1980年 イタリア映画 90分 ホラー 採点★★★★
あまりに理不尽なことばかりであったり、飛躍が甚だしい人と長い時間会話をしていると、話についていくことを脳が拒否し、不愉快さとかもろもろを通り越してその人の言っていることが全て正論のような気になることってありますよねぇ。
【ストーリー】
死んだ伯父から古いホテルを相続したものの、そのホテルが地獄へと通じる門だったから、さぁ大変だ。
最高傑作との呼び声も高い、イタリアンホラーを代表するルチオ・フルチによる、お得意の“地獄の門”もの。
クトゥルー神話をモチーフにしているようだが、その物語の破綻ぶりが凄まじく、鑑賞中に不愉快を遥かに通り越して快感すら覚える傑作。“なぜ?”“どこ?”“だれ?”といった基本的疑問にすら答えようとせず、異様に力強い画面の中、浮かんだ 疑問を残酷描写で全て打ち消す力技で満載。
蘇った旦那に驚き転んだ女性の顔に、棚の上に何気に置いてあった強酸の薬品がドバドバとかかり、身じろぎもしない女性の顔がジュワジュワと溶け行く様を、そしてその血肉色に染まった液体が娘の足元に迫っていく様を、「これでもか!」ってほどジックリ描いたり、雷に驚いて転んだ男性が生きたままジワジワと蜘蛛に顔面を中心に食べられる様を尺たっぷりに描いたりと、どんな些細な傷口も見逃させないよう、ぐりぐりーっとアップで見せてくれる強烈なゴア描写が豊富な本作。物語以前に何を観客に見せたいのかとても明確で素敵。それを見せたいが為に人がよく転ぶサービス精神も素敵。
昨今の小奇麗にまとまったホラーでは味わうことの出来ない不快感をたっぷりと味あわせてくれる、80年代ホラーの忘れられない作品。まぁ、アルジェントの『インフェルノ』同様、胸を張ってオススメすると人格を疑われる可能性もありますが、一人部屋で「大好きだー!」と叫びたくなる作品で。
60年物の腐乱死体になんとなく脳波計を取り付けてみたり、カット毎に拳銃に弾が入ってたり入ってなかったり、意味深な人が意味深のままだったり、ゾンビの急所に気付いてたり気付いていなかったりと、全てが行き当たりばったりなのだが、「そんなもん、地獄の門が開いちゃってるんだからしょうがないでしょ!」とばかりに進む物語は、そのあまりのデタラメさにもの凄く高尚な映画を観ているような錯覚さえおぼえてしまう。観客について来る事を許さぬ展開といい、やっと追いついたと思ったら投げ捨てられるエンディングといい、どこを切っても“脈絡”と“辻褄”という言葉自体そもそも辞書に載っていないフルチらしい作品。まぁ、フルチ自身「完成ラッシュを観ちゃうと手直ししたくなるから観ないんだぁ!」と言ってたそうで、その投げっ放し体質が素晴らしい方向へと転がってくれた一本なのではと。
『サンゲリア』のジャンネット・デ・ロッシによる腐乱具合のいいゾンビメイクや、とことん目玉にこだわるフルチに応える特殊メイクの数々も見ものだが、やはりイタリアンホラーを観ている実感の湧くサントラがカッコイイ。イタリアンホラーは、なによりも音楽が素晴らしいので好き。『悪魔の墓場』とか着メロにしてるくらいですし。
(2015年3月13日 ちょいと加筆)
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