2002年 オーストラリア映画 105分 ドラマ 採点★★★★
第二次セックス・ピストルズブームが吹き荒れていた高校時代。学校内で次々とバンドが結成されていく中、友人に誘われ私もバンドを組むことに。くじ引きの結果ベースに決定。「パンクがどうのこうの」「ロックがどうのこうの」とメンバー達は熱く語っていたが、私が参加した理由はいたってシンプル。「モテるかも」、ただそれだけ。男子校だったんですもの。著しく不純な動機ではあったけど、カビ臭いスタジオでの練習は刺激的で、観客を前にステージで演奏する快感はそれこそセックス以上で、みるみる音楽に溺れていったのも事実。あれから何十年と経ち、友人達が次々と音楽から離れていく中、未だに音楽を続けている私。不純な動機ってのも、なかなか捨てたもんじゃないですねぇ。モテたかどうかは別にして。
【ストーリー】
ロックスターを夢見るも全く芽が出ず冴えない日々を送るフレディは、ある日、ギタリストのジョーの彼女とキスをしてしまう。それをきっかけに、ベーシストで恋人のターニャとの仲もギクシャクし、バンド内で恋愛絡みの問題が続発してしまう。
長年バンドをやってきた中で得た一番の教訓。
“バンド内に女は連れ込まない”
男女混成バンドが陥りがちな問題なのだが、男だけで組んでいても安心は出来ませんよ。メンバーが彼女をスタジオに連れて来ちゃったり、ファンの娘を入れちゃったりすると、あっという間に人間関係が複雑化する危険性がありますから。バンドが解散する理由って、“方向性の違い”とかなんとか立派な御託を並べちゃったりしますけど、実のところ女性問題が一番だったりしますから。もちろん根っから真面目な私は、そんな問題を起こしたことなどありませんが。「2秒でバレる嘘をつかない」って誕生日に誓ったばかりでしたが、早速破ってしまいました。ゴメンなさい。
で、この『クロウ/飛翔伝説』や『ダークシティ』で知られるアレックス・プロヤスによる本作は、主人公達のミュージシャンとしての姿や音楽というものをそっちのけで、青々しくし痛々しいまでに恋愛問題に翻弄される若者の姿を追い続けている。短絡的で自己満足的なロマンチックな行動を取ってしまう主人公達は、夢見がちな若者に非常にありがちでリアル。観ているこっちまで余計なことを思い出して大声を出したくなることもしばしば。
圧倒的な映像美を見せるアレックス・プロヤスの作品は、逆を言えば映像に力が入り過ぎて物語がスカスカになる弊害があるのも事実。彼にしては珍しくSFではなく日常的な青春物語である本作だが、凝りに凝った映像美学は健在。ただ、あまりにその映像が前面に出てしまいウザったくなる所もある。あくまで“バンドという特殊空間内”での恋模様に注目し、音楽での成功物語を隅に追いやり、ほろ苦いオチを迎えるために彼らの演奏シーンをとことん見せない物語構成が良いだけに、時折でしゃばってしまう映像が残念ではある。
バンドの物語の割に彼らの演奏に彩られない作品であるが、バックに流れる楽曲の数々はなかなか良い。キュアやロキシー・ミュージックなど使い方はややベタではあるものの、非常に効果的。中でもメロンを擬似的な子供として育て始めるジョーのバックに流れるボウイの“Kooks”が堪らない。当時息子が生まれたばかりのボウイの浮かれっぷりがよく表れた作品で、“喧嘩はしちゃダメだよ お父さんはその子のお父さんを殴れるほど強くないから 宿題がウンザリなら 一緒に暖炉に放り込んじゃおう そしてダウンタウンへ遊びに行こう”と変わり者(Kooks)の親らしい愛情に満ち満ちた曲だ。
バンドを経験したことのある方なら、色んなことを思い出し胸をチクチクさせながら楽しめる作品。また、最近の右を向いても左を向いてもパチンコ屋だらけの景観や、その娯楽性の乏しすぎる日本に憤りを感じている方々にもオススメの一本。採点は相変らず“ボウイ・アドバンテージ”採用なので、無条件で★ひとつ加算してあります。
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すてきなTBありがとうございます。
現実味溢れる(笑)この映画とは対照的に、スター街道をかけあがる「ロック・スター」という映画もなかなか良かったですよ〜。音楽映画(特にロック)好きならオススメです。
なかなか味わい深い映画でしたよね^^
素敵かどうかは別にして、細々と音楽はやってますよ。年齢で変わるようなものでもないですしね♪
『ロック・スター』は昔観ましたね。「ジューダス辞めて、結局はそういう曲に落ち着くのかよ!」というラストに不満もあったものの、バンドを主体とした人間の変化が意外とよく描けていた作品でした。