1982年 アメリカ映画 113分 SF 採点★★★★
好きだったシリーズの新作がオリジナルキャストで作られると、またお馴染の顔ぶれが観られる嬉しさの半面、時間の経過と共に否応が無く表れる“老い”ってのが非常に気になってしまうもんですよねぇ。前作からの時間の経過が映画内でも適用され、経年ってのを上手く利用した作品ってのも少なくはないですが、役者は老けこんでいるのに映画内の時間は止まってたりすると、場合によっては観ていて非常に痛々しいというか哀しい気分になることもありますよねぇ。『チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル』みたいに。
【ストーリー】
スポック艦長のもと練習艦として使用されているエンタープライズ号に、提督として地上勤務となっていたカークが査察にやって来る。カークと共に訓練航海に出たエンタープライズ号であったが、突如連邦艦のU.S.S.リライアントに攻撃を受けてしまう。リライアントを乗っ取っていたのは、かつてカークによって追放された遺伝子工学によって生み出された優生人間カーンであった。カーンは不毛の星に生命を生み出す一方で、強大な破壊力を持つ“ジェネシス”を手に、カークへの復讐を果たそうとするのだが…。
オリジナルTVシリーズに於いて根強い人気を誇るカーンを登場させた、劇場版スター・トレック第2弾。監督は、『タイム・アフター・タイム』のニコラス・メイヤー。因みに、仕切り直しでスタートした『スター・トレック』で描かれていた、“コバヤシ丸”のエピソードが登場するのは本作。
優れた科学が生み出した物を、平和利用するのも戦争の道具とするのも全ては使う者次第であるという、非常にスター・トレックらしい思想のもと、シリーズで初めて年月の経過というものを大胆に取り入れた本作。それによって、クルー同士の繋がりがより強固なものとして描かれるようになり、宇宙探索に対する情熱も一層浮き彫りとなる結果に。それに伴い、加齢による変化が一種の哀愁を帯びさせ、壮絶な背景を持つ復讐劇と、海洋戦を宇宙に置き換えたかのような激しい戦艦同士のバトルとの良いコントラストを生み出している。
スポックの死という、衝撃的な結末を迎える本作。しかしながら、その死が全ての終焉を意味しているのではなく、劇中の“ジェネシス計画”同様新たな創造・スタートとしての死として描かれている。老いたクルーとスポックの死という大きな賭けに出た本作だが、これが大きく功を奏し、結果的に現在までシリーズが作られ続ける要因となった功績は非常に大きい。
不毛な星が緑豊かな惑星へと変貌していくCGには、当時劇場で大いに驚かされたものですが、そのCGを担当しているは、当時ILMで現ピクサーとディズニー・アニメーション・スタジオの社長を兼任しているエド・キャットムル。昔からすげぇの作ってたんですねぇ。
軍の物語ながらリベラルの趣が強めに出ているシリーズに於いて、一人肉弾戦を繰り広げたり、相手が人間・宇宙人であろうと問わず女癖が若干悪かったりと、人間味溢れるカーク艦長を演じていたウィリアム・シャトナーを筆頭に、オリジナルキャストが勢揃いした本作。元祖肉体派俳優リカルド・モンタルバンも、久々のカーンを圧倒的な迫力で熱演。
また、新キャラクターであるサーヴィックに扮したのは、『ベイビー・トーク』のカースティ・アレイ。融通の利かなそうなキツめの美貌がヴァルカン人としてドハマリ。是非ともレギュラーとして登場して欲しかったんですが、ギャラを吹っかけ過ぎちゃったようで、残念ながらシリーズには今回限りの登場と。
そんな役者陣も素晴らしいのだが、やはり本作で最も目を奪われてしまうのは、戦闘的な雰囲気を全く感じさせない丸みを帯びた美しいフォルムを持ちながらも、いざ戦闘に入れば強大な力を発揮するエンタープライズ号であろう。その美しさを様々な角度から舐めるように撮ったドックからの出航シーンなんて、何度観てもゾクゾクしちゃいますし。次回作『スター・トレック3/ミスター・スポックを探せ!』にも登場する、禍々しいデザインが素敵なバード・オブ・プレイも大好きな船なんですが、ふいに目の前に現れた時、一番胸がときめくのはやっぱりエンタープライズ号ですねぇ。
別れではなく新たな船出
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何よりエンタープライズを愛でる作りがよかったですよね。たおさんの仰有る通りです。スタトレはエンタープライズありきなところも、「我が家」感があって凄く好きなんです。
映画版としてボリュームアップをしながらも、しっかりとTVシリーズから脈々と続くキャラ愛ってのを持った良い作品ですよねぇ。
そして、キャラに対する愛情と同様に、船愛に溢れかえっているのが、まさにスター・トレックって感じで。