2009年 アメリカ/カナダ映画 109分 ホラー 採点★★
子供が恐怖の対象になっているホラー映画が怖いのは、一般的に純粋とされている子供が邪悪な行為をするって内容以上に、よしんばその子供を打ち負かせたとしても、世間へのその後の説明が大変面倒臭そうだなぁってとこじゃないのかなぁと思ってる私。例えば『オーメン』でグレゴリー・ペックがめでたくダミアンを殺せたとしても、その後世間はそんな“ダミアン=悪魔”って話を全く信じないんだろうなぁと。そう考えると、『エスター』って上手い逃げ道を見つけたなぁ。
【ストーリー】
児童福祉のソーシャルワーカーをしているエミリー。ある日彼女は、虐待を受けている可能性があるリリーという女の子のケースを担当する。そんな折、両親がリリーを殺害しようとする現場に出くわしたエミリーは辛うじてリリーを救い出し、里親が見つかるまで共に生活する事を決意する。しかし、その日を境に彼女の周辺で不審死が連続し…。
『パンドラム』のクリスティアン・アルヴァルト監督による、邪悪な子供が大人たちを恐怖に陥れるオカルトホラー。脚本は、『クレイジーズ』のレイ・ライト。
児童虐待から無垢な少女を救い出したと思いきや、邪悪なのは少女の方で、両親は被害者だったという着眼点は面白い一本。善悪の基準だけではなく、言われた事を基本的に全て鵜呑みにする単純過ぎる思考回路の主人公に苛立ちを感じながらも、少女の本性が明らかになっていくまではそれなりに面白い本作。
しかしながら、本性が明らかになってしまうとそれまでのミステリータッチの面白さは消え失せ、単純な恐怖演出と単純な主人公だけが残ってしまう残念仕様。我が子をオーブンで焼き殺そうとした両親という、“話の信頼度ランキング”で著しく下位にいるであろう人物の話であろうが、「あの子は悪魔だ!」と言われれば「そーよね!」と鵜呑みにしてしまう主人公の思考回路はどうかと思うが、主人公以外も皆そんな調子という鵜呑みワールドなので仕方がない。
これで、悪魔的な何かを抱えた少女の行動に筋が通ってればまだマシなのだが、これと言って筋が見当たらず、ちょっと大掛かりな嫌がらせにしか見えないってのも残念ポイント。まぁ、本国公開より先に日本でDVDがリリースされちゃうのも納得の一本ということで。
主人公のエミリーに扮しているのは、『ベティ・サイズモア』のレニー・ゼルウィガー。幼さを感じる舌っ足らずの喋り口が、単純過ぎる思考回路の主人公にピッタリという感じだが、そんな事よりも、特に好きでも嫌いでもない女優とはいえ、一時はハリウッドを代表する人気女優だった彼女をこんな作品で観てしまった事が、本作最大の恐怖ポイントなのかも。
一方、10歳の少女リリーに扮しているのは、意外とキャリアの長いジョデル・フェルランド。当時15歳にしてこの幼さってのにも大いに驚かされるが、『サイレントヒル』の頃から何ら変化してる様子がないその様に、絵の中の少女のような不気味さが。なんか、生エスター的な。
その他、『デス・レース』のイアン・マクシェーンや、『ジェニファーズ・ボディ』のシンシア・スティーヴンソンらが出演しているが、やはり注目はブレイクを目の前に控えていた『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』『ミッドナイト・ミート・トレイン』のブラッドリー・クーパーなのかと。相変わらず軽薄さ溢れる、心の全くこもってない笑顔が素敵でしたよ。
両親としては失格かも知れないが、悪魔ハンターとしては合格
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