2010年 アメリカ映画 105分 サスペンス 採点★★★
然程銃器に詳しいわけじゃないんですが、あまり見た事のない銃が出てきたり、銃を撃つひとつひとつの動作を丁寧に撮ってる作品なんかを観ると、なんか“ちゃんとした映画”って感じがしますよねぇ。まぁ、一時ベレッタ乱射映画ばっかり観させられてたから、特にそう思うのかも知れませんけど。
【ストーリー】
闇の社会に身を置くジャックは、スウェーデンで女性と一緒の所を突如何者かに襲われるが、敵を返り討ちにし、女性も殺してしまう。身の危険を感じたジャックはイタリアの田舎町に身を潜めるが、程なく組織から狙撃銃の製作を依頼される。この仕事を最後に引退を決意したジャックであったが…。
最近のジョージ・クルーニー映画っていえば、自身の映画体験を再現するかのような作品が多いのだが、今回もアートワークやワルサーPPKを愛用する主人公などからも分かるように、とっても60年代っぽいサスペンス・アクションに仕上がってた一本。それもなんか、イタリアから来たっぽい奴。
冷酷な判断も冷静に下せる闇社会のプロが、自身の老いと潜伏先の住人たちとの触れ合いから闇稼業から足を洗おうとする様を描いた本作。主人公のストイックさ同様に言葉少ない作品ではあるが、知らず知らずの内に人との触れ合いや安息の地を求めてしまっている主人公の心情は、充分過ぎるほど伝わってくるし、伝わってくるからこそ主人公が求める最も美しい光景で幕を下ろすエンディングにも、非常に良い余韻を残している。また、アクションを派手でスタイリッシュには描かず、どこかバタバタした雰囲気を出しているのも、どこか生々しさがあって良い。狙撃銃のサプレッサーをそこらの部品から作り上げていく様や、銃の性能についての会話など、“プロの仕事”を楽しめる描写が多いのも嬉しい。
ただ、いささか雰囲気で乗り切ろうとしてしまっている感も否めず。この手の作品を慣れ親しんだ世代が「そうそう!こんな感じ!」と楽しむ分にはそれでも良いのかも知れないが、そこで留まってしまうのは題材的にもキャスティング的にももったいないなぁと。また、ジョージ・クルーニーの横顔にビシリとクレジットが被さるオープニングがすこぶるカッコ良かっただけに、それと対になるエンドクレジットにも何かひと手間欲しかったなぁとも。
主人公のジャックに扮したのは、本作の製作も兼ねた『ヤギと男と男と壁と』『オーシャンズ13』のジョージ・クルーニー。他人より体温が2〜3度高そうな彼だけに、冷静で冷酷な殺し屋役がハマるのか不安だったのだが、請け負った殺しを遂行するシーンは無く、基本的には銃をせっせと作る職人的側面がクロースアップされていたので、なんか指が太そうなイメージのあるジョージ・クルーニーであっても違和感のないキャスティング。無条件にモテてる様も、非常に彼らしい。
その他、ずけずけと他人のテリトリーに入ってくる上に妙に勘が良い、個人的には最も苦手なタイプの神父役にパオロ・ボナチェッリ、ジャックが心を許す売春婦クララ役に、なんか怪獣っぽい名前のヴィオランテ・プラシド、もうちょっと悪女的な抗い難い魅力があればもっと作品が締まったであろうマチルデ役にテクラ・ルーテンがキャスティング。
全然余談なんですが、あれだけ小さな町だとクララの仕事の事は皆知ってるんだろうから、ジャックと二人で食事をしている姿を見た住人らは、「イッヒッヒ。アイツ、良いカモ見つけたんだなぁ」とか噂話に花を咲かせてたんだろうなぁと、田舎町の嫌な部分を想像しちゃったりも。もちろん直接そんなことは描いてないんですが、そう想像出来ちゃうからこそ裏稼業の人間の悲哀と、そこから抜け出す難しさがほんのちょっとのスパイスみたいな感じで効いていたのかなぁと。
人それぞれの天国
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作品自体は薄めですけど、クルーニーは濃いです。
一番上の画像のように銃を構えるジョージ・クルーニーは素敵なんですが、残念ながら私にはいまひとつでした〜残念。
色男バージョンのクルーニーがビシーっとキメるような作品に思えて、案外そうではなかったりしますからねぇ。