メカニック (The Mechanic)

監督　サイモン・ウェスト　主演　ジェイソン・ステイサム
2011年　アメリカ映画　93分　アクション　採点★★★

若い人間が入ってくると、雑多な仕事は教えるが、自分にしか出来ない仕事を必ず一つは残してそれは絶対に教えない、妙な縄張り意識みたいなのを持ってる人っていますよねぇ。難易度も重要度も高い仕事ならまだしも、数日あればマスター出来そうな仕事であっても教えない。「へへん。この仕事はオレにしか出来ない！オレは頼られてる！」って思い込みたいんでしょうけど、頼られる人って手の内を全部晒しても頼られるんですけどねぇ。



【ストーリー】
殺しの痕跡を残さずターゲットを確実に消す正確無比な仕事振りから、“メカニック”と呼ばれる殺し屋アーサー。ある日彼が受けた新たな依頼は、唯一の親友であるハリーの暗殺であった。余計な私情を挟まず完璧な仕事でハリーを暗殺したアーサーだったが、ひょんな事から父親を殺した犯人に復讐心を燃やすハリーの息子スティーブと再会し、彼の願いで助手として殺しのノウハウを叩き込んでいくのだが…。



チャールズ・ブロンソンとジャン＝マイケル・ヴィンセントの共演で1972年に製作された同名作品を、『ストレンジャー・コール』のサイモン・ウェストがリメイクした犯罪アクション。オリジナルは子供の頃に観たっきりなので、もちろんうろ覚え。
非情な世界に生きる殺し屋の姿を、70年代風のハードなタッチで描いた本作。プロならではの緻密で沈着冷静な仕事振りと、クライマックスに訪れるド派手なアクションの両方を楽しめるお得な一本に。ただ、いずれ自分を殺すであろう若者を教育する主人公と、知らないとはいえ親の仇に殺しのテクニックを教わる若者という、いくらでもサスペンスが盛り上がりそうなテーマなのに、主人公が情の及ぶ範囲をキッチリと線引きしてるせいかその辺のドラマはサッパリ描かれず、“バレる／バレない”のスリルも、「フハハハハ！貴様の親の仇はワシじゃぁ！」って衝撃的な展開もない、淡々とアクションを積み重ねていく内になし崩し的に決着してしまう、この台無し感はハンパなし。まぁ、オリジナルのダメな部分だけは忠実にリメイクをしてしまうサイモン・ウェストなので、そうなるのも仕方なしかと。
じゃぁつまらない作品になってるかと言えば、もちろんそんな事はなし。見事な格闘アクションを見せたり、何気に100メートルの高さから飛び降りたりと、身体を張ったステイサム仕事を存分に見せてくれる、いつものステイサム映画として満足できる一本に。そもそも、こっちはジェイソン・ステイサムがカッコ良く見えるステイサム映画を観たくて手に取ってるんであって、薄汚いハゲにしか見えないような作品には用は無し。よって、ステイサム映画としては及第点。合格！



ラストの用意周到さはほとんどサイキックの域に達していたアーサーに扮したのは、『ロシアン・ルーレット』『デス・レース』のジェイソン・ステイサム。元々はシルヴェスター・スタローン主演で噂されてた本作だが、スタローンの場合だと人情味が全面的に出てしまうので、ドライの中に程良く情を見せる役柄がハマるジェイソン・ステイサムでピッタリだったかと。
一方のスティーブに扮したのは、こちらは企画の段階から早々と候補に挙がっていた『パンドラム』『３０デイズ・ナイト』のベン・フォスター。一途過ぎる故に感情のベクトルが多少間違った方向へと向いてしまうキャラに扮すると切なさが倍増する役者だけに、父親からの愛を強く求める一方でその父親からの寵愛は認めようとしない、強い愛憎入り混じるスティーブを好演。ゲイの殺し屋を誘惑するシーンで垣間見せる“それっぽさ”など、繊細で器用な表現力も見事。
その他、漂々とした存在感と色気が相変わらずだった『ロード・オブ・ウォー』のドナルド・サザーランドや、『カフス！』のトニー・ゴールドウィンらも出演。どっかにこっそりジャン＝マイケル・ヴィンセントでも紛れ込んでれば嬉しかったんですが、それは叶わず。波止場の老人役とか似合いそうなのに。


共に“備えあれば憂いなし”ってのを教えず

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Comments

こんにちは♪

ええええ、この役、最初はスタローンに来てたんですか！？
それはさすがに無理ありすぎなような…

ステイサム兄貴のハゲでも格好いいところやハゲでもアクションのキレがよく決まってるところがやっぱり好きなので、

＞こっちはジェイソン・ステイサムがカッコ良く見えるステイサム映画を観たくて手に取ってる

結局↑こういう事なんですよね♪

Posted by maki at 2011年11月23日 16:05

>スタローンの場合だと人情味が全面的に出てしまうので
もしかして、チャールズ・ブロンソンのような暑苦しさ（良い意味です）を求めて？
でもスタローンだと、泥臭くなり過ぎそう・・・

