ミレニアム３ 眠れる女と狂卓の騎士 (Luftslottet som sprängdes)

監督　ダニエル・アルフレッドソン　主演　ミカエル・ニクヴィスト
2009年　スウェーデン／デンマーク／ドイツ映画　148分　サスペンス　採点★★★

すごく当たり前の事なのでアレなんですが、小説と映画ってのは別物なんですよねぇ。活字で面白かった部分をそのまんま映像化しても面白くなるとは限りませんし、原作のテーマとシチュエーション以外をガラリと変えてしまった映画の方が、案外面白かったってことも少なくないですし。まぁ、違うからこそどこを上手く省略して、映像として見応えあるものにするのかが作り手の腕に掛かってるんですけど。



【ストーリー】
遂にザラチェンコとの直接対決を果たしたが瀕死の重傷を負ってしまたリスベット。厳重監視のもとに置かれる中、リスベットの裁判とミレニアム誌による彼女が巻き込まれた国家的陰謀の暴露記事の準備が着々と進められていた。しかし、そのスキャンダルを闇に葬り去ろうと、秘密組織の魔の手がリスベットらに近づいていて…。



『ミレニアム　ドラゴン・タトゥーの女』『ミレニアム２　火と戯れる女』に続く、スティーグ・ラーソン原作による“ミレニアム”シリーズ完結編。メガホンを握るのは、前作に引き続きダニエル・アルフレッドソン。
前作で広げに広げた風呂敷をバッタバッタと畳んでいく本作。状況説明にたっぷりと時間を取る序盤のまどろっかしさは相変わらずだが、今回は秘密結社の全貌が見えてくる前半と、リスベットの裁判の模様を描く後半にと分かれた二部構成的な作りをしているので、もっとコンパクトになる気はするが、前回ほどの冗長さは感じられない。まぁ、前半にのんびりし過ぎて後半が非常に忙しい、小学男子の夏休みみたいな構成でもあるんですが。
国家の中枢に30年もの間潜んでいた秘密結社の割に、盗聴以外は大した準備もせず人でごった返す場所に銃を片手にした暗殺者を送り込む計画の杜撰さや、期待させるキャラながらも基本的には自由に散歩中だった金髪の大男、急に大いなる助っ人となる公安、検察と検察の証人が一方的に打ちのめされる裁判シーンの腰の軽さなど、非常に気になる所は多いのだが、急ぎ足ながらもパッタパタと片を付けていく様はそれなりに快感でもあったので、若干甘めのこの評価を。



大半の時間を病院のベッドの上で小難しい顔をしているだけだっただけに、モヒカンに鋲打ちレザージャケットで登場するシーンが本作最大のクライマックスのようにも思えたリスベット役には、シリーズ通して演じ切ったノオミ・ラパス。本作以降、ガイ・リッチー版『シャーロック・ホームズ』の第二弾や、リドリー・スコットによる期待のＳＦ『プロメテウス』などハリウッド大作が控えている彼女。リスベットという既にパンチの効いたキャラクターで注目されただけに、そのキャラ抜きでどんな存在感を示すのか楽しみでも。
また、なんだかんだと女性に囲まれている印象が強いミカエル役にも、シリーズを通して演じたミカエル・ニクヴィストが。なんかこう今更ながら、若い娘の気まぐれで点いちゃいけない火が点いた中年男にしか見えないシーンも多々。なんと言うか、きっぱり拒まれればそれで済んだのに、妙に気を遣われた分火が消えに消えないって感じ。
ＴＶミニシリーズもあるらしい“ミレニアム”シリーズですが、個人的にはそっちより『ソーシャル・ネットワーク』のデヴィッド・フィンチャーによる一作目のリメイクが非常に楽しみ。ポスターを見る限りミカエル役のダニエル・クレイグが誰よりも多く人を殺してそうな顔と言うか、まるでザラチェンコがメインにいるような感じなのが気になりますが、それはそれで楽しみで。


陪審員制じゃなくて良かったなぁと

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Comments

あの膨大な量の本を、よくここまでコンパクトにまとめたもんだと感心です。
映画見てからだと、既視感ありありでしょうが、本はマジに面白いんで、機会があればどうぞ。
物語は、スウェーデンと言うお国柄が前提になってるのに、リメイクしちゃう無神経さがわかんないです。

Posted by sakurai at 2011年09月17日 08:05

sakurai様、こんにちは〜♪
一旦習慣から遠のいちゃうとなかなか手を出しづらいんですが、読んではみたいですねぇ、原作。
＞スウェーデンと言うお国柄が前提になってる
リメイク版のロケ地を見るとスウェーデンで撮影をしているようなので、その辺も上手く消化されてればいいんですけどねぇ。

Posted by たお at 2011年09月19日 08:31

ＴＢありがとうございました。

２,３作目は思っていたような話ではなかったかな、という気持ちがあるんですが、
とりあえず、ハリウッド・リメイクは楽しみです。

http://cinechan.at.webry.info/201012/article_3.html

Posted by ＣＩＮＥＣＨＡＮ at 2011年09月24日 12:45

ＣＩＮＥＣＨＡＮ様、こんにちは！
リスベットの物語だとすると一作目の娘捜索は若干余計な気もしますねぇ。まぁ、膨らませたくもなるキャラだとは思いますが。

Posted by たお at 2011年09月24日 14:27