2011年06月14日

アニマル・ファクトリー (Animal Factory)

監督 スティーヴ・ブシェミ 主演 エドワード・ファーロング
2000年 アメリカ映画 95分 ドラマ 採点★★★

「傷つくのが怖い」とかなんとかもっともらしい理由をつけて、恋愛に奥手な男子が増えているらしいですねぇ。フラれて当たり前の状況で頑張るからこそ燃え上がるってのに。ウンザリするくらい繰り返してからこんなセリフを吐くならまだしも、なーんにもしてないうちからこんな事を言うのって、「今日は寒いから外に出ない」ってのと同じレベルなんじゃないのかなぁと、このおいちゃんは思うわけですよ。

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【ストーリー】
何不自由のない家庭に育ちながらも、マリファナ取引を行った罪で刑務所に収監されてしまったロン。凶悪犯に囲まれる過酷な環境に放り込まれ困惑するロンであったが、既に18年に渡って収監されている大物アールに気に入られ、彼のグループと日々を過ごす事になるのだったが…。

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自身の経験を活かした本物ならではのリアルな犯罪小説の数々のみならず、俳優としての活躍でも知られたエドワード・バンカーの原作を、『アダルトボーイズ青春白書』のスティーヴ・ブシェミが映像化した刑務所ドラマ。「刑務所の事なら任せとけ!」ってことか、ダニー・トレホさんも製作者の一人として名前を連ねている。
ラウンジ・リザーズのジョン・ルーリーによる自由奔放な音楽に彩られながら、刑務所独特の人間模様や日常を、過剰な演出を避け淡々と描く本作。マッタリとした演出のせいか、刑務所物の醍醐味を味わうにはパンチの弱い作品になっている。更生ではなく新たな犯罪者を生み出す機能を果たしてしまっている実態ってのも、随分と霞んでしまっている印象も。ただ、ベタな観方ではあるものの、禁じられた愛に悶々とする恋愛映画として観る分には、随分と興味深い一本に仕上がっている。
美形の新入り囚人ロンに、細かい理由など関係なく一目惚れをしたアール。己の欲望を果たす為だけであれば、絶大な力を持つアールにとっては容易なことであるにもかかわらず、そんな事をしたらロンに嫌われちゃうので絶対しないアール。でも、おふざけで襲うフリをする時は押さえきれない欲求が顔を出すので、若干やり過ぎちゃうお茶目な一面も。そんな時、笑いながらも内心ロンはマジ焦り。相思相愛を求められないのも分かっているから、何かと世話を焼いてちょっとでもロンの傍に居れるよう頑張るアール。健気です。寝ているロンの耳元で囁く位が精いっぱい。でも、あそこでロンが起きなかったら、きっとホッペにチューくらいはしてたんでしょうねぇ。ロンの刑期短縮の為に頑張るが、刑期が短縮されると一緒に居れなくなっちゃうので、ロンと共に脱獄することを決意するアール。そのワクワクっぷりは、アバンチュールを前にした乙女の様です。まぁ、残念ながらアバンチュールの夢は崩れ去ってしまうんですけど、その際のアールの哀しみを堪えに堪えた表情が絶品。「天国の下僕になるより、地獄の王でいたほうがいい」ってセリフの、若い男に去られた飲み屋の女将が強がって言い放ったっぽさが素敵。

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そんなアールに無償の愛を次々お見舞いされるロンに扮しているのは、『ターミネーター2』で一躍脚光を浴びるも、酔っぱらうかロブスターを逃がすか若しくはその両方と、スクリーン以外での話題ばかりを提供してしまう、ある意味典型的な子役人生を過ごしていたエドワード・ファーロング。最近はどんどんロバート・パトリックの方へ近付いて行ってる感じのするエドワード・ファーロングだが、まだまだこの頃は美少年としての面影を残していた頃。なので、そんな切れ長の目をした美少年が屈強な男ばかりいる刑務所に放り込まれるという、一部の人には堪らない独特な趣が生まれる事に。
一方、ロンにべた惚れのアールに扮しているのは、『デイブレイカー』のウィレム・デフォー。本作のヒロイン。『プラトーン』でも一人妖しい空気を発していたが、本作でも欲望を必死に抑えるもついつい顔には出てしまうアールを熱演。あまりの熱演ぶりに、サスペンスの中心が“アールがいつ我慢の限界を迎えるか?”ってところに集約されてしまった感すら。
その他、原作者でもあるエドワード・バンカーや、馴染の環境で心も和んだのか笑顔が絶えなかった『マチェーテ』のダニー・トレホさん、『30デイズ・ナイト』のマーク・ブーン・ジュニア、シンガーとしても活動している『ランボー 最後の戦場』のジェイク・ラ・ボッツに、ジョン・ハードとトム・アーノルドらといった、役者としても本作に出演しているスティーヴ・ブシェミらしいイイ所を突いた顔ぶれが集結。そんな中でも一際目を引くのが、“女優”ジャン役としてマッスル女装姿で現れる『エクスペンダブルズ』のミッキー・ローク。ハンサム絶頂期のミッキー・ロークを知っていただけに、どん底にいた時期とはいえ当時は大いに驚かされたものですが、本作の弾けっぷりが後の怪優としての再デビューに繋がってるんですよねぇ。このマッスル女装がなければ、『シン・シティ』も『レスラー』もなかったと考えると、人間なんでもチャレンジはしてみるもんだなぁと

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同室になるなら、ジャンと下心丸見えのアールのどっちがマシなんだろう?

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posted by たお at 15:31 | Comment(2) | TrackBack(1) | 前にも観たアレ■あ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>更生ではなく新たな犯罪者を生み出す機能を果たしてしまっている実態
てっきりそっちがメインだと思ってたのですが・・・

>禁じられた愛に悶々とする恋愛映画
それも、愛らしくそして悲哀に満ちた、チャーミングな仕上がり!
デフォーさんもロークも、やけに可愛く見えて困っちゃいました(笑)
Posted by 哀生龍 at 2011年06月26日 20:08
哀生龍さま、こんにちは〜♪
どっからどう見てもラブストーリーでしたねぇ。想いも下心も隠しきれてないデフォーが、なんとも可愛いw
Posted by たお at 2011年06月27日 10:20
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Tracked: 2011-06-26 19:57