1984年 アメリカ映画 105分 アクション 採点★★★★
“アクションコメディ”と称される映画って結構多いですが、そのほとんどが単にアクションシーンもあるコメディだったり、笑えるセリフもあるアクション映画だったりするんですよねぇ。そうなると、娯楽映画ってのには大概笑いとアクションが含まれちゃってるので、「全部アクションコメディなのかい?」って感じも。
【ストーリー】
デトロイト市警の刑事アクセルのもとに、ビバリーヒルズから幼馴染のマイキーがやって来る。マイキーが持ってきた出所不明の無記名債券をいぶかみながらも、久々の再開を喜ぶアクセル。しかし、突如現れた男たちによってマイキーは殺されてしまう。無記名債券が事件のカギを握ると読んだアクセルは、上司の反対を押し切り単身ビバリーヒルズに乗り込むのだが…。
そんな、ありそうでない“アクションコメディ”の定義に一文を書き加えるのならば、「理想形は『ビバリーヒルズ・コップ』」となるのであろう、80年代を代表するアクションコメディの傑作。ドン・シンプソン&ジェリー・ブラッカイマー製作の下メガホンを握ったのは、この後『ミッドナイト・ラン』『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』と続けて良作を手掛けるも、『ジーリ』でやらかしてしまったマーティン・ブレスト。
笑いとアクションシーンを交互に挟みこんで「ハイ出来上がりー!」ではなく、しっかりとしたアクション映画としての物語を土台に、その舞台を演者の技量を最大限に活かした“白人の牙城に一人切り込む黒人”的なギャップコメディに転化させ、笑いとアクションを見事なまでにブレンドした本作。へらへら笑ってたかと思いきや次のシーンでは人が死ぬ、その緩急の付け方が上手い。
特に、序盤に描かれるマイキーの死の描写はタイミング・構図ともに秀逸で、後頭部を撃ち抜かれると同時に口からマズルフラッシュが見えるこの強烈な死のイメージが植え付けられることによって、序盤以降クライマックスまで誰も死なない上にレベルの高い笑いに溢れた展開をしていても、主人公の原動力が友人の死であることからブレない、軸の強さを見せている。この死の描写が、本作の最重要ポイントなのでは。
『48時間』『大逆転』と、笑いのみならず役者としても類稀なるセンスを見せながらも、サイドキック的立ち位置から脱せられなかったエディ・マーフィだったが、いよいよ本作で主演一人立ち。お馴染のギャグを放り込みながらも、“コメディアン”エディではなく、“俳優”エディとしての力量を存分に見せてくれている。本作を境にしばらくの間快進撃を続けるのも納得の仕事振り。
また、『グレムリン』『初体験/リッジモント・ハイ』のジャッジ・ラインホルドと、『ゴーン・ベイビー・ゴーン』『恋しくて』のジョン・アシュトンによる凸凹コンビもエディ・マーフィを大いに盛り立て、笑いに走り過ぎそうな所を『ロボコップ』『トータル・リコール』のロニー・コックスが出て引き締める、非常にバランスの取れたキャスティングも魅力。なにかとエネルギッシュなエディ・マーフィと対照的に、『ランボー/怒りの脱出』のスティーヴン・バーコフに『暴走特急』のジョナサン・バンクスといった、冷たさが売りの役者を悪役に配置しているのも効果的。
その他、ゲイキャラでちょろっと登場する『戦火の勇気』のブロンソン・ピンチョットや、『ラスト・ボーイスカウト』のデイモン・ウェイアンズ、『エイリアン2』での卑劣な悪役が強烈だったポール・ライザーなども印象的な出演を。
本作のアクセル役を、アル・パチーノやジェームズ・カーンといった企画の段階では必ず挙がる名前を経由して、シルヴェスター・スタローンで一時落ち着き、スタローン自身が主人公の名前を“マリオン・コブレッティ”に変えて脚本をリライトしたってのは、もう有名な話で。もちろんそれが後の『コブラ』になるんですが、本作をベースに『コブラ』が出来ちゃったってのには若干違和感を感じちゃいますねぇ。『デッドフォール』になったってなら、妙に納得するんですが。
アウェイに果敢に挑み続ける芸風ってのを忘れないでもらいたいもので
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>『48時間』から本作までの面白さ
ホント、本作までの勢いというか面白さは凄まじいまでの物がありましたよねぇ。ブルーレイとして出てもおかしくない実績もある作品なんですが、そこまで日本におけるエディの商品価値が落ちてしまったってことなんですかねぇ。。。
『ロウ』とか『ライブ!ライブ!ライブ!』とかの、超絶ライブも皆さんに観て頂きたいもので。