1997年 アメリカ映画 105分 アクション 採点★★★★
もともと人混みが苦手なんで、「オラも都会に出るぞー!」ってな野心なんて欠片も持っていない私。自分に必要な物だけが、身の回りにちょこちょこっとあれば丁度良い感じ。ただまぁ、これだけ田舎に長く引き籠っていると、色んな物を見逃して何かと取り残されてしまっているような焦りも感じるんですよねぇ。

【ストーリー】
ニューヨークの警官たちが作り上げた街、ニュージャージー州ギャリソン。通称“コップランド”。この街の保安官フレディは、ニューヨークの警官になる夢を胸に秘めたまま平穏な日々を送っていた。しかし、管内で警官による誤射事件が発生し、この平穏な日々は急転してしまう…。

『ナイト&デイ』のジェームズ・マンゴールドが脚本も手掛けたサスペンスアクション。
主人公も悪役も全て法の執行官である本作。悪役たちがマフィアとの癒着や数々の揉み消し工作の発覚を防ぐ為に、仲間である警官を殺害するにまで至るその行為には全く同調出来ないが、そもそもが仲間とその家族を守るためであるという原点自体に対しては声高々に非難し辛いテーマがまず面白い。その事実を知ったとしても、仲間内ではなんとなく目をつぶってしまいそうなもので。主人公もことなかれでやり過ごしていきたいものの、持ち前の実直さもあり正面切って対決せざる得なくなるストーリー展開も非常にスムーズで上手い。また、憧れの地ニューヨークの憧れの職業警官が相手だけに可能な限り穏便に済ませようとする主人公と、所詮制服組でしかないはずなのに常に保安官である主人公に上から目線の警官たちという、キャラクターの関係図も土地の兼ね合いも含めて簡潔に描き切っているのも見事。
最後の最後にちょろっと銃撃戦があるだけの本作を“アクション”とジャンル付けするのはちょっとだけ迷ったのだが、フラストレーションを溜めに溜めて最後に爆発させるこの構成はまさに西部劇のそれであるので、アクションと断言しても間違いはないのかと。マフィアに警察の不正と題材こそは現代的だが、この構成を始めクライマックスに至るまでの演出など、至る所が西部劇を意識した作りであるのが好印象な本作。さすが、近年稀に見る傑作西部劇『3時10分、決断のとき』を撮ったジェームズ・マンゴールドだけはあるなぁと。

主人公である保安官に扮しているのは、『エクスペンダブルズ』『ランボー』のシルヴェスター・スタローン。大幅に脂肪を増やし、たった6万ドルのギャラで仕事を請けた事も話題に。前年の『デイライト』でのギャラが1750万ドルなので、その意気込みがうかがい知れるってもので。名優が揃った作品だけに、当時からスタローンの演技力を揶揄する声も多かった本作ですが、スタローンにカメレオン的な演技力を要求すること自体お門違い。スタローンは様々なキャラクターを器用に演じるタイプではないが、本作のように実直でトロくお人好しだけど、胸に秘めた思いは全くぶれる事の無いキャラクターを演じさせればピカイチなのである。スタローン自身はレイ・リオッタが扮したゲイリー役を欲してたらしいですが、スタローンにはこの主人公がピッタリで。当時落ち目だったスタローンでしたが、持ち前の個性を発揮しながらアンサンブルにも徹していた本作の彼を観た時には、「スタローンが戻ってきた!」と小躍りして喜んだものです。まぁ、またこっからしばらく落ち目になるんですけど。
このスタローンを中心に、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』のハーヴェイ・カイテルや、そのハーヴェイ・カイテルの盟友でもある『マチェーテ』のロバート・デ・ニーロ、本人はスタローンの役柄を演じたかった『グッドフェローズ』のレイ・リオッタといったクセのある名優たちが揃った本作。脇を固めるのも、ヒゲひとつで大きく印象の変わる『ネバー・サレンダー 肉弾凶器』のロバート・パトリックや、最近は監督としての活躍の方が目立ってきたピーター・バーグ、『ミステリー・メン』のジャニーン・ガロファロー、『運命の逆転』のアナベラ・シオラ、『キンダガートン・コップ』のキャシー・モリアーティに、色々観ているわけではないのに常に頭の片隅にその名前が残っているマイケル・ラパポートといった、非常に個性的な顔ぶれが揃っているのも非常に嬉しい作品で。

“この人にしか出来ない役柄”があるってのが、スターの証のひとつでも
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