>こっちはジェイソン・ステイサムがカッコ良く見えるステイサム映画を観たくて
そうそう、結局ここに行き着く（笑）
いつも通りで安心。悪く言えば新鮮味がちょっと足りませんが、いつも通りのステイサムが見たい自分を否定できません。

>繊細で器用な表現力も見事
ベン・フォスターは誰と組んでも上手さと存在感を見せてくれるのに、主役を食い過ぎないところがいいですね。

Posted by 哀生龍 at 2011年11月23日 18:00

こんにちは♪
立派なステイサム映画でしたね。
ハマってました〜かっこいい。
スタローンじゃなくて良かった〜。

Posted by yukarin at 2011年11月24日 12:55

maki様、こんにちは！
当初はスタローン主演で『狼よさらば』をリメイクするって話が出てきて、いつの間にやらそれが『メカニック』のリメイク話へと移り変わって、忘れた頃にこれが出たって感じでしたねぇ。
なんだかんだ言って、初代イケてるハゲ王ジェイソン・ステイサムが丁度良くハマる作品になってたんで、一安心と。

Posted by たお at 2011年11月25日 06:37

哀生龍さま、こんにちは〜♪
『暗殺者』ってのもありましたが、基本的にスタローンには冷静沈着な殺し屋役は似合わないんですよねぇ＾＾；
ジェイソン・ステイサムは、もう既に“ステイサム仕事”とか“ステイサム映画”ってジャンルを確立してるんで、いつも通りの映画で充分満足です！

Posted by たお at 2011年11月25日 06:54

yukarin様、こんにちは〜♪
スタローン好きとしてはスタローン版も観たいんですが、きっと終盤に10分位の説教シーンがあるんだろうなぁｗ

Posted by たお at 2011年11月25日 07:00

>終盤に10分位の説教シーンがある
思わず笑ってしまいました。

「キラー・エリート」は公開されるでしょうか。
「セーフ」も期待しているんですが。

Posted by KGR at 2011年11月26日 16:34

はじめまして。
訪問＆TBありがとうございます。
突然のことで戸惑っております…。
ツッコミどころ満載の仕事っぷりは置いといて（笑）、ベン・フォスターがいい味でした。
TBさせてくださいね。

Posted by すぷーきー at 2011年11月27日 00:11

こういう事があったら面白いと思う事。

プロデューサー「スタローンくん、ステイサムくん、まずはこの長髪ヅラと髭を付けてくれ。そうそう、ブロンソンのリメイクだからね。そしてヒゲダンスを踊ってくれ」
踊る二人
プロデューサー「（スタローンに）君、音感ないから帰っていいよ」
ステイサム「いったい、これは？」
プロデューサー「メカニックを演じるからには完璧でないとね。君のハゲは完璧だからヅラ取っていいよ」

Posted by ふじき７８ at 2011年11月27日 08:44

冒頭、ハリーの話しで、スティーブは劇場型の考え無し君なイメージをがっつりうけつけられましたので、いつアーサーとスティーブ間に火が点くのかドキドキしながら観ていました。
バレる前とバレた後のスティーブとアーサー各々の互いを見つめる視線が何とも印象的でした。
仕事人ステイサム！とってもかっこよかったので、私、スタローンじゃなくて正解だったと思います♪。

Posted by みぃみ at 2011年11月28日 09:33

すみませんm(_ _)m。
劇場型ではなく、激情型です。
申し訳ありません。

Posted by みぃみ at 2011年11月28日 09:34

KGR様、こんにちは！
若い世代に向けた熱い思いをぶつけてくれてるとは思うんですが、この作品ではいらないですねぇｗ
『セーフ』は、元凄腕エージェントのステイサムがさらわれた中国娘を助けに行くと、ロシアンマフィアが出てきてテンヤワンヤと、非常に面白そうなプロットなんですが、下手をするとセガール映画になってしまう危険性も＾＾；

Posted by たお at 2011年11月29日 07:32

すぷーきー様、初めまして！
ベン・フォスターは、ホントイイ味を出す役者ですよねぇ♪

Posted by たお at 2011年11月29日 07:46

ふじき７８様、こんにちは！
いつの間にやら“完璧なハゲ”という地位に昇りつめましたねぇ、ステイサム。私の世代だと、エド・ハリスあたりが完璧なんですが。

Posted by たお at 2011年11月29日 07:57

みぃみ様、こんにちは！
まぁ、スティーブがあのまま一人立ち出来たとしても、あの性格じゃ長生きは出来そうにないですねぇ。腕は良いけど＾＾；
あ、変換ミスはお気になさらず。私なんざ、変換候補のどれが正しいのかわからなくなることままありますしｗ

Posted by たお at 2011年11月29日 08:13