2007年 アメリカ映画 117分 ドラマ 採点★★★
うちの子供たちは、何度口を酸っぱくして言っても部屋を片付けない。早起きしてもテレビを見る時間が長くなるだけで、時間ギリギリになって顔も洗わず学校へ行こうとする。ネコや末っ子の面倒は見ないし、開けたドアは決して閉めない。親としては「こんなんで世の中に出れるのか?」と心配でしょうがないんですが、自分の子供の頃を思い返してみると、案外外ではちゃんとやってたりするんですよねぇ。ただ、家ではやりたくないだけ。甘えとか面倒臭いとかそんなこんなで。

【ストーリー】
1988年のニューヨーク。警察署長の父バートとエリート警官の兄ジョセフを持つボビーは、折り合いの悪い家族のもとを離れ、素性を隠しロシアンマフィアに通じるナイトクラブのマネージャーとして働いていた。そんな中、ロシアンマフィア撲滅に動くジョセフは、ボビーのクラブに入り浸るニジンスキーを追っていた。しかし、そのニジンスキーの手によって銃撃されジョセフは重傷を負い、次なる標的が父バートであることを知ったボビーは、警察の囮としてニジンスキーに近づくのだが…。

ホアキン・フェニックス、マーク・ウォールバーグ、ジェームズ・グレイという『裏切り者』トリオが再集結して作り上げた犯罪ドラマ。
“ロシア移民”“厳格な家族と犯罪”“反抗と和解”といったジェームズ・グレイお馴染のモチーフを、どっしり腰の据わった演出で描き出す本作。ありきたりの題材と静かな展開ながらも、要所要所に生々しい犯罪描写を挟み込む事でメリハリを生み、決して冗長な印象を与えない作品に仕上がっている。反発し、また疎まれていながらも強い絆で結ばれている主人公と家族の関係にも、胸が熱くなる場面が多く描かれている。
ただ、完全に巻き込まれただけの主人公の彼女の存在がおざなりになっていってしまったり、主人公や家族の心の変移があまりに唐突だったりと、人物周辺のドラマに時間を割いている割には描き込みの浅さが気になるところ。主人公にとってもう一つの家族であるロシアンマフィアのボス一家との交流も、序盤こそは描かれているが、後は立ち消え状態に。二つの家族を対比することで主人公にもっと葛藤が生まれただろうし、テーマももうちょっとはっきりとしただけに、ちょいともったいない。この“あと一歩”の惜しさが為に、“よくある題材のよくある作品”の範疇に収まってしまった印象が。

主人公のボビーに扮しているのは、『ホテル・ルワンダ』『ヴィレッジ』のホアキン・フェニックス。「あんな一家とはやってらんねぇぜ!」と強がりながらも、いざお兄さんが撃たれ父親に危険が迫ると「お兄ちゃんがー!お父ちゃんがー!」と慌てふためく、とっても思春期な主人公を熱演。滑舌が猛烈に悪いのがちょいと気にはなったが、片想いにも似た家族に対する想いや、隠しきれない心の弱さなど見事に表現。最近は奇行の面でしか話題を耳にしない彼ですが、役者としての完全復帰を心待ちにしたい所存で。
一方、エリート警官の兄役には、『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』『ラブリーボーン』のマーク・ウォールバーグが。映画になると途端に良い人役ばかりになるマーキーマークだが、今回も典型的な良い人。これはこれで非常に似合うし、観ていて安心出来るのだが、もうそろそろ『ディパーテッド』のような同じ良い人でも一癖ある役柄を観たいなぁとも。
その他、“プエルトリカンの美女”を絵に描いたような『ゴーストライダー』のエヴァ・メンデスや、“厳格な父親”を絵に描いたような『ザ・ロード』のロバート・デュヴァルらの熱演も忘れ難し。また、格闘技好きとしては『プレデターズ』のオレッグ・タクタロフも印象深い。なんだかんだとコンスタンスに映画の仕事が舞い込んでいる彼ですけど、やっぱりアレですか?格闘家として知名度があるだけに、ポジション的にはガッツ石松的なアレですか?

この仕事を選んだのは、お兄ちゃんがいたからです!
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