2006年 アメリカ映画 107分 ホラー 採点★★★
ホラー映画が肩身の狭い存在となってしまってから、随分と経ちますねぇ。劇場にも滅多にかかりませんし。まぁ、TVで流れるホラーのCMに、「怖すぎる!」とクレームを付け放送禁止にしてしまうような息苦しい世の中では、こうなるのも仕方がないんですかねぇ。
【ストーリー】
サンディエゴを目指し、人気の無い荒野のど真ん中をドライブするカーター一家。途中のガソリンスタンドで教えてもらった近道を走行中、突如タイヤがパンクし立ち往生してしまう。一夜をその場で過ごす彼らであったが、そこには核実験の影響で奇形化した食人一家が潜んでおり…。
“放射能の影響で奇形化”ってのがマズかったようで、日本では劇場公開はおろかDVD発売すら危ぶまれていた本作。国の特産品がゴジラなのに。気にする人は観なきゃいいだけのような気もするんですが、DVDが出ただけでも良しとしなきゃなんないんでしょうかねぇ。ただまぁ、デリケートな問題や臭い物に蓋をし続ける風潮ってのは、突き詰めていくと最終的に美男美女しか存在価値が無い世の中になっていくような気もするんですがねぇ。
それはさて置き、“文化人が常識の通用しない世界に叩き落される”というテーマ以上に、「このジョギリ、ちょっとショボくねぇか?」って印象の方が強かった『サランドラ』を、『ハイテンション』のアレクサンドル・アジャがほぼ忠実な展開でリメイクした本作。ゴリゴリの保守派一家にリベラルメガネが娘婿に来ている状況設定も、オリジナルのテーマを上手く継承している。じっくりと溜める前半部と、情け容赦ない暴力が次々と展開される後半部とのメリハリの付け方が上手い。特に前半部の、食人一家に犠牲者を導くガソリンスタンドのオヤジが心境を二転三転させながら、最終的に主人公らを食人一家の元へと導く描写のさり気ない丁寧さが目を引く。ワンパクな作風が売りの監督かと思いきや、案外器用で丁寧な仕事をするタイプなのかもと。
ただ、描写そのものは過激なのだが、過剰な狂気からは上手く身を逸らしながら作り上げてる気もする本作。メジャーレーベルという足枷もあったのかも知れないが、それが結果的に「まとまり過ぎてるかな?」と思わせる要因となったのかも。まぁ、それでも充分な事はやってるんですけどね。
主人公のリベラルメガネに扮しているのは、『X-MEN:ファイナル ディシジョン』のアーロン・スタンフォード。銃を触るのも嫌がる典型的なリベラルメガネが、妻を殺され赤子をさらわれて一転、犬連れバイオレンスメガネに変貌する様は、暴れながらもいちいちメガネを直す様も含め見応え充分。大人しい奴ほどキレたら怖い。
その他、『トワイライトゾーン/超次元の体験』のキャスリーン・クインランや、今回は死体の皮を剥いだりすることはない『ワイルド・スピード』のテッド・レヴィン、意外と小さな扱いなのにはちょっと驚いたビリー・ドラゴらも出演。八面六腑の働きを見せる犬も、かなり印象的で。
それにしても、この邦題。東宝東和が絡んでないから“サランドラ”を使えなかったのかも知れませんが、だからと言って早口言葉にしたら噛みそうな原題をそのまんまカタカナにしなくても。続編に至っては、更に早口難易度がアップしちゃってますし。まぁ、この辺に関する愚痴はいつものことなので割愛しますが、「頑張ったんだろうなぁ」とだけでも思わせる工夫は怠らないでもらいたいもので。
文明の通用しない社会も内に秘めた最先進国
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