に描くが、決して後ろ向きではなく、非常に前向きに描き観客に提示している。彼らの友情が育まれる青年時代、バーディの心が肉体を離れ貧しいフィラデルフィアの街を自由に飛び回るシーン。それらのシーンの全てが、厳しい現実とは裏腹に非常に瑞々しく躍動感に溢れている。監督の希望に溢れる視線は、その素晴らしすぎるエンディングにも明らかである。
音楽の造詣も深く、その使い方にも定評のあるアラン・パーカーだが、本作では音楽にピーター・ガブリエルを起用。アルバム“V”と“W”から中心に選別された楽曲を新たにインストゥルメンタル化しているのだが、出来合いの安っぽさは全く感じず、彼独特のメロディラインが見事なまでに作品を彩っている。特に“V”に収められている『Not One Of Us』が高らかに鳴り響くバーディの飛翔シーンは絶品だ。

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いつの間にか「あががががが!」と叫ぶのが芸風になってしまったニコラス・ケイジ。不自然な髪型でブラッカイマー作品に出始める以前の、まだ“演技派”だった頃のニコケイを堪能できる一本。見事なまでにそこらのチンピラ然とした佇まいから、心の底から振り絞るかのような叫びまでのニコケイ三昧。「そー言えば、ニコケイってこうだったなぁ」と再確認。顔半分しか出してないんだけど。
前へ前へと出てくるニコケイにスッポリ隠れてしまうが、バーディ演じるマシュー・モディーンの鳥少年っぷりも見事なもの。鳥のヒナのような見てくれだけではなく、鳥以外には見事なまでに上の空なアレな人を好演。そんなモディーンも間もなく50歳。『トランスポーター2』でも全く変わってなかったモディーンは未だにバーディのイメージが強いのか、先日もTVで鳥をいじってましたよ。“鳥を飼ってそうな芸能人”というアンケートをすれば、一位に選ばれちゃうんでしょうねぇ。

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片や喋らず片や顔見せず。でも名演。

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posted by たお at 20:06 | Comment(0) | TrackBack(1) | 前にも観たアレ■は行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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バーディ
Excerpt: 「バーディ」を観た。 繊細な心を持つバーディは、ベトナム戦争により精神を蝕まれてしまう。彼の心に去来するものは幼い頃に夢見た「鳥になって、自由に空を飛び回りたい」という思いだけ。同じく戦争により..
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Tracked: 2006-09-18 02:05