2008年 アメリカ/ドイツ映画 120分 サスペンス 採点★★★★
随分前に務めていた会社は、創業主の社長を筆頭に、奥さんと義理の弟が専務を務め、秘書兼経理に愛人を配するという、なかなか典型的なワンマン会社で。そんな会社なもんで、店長ら幹部クラスは売上向上よりも社長が気に入るような企画を上げることに専念しちゃってて、私みたいな変わり者は当初こそ面白がられてましたが、瞬く間に煙たがられることに。そうこうしている内に、持ち前のドンブリ勘定気質と、効果度外視のウケ狙い企画の乱発で経営は傾き、遂には取引先との規約に違反するイベントをやろうとまでする始末。猛反対するも孤立無援で、あっという間に閑職へと回されちゃったんでその会社は辞めたんですが、そっから3ヶ月もしない内に、10店舗も抱えていたその会社は夜逃げ同然で倒産。しばらくして、社長と一緒に旗を振っていた元同僚から「どーしよー?」と電話がありましたが、如何せん社交性のない私は「バカじゃないの?」と電話を切っちゃったとさ。
【ストーリー】
第二次世界大戦下のドイツ。戦況が悪化する中、アフリカ戦線で瀕死の重傷を負いながらも奇跡の復帰を果たしたシュタウフェンベルク大佐は、祖国とヨーロッパを愛する気持ちから、やがてヒトラーの独裁体制に疑問を感じるようになる。やがて軍部内で秘密裏に独裁体制打破を計画するグループと接触した彼は、クーデター発生時にその鎮圧を目的とした“ワルキューレ作戦”を利用し、ヒトラー暗殺と同時に政権掌握する計画を思い付く。綿密な準備の後、いよいよヒトラー暗殺の為に行動を起こしたシュタウフェンベルクだったが…。
1944年に起きたヒトラー暗殺計画“ワルキューレ作戦”の顛末を描いたサスペンスドラマ。メガホンを握ったのは、『X-メン』『ユージュアル・サスペクツ』のブライアン・シンガー。
祖国を愛し、その祖国と国民を守りたいが故にヒトラー暗殺計画を実行した、クラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐の姿を描いた本作。信念を軸に腹を括った主人公と、腹を括り切れなかった人間や、政治的な思惑が先に出てしまっている人間の姿をほんのり対比しながら描く事で、主人公のその人となりを上手く描き出している。また、分かり切っている結末ながらも「もしや!?」と思わせるサスペンスの盛り上げ方や展開の牽引力は見事で、その辺はブライアン・シンガーと共に製作にも携わったクリストファー・マッカリーの手腕が光っていたとも。シュタウフェンベルクの人物像や、当時のドイツを語る上で欠かせないユダヤ人に対する事柄が全く描かれていないのには正直疑問も感じたが、ストーリーテリングは流石に巧み。先に待ち受ける運命が分かっているだけに、暗殺成功を確信した後の一世一代のぬか喜びっぷりがより一層浮き彫りになっておりましたし。
サスペンスを盛り上げるヒトラー暗殺計画以上に、信念を持ち続ける事や重大な事柄を前に覚悟を決める事の難しさを描く本作。劇中でも描かれる、どんな状況であっても己の損得で動いてしまう人間が圧倒的で、その損得勘定の行動が流れを大きく変えてしまうことが多い中、シュタウフェンベルクの姿は素直に凄いなぁと。国が困難に陥った時や、外敵の脅威や悪政に苦しんでいる時に英雄が生まれるとは良く聞きますが、本当にそうだったらいいなぁと切に思う今日この頃で。
主人公のシュタウフェンベルクに扮したのは、『ナイト&デイ』『宇宙戦争』のトム・クルーズ。今回はハンサムアイパッチ。または、ハンサム軍人。本国ドイツでは、サイエントロジー絡みでトムちんがシュタウフェンベルクを演じることに非難の声が随分と上がったようですが、トムちんの持つイメージによって、結末の分かっている暗殺計画に「もしや!?」と思わせサスペンスを盛り上げることが出来たのではと。巡り合わせが悪い上に詰めも甘いこの計画を描く本作を、それこそショーン・ビーンが演じれば確かにシックリもくるんですが、シックリし過ぎてもうなんか全てが丸く収まり過ぎてる気もしますし。また、「トムのコスプレ映画だ!」とか「客寄せパンダだ!」って非難も見受けられましたが、そもそもトムちんの映画は“ハンサムがコスプレする様を楽しむ”って大前提があると思ってますし、それでお客さんが入ってるんだから、それは非難になってないような気も。ただの確認。
その他に、『ナイロビの蜂』のビル・ナイや、『パイレーツ・ロック』ではヒトラーぽかったケネス・ブラナー、『グリーン・ホーネット』のトム・ウィルキンソン、なんか苗字に“ディートリッヒ”って付きそうなクラシカルな美しさに目を奪われた『ブラックブック』のカリス・ファン・ハウテン、『NEXT -ネクスト-』のトーマス・クレッチマン、『ヤングガン』のテレンス・スタンプ、『Gガール 破壊的な彼女』のエディ・イザードに、『フライトプラン』のクリスチャン・ベルケルなど、大作らしい錚々たる顔ぶれが揃った本作。
しかしながら、そんな錚々たる顔ぶれを差し置いて存在感を放っていたのが、出会い頭に「ボク、ヒトラー暗殺を計画してるから!」とトムちんに告られ、即座に腹を括ったシュタウフェンベルクの直属の部下ヘフテンに扮したジェイミー・パーカー。史実通りとは言え、献身的にシュタウフェンベルクに尽くし、彼の為なら迷う事無くその身を呈す様に、強烈なまでの片想い臭を感じてしまったのは、ブライアン・シンガー作品だからなんでしょうかねぇ。
何よりも一緒に働ける事が幸せ
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英雄でなくてもいいので、困難に陥ったり悪政に苦しんだりする前に、誰か次善の策を打ち出して国が持ち直すように舵取りして欲しいと思う今日この頃。
>ショーン・ビーンが演じれば確かにシックリもくるんですが
確かに!
詰めが甘くてぬか喜びする彼を見たら、似合い過ぎて笑えてしまいそうです。
拍手喝采で迎えられた指導者は、得てして独裁者になりかねないですしねぇ。。。
それはさて置き、本作を観ながら「ショーンだったらなぁ」と妄想してしまった私でしたとさw
それにしても、ヘフテンの献身ぶりには、もらい泣きしちゃいました〜。
もう、“惚れこんだ”としか言いようの無い献身ぶりでしたねぇ。