2008年 香港映画 106分 アクション 採点★★★
歴史ってのが概ね事実である事は否定しませんが、頭ごなしに信用し切るのもどうかなぁと思う私。数ある事実の中から比較的都合の良いものを“歴史”として残したいって思うのは人の常でしょうし、その取捨選択権を勝った者や力がある者が握るってのも常だろうなぁと。そんな“歴史”をあたかも証拠のように盾にされても、どうなのって思っちゃうんですよねぇ。

【ストーリー】
1930年代の中国広東省佛山。武術の盛んな町である佛山で、詠春拳の達人としてのみならず優れた人格の持ち主として誰からも一目を置かれる葉問。しかし日中戦争が勃発し、佛山は日本軍の占領地となってしまう。そんな折、葉問の腕前に目を付けた日本軍将校の三浦は葉問を武術指導者として引き入れようとするのだが…。

『かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート』のウィルソン・イップとドニー・イェンのコンビによる、詠春拳の使い手として知られる葉問の人生を描いたカンフーアクションドラマ。アクション監督には、『SPL/狼よ静かに死ね』でドニー・イェンと繰り広げた死闘が未だ記憶に残るサモ・ハン・キンポー。
香港の航空会社がトラブル対策の為か、CAに訓練を義務化したことでも話題になった詠春拳。その詠春拳から無駄な事を取り除き、より実戦向けに近代化させたことで知られる葉問の問題山積人生を描いた本作。『ドラゴン怒りの鉄拳』や『SPIRIT スピリット』の主人公を葉問に変えただけって印象もなきにしろあらずだが、イベント盛り沢山のストーリーを駆け足に成り過ぎず、見応え充分過ぎるアクションとドラマをしっかりブレンドさせたさじ加減が見事。葉問とその周辺の人となりもしっかり描かれているので、人物ドラマとしても深みが生まれている。
ただまぁ、時代が時代だけに日本軍が残虐な悪役として描かれてしまうことには特に文句はないものの、中国共産党の仕打ちに関しては全く触れずにナショナリズムを煽り立てるやり口は、やっぱり好みではない。いつもの事っちゃぁいつもの事ですし、国内マーケットの事を考えれば仕方がないんでしょうけど。本作の大ヒットの影響か、一大葉問ブームが起きているそうですけど、なんか作品やドニー・イェンの素晴らしさとは違う部分でブームが起きてるような感じもして、ちょっと考えさせられちゃうなぁと。

葉問に扮するのは、『SPL/狼よ静かに死ね』のドニー・イェン。「これから90分間、オレだけを観ていろ!」って作品も多いドニーさんですし、そんなドニーさんが大好きなわけなんですが、今回のドニーさんは役柄もあってか、いちいちキメ顔でどアップになるようなこともない控えめな印象。アクションも蹴りと拳のスピードを誇示するようなスタイルではないが、流れるような動きで急所を集中的に攻撃する姿は迫力十分。終始穏やかな顔をしていたドニーさんでしたが、感情の爆発と共に拳のスピードにも顔つきにもいつものドニーさんが垣間見え、ちょっと安心。葉問に成り切る事を楽しんでるような感じも、非常にドニーさんらしくてこれまた安心。
また、三浦将軍役には日本から池内博之が出演。サモ・ハンに相当しごかれたのか、なかなか力強さの感じられるアクションを披露。『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』などジョニー・トー作品でもお馴染のサイモン・ヤムや、日本軍に媚び諂いながらも葉問に対する畏敬の念が隠しきれない署長役に扮した、『エレクション』のラム・カートンらも印象的だったが、葉問の妻に扮したリン・ホンのなんか現実離れした顔立ちがちょっと強烈だったなぁと。

やっぱりドニーさんはこうじゃないと
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